第27話 カレンの開発日誌
ここは、青い館。
棚に並んでいるノートの背表紙を見てゆき、No1となっているノートを開いた。
私は、ルーレット・カガクの直系子孫マルコス・カガク。
24世で継承権は12番目だ。総帥7人衆に選出される権利はあるものの、商いより研究が好きなのだ。だから、俺は、ずっと宇宙の神秘に魅入られて、宇宙の果てを行き来している。
太陽が三つあると言う星の情報が入った。
白い太陽、黄色い太陽、青い太陽の三つだ。
もっとも、目を引いたのが”魔法が使える”だ。
白い太陽は可視光線を多く含んでおり、宇宙では比較的普通である。
黄色い太陽は何かを放射している。
青い太陽も何かを放射している。
青と黄の二つの太陽は何を放射しているのか、大いに興味を引いた。この星以外では聞いたことがない。カガク家のデータベースを探しても、この星だけだった。
早速、現地に飛んだ。
確かに、星の周りを3つの太陽が回っている。
太陽(恒星)の周りを惑星が回っているの普通だが、この星系には、あの星と3つの太陽以外は無い。他の星系までは遠く50光年は離れている。
あの黄色い太陽は危険だと第6感が訴えたので、3つの太陽のさらに外側に、乗ってきた宇宙船を止めた。
そして、6か月の間この星をつぶさに調査した。
観察・研究の結果、白い太陽は可視光線を多く含んでおり、宇宙では比較的普通である。
黄色い太陽は電子機器を無効化する何かが放射されている。
青い太陽も何かを放射しているが、電子機器に作用していない。
あの、黄色か青い太陽が、魔法にかかわっているのだろうか?
危険の有無や、生物の種類、分布、文明度、文化度、民度、言葉などを調査した。
そして、大陸には人種が栄えており、国が8つほどあって、人口600万にほどであった。文化レベルと文明レベル3で、産業革命は来ていないことがわかった。
しかし、一方レベル6と思われる廃墟や道路などが見られた。見たところ、かなり前のようだ。
魔法に関しては、直接、民に接しないとわからないので、地上に降下することにした。
続いて、カレンの開発日誌と記されているノートを手に取った。
惑星イベリス。そう命名した。そして、イベリス歴10年と2か月。
魔素でナノマシンを動かすことに成功した。
「フローラ!。見てくれ、このナノマシンの動きを!」
「おめでとう」
妻は、ことのほか喜んでくれた。これで、魔素の応用ができる。
今、身の回りの世話してくれているのは、宇宙船で一緒に連れてきた、電子で動くナノマシンだ。この世界では次第に動きが怪しくなり、メンテナンスができない。パーツの予備を持ってはきたが、それも動かなくなった。この星は商業通路にないため、パーツも手に入らない。
とりあえず、パーツの部分補填を行って、その場を凌いできた。しかし、すでにメイドたちの数は10人が6人にまで減少してしまった。
この魔素で動くナノマシンで、メイドたちを作れば、我々の生活を元に戻せる。
この星では、電子が蓄積できない、流れないなど電子・電気の特性が魔素で阻害されている。モータも発電機も、もっともコンピュータも作れない。動作しない。
一方、原子・電子の構造はあるし、酸素も窒素もある。化学反応もする。
イベリス歴10年の年末。やっと魔素駆動のメイドが完成した。名前をカレンとした。
魔素の世界ではならではの機能を組み込んだ。
自立精神、自己修復、分身作成、形態変化、魔法の行使が大きなところかな。
特に、魔法が使えるのは、副次効果として獲得したようだ。まったく、この星は想像を超える。
カレンの教育は、メイドたちに任せた。
仕上がりは上々で、既存のメイドたちより仕事をこなせて、皆のアイドルになった。
イベリス歴12年2月。帰還命令が届いた。なにかやばいことが起こっているようだ。
妻の両親からの知らせでは、”近づいてはならぬ!”と。
私たちは、タダならぬ予感から、取り急ぎ旅立ちの用意をした。
早く帰還するため、多くをこの星に残し身軽くして、高速移動艇に乗り込むことにした。
短期間で、戻ってくるつもりで、家財やメイドたちも置いてゆく。
もちろん、カレンは魔素が必要なので、この星から出せない。
案の定、この星を脱出する制御装置がまともに動かない。考えに考えて、結局手動で母船迄、操縦するしかないと。これは、大変だ。成功率は5%。
イベリス歴12年2月10日。出発した。
ここで、手記や日誌は終わっている。マルコスは、この星に帰ってくることはなかった。それは、カレンを発見した様相どおりである。
しかし、疑問がある。
帰還命令を受けた受信機、母船に向かった高速移動艇などは、魔素の影響がなかったのだろうか?。影響を克服したとは手記にないが、魔素で動くナノマシンを作ったほどだからあり得るのか?。
それと暦があったのと、カレンと僕の推測で、今はイベリス歴2012年2月10日とした。
(僕がダイブしてから7年が経っている)
マルコスが去って、カレンが停止してと考えると1500年以上は経っている。切り良く2000年経過しているとした。




