第25話 庭を作る
元気に飛び回っているアズサを眺めていると、いきなり僕のお腹に体当たりしてきた。
「フリオー。家の前には、お花畑が欲しい! 最初は小さくて良いわ」
「いいね!。午後からは、お花を探しに行こうか?」
家の西側に、南へ向かってゆっくりと流れる川がある。幅が20メートルぐらいで、膝が浸かるぐらいで向こう岸に渡れる。両脇には草原が平行しており、ところどころ柳の木が川にはみ出している。
その草原を二人で、花壇に植えられそうな花や低木を探した。
「フリオー。これ、可愛いよ!」
直径2センチメートルほどの、白いコップを伏せた形で、先がちょっと赤くなっている。下から上へと咲いており、膝ぐらいの高さで、花壇には良いみたい。
早速、アズサがコピーアンドペーストで、根付でかごに入れた。
引き抜いたらダメ。自然は大事にしなくてはね。
それから、スミレのような花や椿のような低木などを集めることができた。
持ち帰って、さらにコピーアンドペーストで増やして小さな花壇に植えてゆく。
魔法を駆使して、30日ほどで、色とりどりのお花畑が出来上がった。
種も蒔いた。”芽よ、でろでろ 芽よ、でろでろ”と唱えると、一日で芽が出た。
アズサが水やり、僕が肥料を与え育てる。
”すくすく 育てよ もっさもっさ”で20日ほどでつぼみが付いた。
そして、30日でお花畑だよ。
折角なので、東屋を作って、お茶を楽しめるようにしたのだ。
ここは、お花畑の中の東屋。
「アズサ。よく頑張ったね」
「フリオ、ありがとう」
「アズサ、この家に名前を付けてあげたいね」
「うーん、”うさぎさんの家”?」
「それはちょっと・・・」
「フリオの家」
「それもちょっと・・・。えーっと、アズサの家?」
「ダメに決まっているでしょ!。真面目にね!ね!」
活発なアズサには、たじたじだよ。うれしいけどね。
結局、この東屋の名前は、”風の止り木”で落ち着いた。
めでたしめでたし。
そんなある日、行商人のガロムが再びやってきた。
監視役のシロが横を警戒しながら周りを歩いている。
「お久しぶりです。こちらは妻のリリーです」
「お初にお目にかかります。リリーと申します。よろしくお願いします」
ガロムと以前一緒に来た息子のパウロの他に、大人の女性が付いてきていた。
アクセサリに興味があるので見たいと。
アズサの意見を聞きながら、女性に受けそうなアクセサリを揃えていたので、一挙大公開となった。
リリーは、目を皿のようにして、一つ一つ手に取って見ていた。
「あなた。この指輪が欲しいわ。台座は銀で、ルビーの輝きがとっても良いわ」
「これこれ、そんな大きな声で欲しがったら、交渉の余地がなくなるよ」
と、二人でひそひそ話のつもりが、僕の大きな耳にはすべて聞こえているのだ。
(あのルビーのカットは見たことのないし、銀と思われるところに小さなバラが多数刻まれている。町長の奥様に声を掛ければ・・・。羽毛布団で話をまとめたい)
「フリオ様、羽毛布団一つと指輪3つで交換、如何でしょうか?」
「羽毛布団!、それは是非こちらも欲しい。ガロムに損が出ないならば、交渉成立で良いよ」
その他、髪留めやリボンなど細々したものと、布や道具、種と交換した。
そして、二人は、大変良い商いができたと言って、喜んで帰っていった。
羽根布団は、今回手持ちにないので、次回持ってくるとのこと。
こっそりとガロム一家のステータスを覗いてみた。
ガロムは、
魔力:1
魔素力:1
体力:5
精神力:3
防御力:2
リリーは、
魔力:2
魔素力:1
体力:5
精神力:3
防御力:1
まあ当然の数値だね。
「アズサ。今日は飛ぶ魔法に挑戦してみようか?」
「えぇっ。飛ぶって鳥さんみたいに?」
「家を建てる時、丸太を浮遊魔法で軽くしたよね」
ここから、ニュートンの万有引力について、講義したよ。アズサは頭良い。
この引力を遮断して、丸太を軽くしていたことを。そして、今度は自分に浮遊魔法を掛けたらどうなるかな。
「身体が軽くなったよ。見てみて、ポーン、ポーン、ポーンと跳ねてみたよ」アズサは早速挑戦している。
しかし、飛ぶことはできなかった。
まあ、一朝一夕にはできるはずはないね。気を落とさず頑張ろうね。
そう言いながら、庭の東屋でのんびり、お茶を楽しんでいると。
「フリオー、見てみて!」
なんと、アズサを乗せたシロが、空を飛んでいるではないか。
まったく、予想を超えた所業だよ。
そして、移動のスピードも格段に向上した。
あの塩づくりの浜までも、2時間ほどで辿りつけるようになった。




