第26話 カレンが目覚める
この星5年と2月。
そんな毎日が1年ほど続いたある日、カレンから(ブーーン)という音が聞こえてきた。気のせいかなと思い、その日は、日課の食料探しに出かけた。帰ってきて、もう一度カレンに聞き耳を立てたが、やはり幻聴か。
カレンは、居間の椅子のひとつを占有している。
だから、いつもの団欒は、3人と一匹。
「おはよう。カレン」
「お・・・は・・よ・う・・・ございます」
「お・お・お・ しゃべった!」
「私も、びっくりしたよ」とアズサ。
「マスター!、やっと、お戻りになられたのですね。再び、お仕えできます。うれしいです。よろしくお願いします。でも、まだ普通に動くことができません。現在修復中なので、しばらくお待ちください」
それから、3日、ブーンという音のみで変化がなかった。
4日目の朝、瞼が開いていたので、声をかけた。
「おはよう。ところで、引き続きカレンと呼んで良いかい?」
「はい、カレンでお願いします。それと、大変申し訳ないのですが、手をつないで頂いてよいでしょうか?。マスターの魔力を少しいただくと修復を早めることができます」
カレンの手を握った。今までと違って温かい。生命を感じて、ちょっと涙ぐんだ。
「魔力??。それは??」と、知らないふりをして、ちょっと情報を聞き出そう。
「この星には、魔素が充満しております。そして、この星の生物はそれを利用できる魔力を有しています。マスターは、それを研究するためにこの星にやってきたと言っていました。そして、研究の成果として私を作られたのです」
「私はアズサ9歳。あなたは、アンドロイド?」
「アズサちゃんでよろしいですか?。改めてよろしくお願いします。私はナノマシンで構成された生命体です。一応、生物の部類かと思います」
「わふ」
「聖獣様、お久しぶりです。よろしくお願いします」
ほぉー。まあ難しいことは後にして、良い仲間ができた。それだけでうれしい。
カレンのステータスは、
魔力:40/40
魔素力:30/30
体力:100/100
精神力:40/40
防御力:50/50
すごい。体力と防御力が高い。さすがナノマシンだ。
「ある日、マスターが悲しい顔をして、母星に帰られました。再来するまで、この研究所を維持するようにと。ただし、1000年経っても戻らぬ時は新たなマスターを探せと」
「でも、マスターが戻られたので、うれしいです」
と言って、カレンは涙を流した???。
(僕がマスターだと、カレンは言っているが、僕は覚えがない。まあ、慕ってくれているから良しとしよう)
「なるほど、カレンが機能停止するころは、まだこの周辺に人が居たかい?」
「うーん。まだ活動していたと思います。音がしていましたから」
「そうすると、カレンが停止して千年以上経っているということかな?」
話は沢山ある。まあ、追々だね。
10日後、カレンの指が動き、腕が上がった。
「マスター、手をお貸し願えますか?。立ち上がりたいです」
カレンが立ったよ。歩いたよ。回れ右をしたよ。
規則的な運動を1時間ほど続けていた。機能確認だとカレンが言った。
ラジオ体操みたいなものを繰り返し、やっていた。
「カレン、通信機は無いかな?。できれば亜空間通信機が」
「私は、メイドタイプなので、そのあたりはよく存じておりません」
「明日、何か有用なものが無いか、もう一度カレンが居たところを探してみようか?」
やってきました。3年ぶりに、カレンを発見した青の館にやってきました。
猫パンチで開けたドアは、そのままだった。
「アズサ。遠くに行ってはダメだよ」
中に入って、カレンが座っていたところや、カレンが案内する幾つかの部屋を覗いていった。
「マスター、使えそうな物を集めてみました」
手に取って、見てみたが、今の技術では修復できない。いずれ時が来たらできるかも知れない。
いや、クラフトがあるから、試してみようか。
「マスター、私が保管してもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
カレンがお腹のところ触ると、収納袋のように何もない空間が現れた。そして、次々と拾い物を中に入れていった。
おぉ・・。この世界は、亜空間収納袋が、普通にあるのかよ!!。
「あっ。そうだ。マスター、服を着た方がよろしいでしょうか?」
「そうだね。もちろん、その方がいいよ」
(まあ、全身つるつるのマネキンで、・・・まあ気にはならないのだが)
「アズサー、ちょっとこっちにきてくれ」
「フリオ、何かな?」
「これで、いかがでしょうか?」お腹の収納袋から服を取り出した。
「「うん。メイド服だね。いいよ」」アズサもOKを出した。
カレンは、メイドをやっていたので料理もできるということで、アズサと仲良く料理に勤しんでいる。
晩御飯は、おいしかった。
「カレン、アズサ、美味しかったよ。ありがとう」
マスターが戻ってきました。
でも、ちょっと様子が変なのです。長い耳に、可愛い丸い尻尾は変わらないのですが?。
それと、なぜ、私だけが朽ちずに残っていたのでしょう。違いは、このブレスレットかな?。
マスターが、この星の魔素で動くようにと、他の者と違った作りになっていました。そのエネルギ供給が、このブレスレットなのです。でも、地上に出る機会も無くなり、次第に動きが鈍くなって、あの場所で機能停止したようです。
マスターの魔力供給でやっと復帰できました。
しかし、マスターは、ここでの記憶を無くしているようです。それが違和感の原因ですね。
まあ、問題はありません。
「マスター。奥様や他のメイドたちは、何処におられます?」
「いや、僕とアズサ以外は誰も居ないよ」
複雑なようですね。あまり質問するのも失礼なので、止めておきましょう。
カレンが加わった僕の生活は、さらに楽しくなったよ。
朝一番に、三人で罠を見て回り、ウサギや小動物を捕らえ、解体する。カレンの収納袋は、時間停止機能が付いており、中身が腐ることがない。便利だ。但し、生き物は入らない。
「アズサ、カレンの収納袋をコピーできないか?」
「カレンさん、試して良いですか?」
簡単にはできないようだ。
「イメージが掴めないとダメなようですね。うーん。時間をください」とアズサ。
カレンには、食事は不要とのこと。でも、アズサと二人で食べるのも味気ないので、どうにかできないかと、相談したら、改造するのでちょっと待ってくださいと言われた。
普通、口から入れると、胃や腸、排せつ器官が必要だが、ナノマシンに分解と吸収、拡散の機能を追加するらしい。胃に相当するものを作りこむことで、OKらしい。
「10日ほどかかります。しばらくまってね 」ニコッとカレンがした。
最近、カレンの表情が多彩になってきた。それに可愛い。
今日は、再びカレンが眠っていた青い館にやってきた。
入り口のドアらしきところから入って、とりあえずくつろげる部屋を確保した。そして、調理場を発見したが、カレンの言うには、水も火も使える状態ではないとのこと。
三人で、大掃除だ。
荒れたままにするのは、カレンやマルコス・マレイの手前、良くないし、過ぎていった人々の供養も必要だ。
最優先で、部屋の隅で、粉状に崩れたメイドたちを集めて、裏の庭に埋めて墓標を立てた。
三人、ひざまづいて輪廻に戻るよう祈った。




