第14話 カレンとの出会い
今日は、前から気になっていた、西へ10キロメートルほど先に見える、青い建物に行ってみることにした。
すぐそこなので、草原を抜け、森を抜け、山を駆けのぼって到着した。
その建物は、居間迄の廃ビルとは違い、さほど崩壊していなかった。不思議だ。
とりあえず、建物の入り口で野営をする。石を集め急場の竈を作って、今日もバーベキューだよ。
ウサギの肉とニンジン、そして後味にセロリ。
翌朝、建物の探索にかかった。入り口は小さいが中に入ると、幅2メートル高さ3メートルほどの大きな通路が奥につながっている。恐る恐る、進んでゆくと右の壁にドアがあった。
それを、猫パンチ大で殴ると、ちょっと“ぐらっ”と来たようなので、ライオンパンチをくらわした。
ドーンという音がして、ドアが奥に倒れた。
中に入ると、そこは20メートル四方ぐらいの何も無い部屋だった。でも、何かが配置されていたのか、直線状に土のようなものが連なっていた。そして、その脇のドアを開けると、そこは土で埋まっていた。もう一つ左のドアを開けると、人型の人形らしきものが、壁にもたれかかって土に戻ろうとしていた。
その中でも、比較的形が残っていたものを、よく観察した。
埃やつちを除いてゆくと、一体のマネキン?が出てきた。
服がなく、白い金属色で、髪もない?。で、女性型だな。
せっかくだから話し相手に持って帰ろうと、持ち上げてみた。軽い。
埃と土に埋もれた青い館の中でカレンに会った。
とりあえず、カレンという名前にしたのだ。
グラグラする頭に添え木をして、背負子に座らせた。うん、軽い。
拠点に戻ると、椅子を用意してマネキンのようなカレンを座らせた。
「きょうから、お前の名前はカレンだ」
ぼくは、カレンを相手に、今までのことを、とつとつと話した。
傍から見たら、マネキンに話しかけている残念なウサギだよ。ハハハ・・・。
夜は長い。焚火の向こうのカレンに向かって、今まで起きたことを脈絡なく話した。
「おはよう。カレン」
一日の始まりは、椅子に座っているカレンへの挨拶で始まる。
会話にはならないが、人型の話し相手が居ると思うと、寂しい気持ちが少し和らいだ。
白いわんこも時々顔を見せる。そして、カレンを見て頷いてゆく。??。
「なあ、カレン。ぼくはフリオ・マレイという名前なんだ。今はね」
ぼくは、晩飯の後は、焚火の反対側に座っているカレンに話しかけた。
もちろん、マネキンは頷きもしなければ相槌も打ってこない。でも、夜長の寝物語を聞かせるには、物言わない観客は良いものだ。