第15話 シロが子供を咥えてきた
2年目の夏。
初夏の兆しが見えてきた、ある日のこと。
昼食を取っていたら、シロがピンクの塊を咥えてきた。そして、そっと僕の目の前に下した。
むくむくっと動いたと思ったら、手と足が出てきて、顔がこちらを向いた。
なんだ??。
こちらを見ているようで、焦点があっていない。
「う・・・・う・・・・」小さく呻いている。
小さな女の子のようだ。
こちらを見て、
「こんにちは。私はアズサと言います。ウサギさん???」
おぉ・・、礼儀正しい。
「僕は、フリオ・マレイと言うよ。お嬢ちゃんはどこから来たのかな?おうちの人は?」
「わからない・・・・う・・・・う・・・・」泣きそうだ。
「よしよし・・」と、軽く抱き寄せて背中をポンポンと軽くたたいた。
話を聞くと、歳は6歳で、アズサという町に住んでいたそうだ。
この星に来て、始めて会った人種だ。
困った。子供の扱いは全くわからない。
「あのー、お腹すいたの。何か食べ物をいただけませんか?」
ぱっちりした目をこちらに向けて、しっかり要求してきた。
「ちょっと待ってね。スープを温めるから。その間、このお肉を噛んでいて。軟らかいものとか甘いものとかは無いからね」
小さな手にウサギの干し肉を乗せた。そして、カップに水を満たして差し出した。
「ありがとうございます」
小さな口で、ほぐほぐと噛んでいる。
あーー、相当お腹が空いていたんだな。温めたスープも見る見るうちになくなった。
「ありがとうございました」と言うと、こてっと横になってしまった。
あっ!・待て待て、食べてすぐ寝ると牛になるよ。
おい!寝るなよ、あぁぁ・・寝ちゃったよ。
ウサギの皮をつなぎ合わせたキルトを掛けてやった。
「この子は、僕が面倒みるから、安心してくれるかな?」とシロに伝えると、
「わん」と一声して、森に帰っていった。
しばらくすると、ウサギを3羽ほど咥えて戻ってきた。
これを料理して、その娘に食わせろと言っているようだ。
そして、アズサの横に寝転んで、時々、アズサを心配そうに見ては、”大丈夫か?”と僕に目で問いかける。
この子は、どのような経緯で、どこから来たのやら?
可愛い、安心した寝顔を見ていたら、僕もつられて寝てしまった。
重い!
朝、目が覚めたらアズサが上に乗っかって、僕の頬をつまんでいた。
「おはようございます」
「おはよう」
「朝ごはんを作ろうと思いますが、食材はどちらに?」
やはり、夢ではなかった。それにしても、年端も行かない小さな子にしては、言葉遣いが丁寧だ。
というか、言葉が通じること自体、変ではないか?
食材と包丁、まな板、調味料、かまどなどを一通り説明した。
一度で理解した。
聡明な子だ。
それにしても、6歳の子供に料理させようとする僕の方が問題???。
「やっぱり、うさぎさんはニンジンが好きなんですか? 私はちょっと・・」
昨日のスープの残りと、干し肉にサラダ。
6歳の子供にしては、手際が良い。包丁も危なげがない。
「アズサちゃんは、本当はいくつ?」
「6歳でーす」
まあ、信じよう。これ以上突っ込むのは大人げないので、止めた。
それにしても、ちょこまか、細々と良く動く。うれしいけれど。
「アズサちゃんは、お父さんとかお母さんの記憶はないのかな?」
「お父さんとかお母さん・・・?。思い出さないわ。目が覚めたら、あの大きなワンコが居たの。でも怖くはなかったの」
「森の中で目が覚めたのかな?。それで、何回寝たのかな?」
「両手で数えられないぐらいかな?、白いワンコがずーっと傍にいてくれたの。昨日?・・、私を咥えて、ここに運んできてくれたの」
「まあ、良いか。僕も2年前にこの森で目覚めたんだ。仲良くやっていこうね」
「うん。よろしくお願いします」
「それから、この人はカレン。ここから西へ10キロメートルほど離れたところに青い館があって、そこに居たんだ。まだ、目が覚めないんだ。大切にしてやってね」
「わかりました。カレンさん、よろしくお願いします」ペコと頭を下げた。???。
(頭を下げる風習は、どこかの星系で見た覚えがある)




