51.ホワイトデー3 <リア充達の戯れ フェイズ4>
「そうです、そうやるんです。二人とも大分うまくなってきましたね、例えるならば訓練所で、初心者が巣だって行くのを見守る教官になった気分です」
俺達が作ったパウンドケーキをみて五ノ神さんは満足そうにうなずいていた。この出来なら紅に出しても恥ずかしくはないといえる。
「ちなみにこの禁忌の粉をふりかけてもいいだろうか?」
「なんですか、それ? 麻薬とかじゃないですよね?」
「蝙蝠を粉末状にしたものだな、俺の彼女は蝙蝠が好きなんだ」
「台なしぃぃぃぃぃ!! 何を考えているんですか? レシピがあるんですから、素人は余計な事をしないでください。あと、彼女さんが蝙蝠好きって言ってもキャラとして好きなのであって、味が好みって意味ではないですよね!?」
「お前あたまおかしいんじゃねーの? でも味は気になるなぁ。ちょっと失礼」
目の前のパウンドケーキをみて五ノ神さんが満足そうに頷いたので、瓶に入った粉末をみせると無茶苦茶怒られた。いいアイデアだと思ったんだが……ちなみに少し食べた安心院は「苦っ!!」と言って、ひたすら水を飲んでいる。でも、多少の苦みって甘さを引き立てると思うんだが……
この一週間わからないところは聞いたり、自主練をした成果が出たというものだ。ちゃんと形になったと思う。お母さんにはしばらくはパウンドケーキはみたくないといわれてしまった。でも今なら『キュケオーンをお食べ』とひたすら進める人間の気持ちがわかる。自分の作った得意料理は好きな人に食べてもらいたいよな。
ちなみに今回は俺たちが何回も質問をしに行ったので、がんばりを認めてくれたのか五ノ神さんが「特別ですよ」と直接指導をしてくれたのだ。
「なあ、やっぱり視線を感じないか?」
「何を言ってるんだ? 気のせいだろ」
ひと段落して、俺は学校を出てから感じている視線を感じていることを安心院に話したが、きょとんとした顔で返されてしまった。異世界に召喚された時用に訓練をしているので人の視線にはあるでいど敏感なのだ。まあ、基本的にきのせいなんだが……
「ストーカーでしょうか? 視線はどこから感じますか? こっそり見てきますよ」
「え、こいつのいう事信じるの?」
「その……身近な人にそういうことやりかねない人がいるもので、結構そういうこともあるのかなと……」
「友人は選んだ方がいいと思うぞ、俺もついていこうか? 騎士として女性一人で危険なところにむかわせるのはな……」
「騎士って何ですか? 現代社会に騎士はいないですよね? いざとなったら大声をあげるから大丈夫ですよ」
そういうと五ノ神さんは何か思い出したかのように体をびくっと震わせた。ちょっとみてきますといった彼女を見送って俺達は彼女がいれてくれた紅茶に口をつける。うまい!! 淹れ方でこうも違うのか……
「そういえばさ、お前たちはどこまでいったんだよ?」
「うおおおお」
「きったねぇな」
いきなりの質問に俺は紅茶を吹き出してしまった。こいつ何聞いてきてんだよ、あ、でもこいつらがどうなったかは気になるな。
「俺はその……キスまでだよ」
まあ、ほっぺたにだけどな……文化祭の紅は可愛かったなぁ……俺は思わずにやにやしてしまう。
「ああ、キスっていいよな。舌が入ってくるってなんかエロいし興奮するよな」
「え?」
「え?」
こいつらちょっと早すぎない? 俺達の方が先に付き合ってたよね? え、もしかして最後までしたの、しちゃったの? 聞きたいけど聞きたくねえーーー!! 俺が困惑していると五ノ神さんが戻ってきました。
「ただいまです…ダレモイマセンデシタヨ」
「え、絶対なんかあっただろ……」
「イエイエ、ダレモイマセンデシタ、イナカッタンデス。だからこれ以上は聞かないでくださいぃぃぃ」
彼女をみると「うう……嘘は苦手なんですよ……」とつぶやいている。ああ、これはなんかあったんだなと思うがこれ以上は突っ込まない方がいいのだと思う。まあ、本気でやばかったら言ってくるだろうしな。赤坂さんが女の子といる安心院を不審に思ってつけていたのかもしれない。なんかやりそうだよな。でも視線が俺も見ていた気がするんだよなぁ……
「ん? 誰かいたのか? みてこようか…」
「駄目です!! いいからケーキを持って帰って解散しましょう。お二人とも彼女を大事にしてあげてくださいね。あと今後は女子とはあまり会話をしないほうがいいと思います。人が死にますよ」
「え? なんか漫画の読みすぎじゃない?」
何があったのだろうか? 安心院の言葉を五ノ神さんが無理やり切る。結局その一言で解散することになった。「あーわたしも彼氏ほしいなぁ」といった彼女がつぶやくのが聞こえた。
「あなたの家に行くのは久しぶりね、今回はちゃんとエッチなものは隠したんでしょうね」
「何のことかな? 魔女の騎士たる俺にやましいことなど何もないぞ」
今回は事前に紅が来ることはが分かっていたのでエッチなDVDとかは沖田の家に預けてあるので問題はない。俺は意地の悪い笑みを浮かべる彼女に堂々と答えた。
「へぇー、じゃあ、パソコンの履歴をみてもいいかしら」
「すいませんでしたーー、本当にやめてください!!」
紅の言葉に俺は土下座をする、しかしこいつも余裕ぶっているが、いざエッチなやつとかみたら絶対動揺する癖に……ちなみに俺は彼女に着て欲しいエッチな服みたいなのを検索していたので絶対みられるわけにはいかない。
「そんなことよりも、私に言うことはないかしら?」
紅は俺の目の前で服を見せびらかすように微笑んだ。今日の彼女はホワイトデーを意識したのか白を基調にしたワンピースに蝙蝠のネックレスをしている。ぱっと見は清純だがアクセサリーに魔女っぽさが表れている。テーマは『白き魔女」だろうか。っていうか……
「これ俺がこの前可愛いなぁって言ったキャラのホワイトデー衣装じゃん」
「まあその……神矢ががんばってるみたいだから、私もがんばってみたのよ」
うおおおお。すっごい可愛い!! 得意げに胸をはる紅をみて俺はテンションがあがる。こいつ自分で服を作ったのかよ。あれ、でも、がんばっているって何で知っているんだ?
「その……神矢と安心院が女の子と歩いているのをみて、つい赤坂さんとつけちゃったの……もちろん神矢の事は信じてたんだけど……まさかホワイトデーのお菓子作りの練習をしているなんて思わなくて……ごめんなさい」
俺の表情をみて、俺の疑問を察したのか紅が頭を下げる、ああ、最後に五ノ神さんが挙動不審になっていたのは俺達をつけていた二人をみつけたが口止めをされたからだろう。
「まあ、俺も黙ってたし悪かったよ……」
「そうね……サプライズは嬉しかったけど……その……それよりもあなたと一緒に過ごす時間の方が大事だし嬉しいのよ……だから今度から料理のことなら私に聞きなさい」
顔を真っ赤にする紅を俺は思わずポンポンと頭を叩く。イケメンにのみ許される行為だが今の俺にだけは大丈夫だろう。本当は抱きしめたいがまだ勇気が足りない。
「今度からきをつけるよ……その……もうサプライズでもなくなったがたべてくれないか?」
「ええ、楽しみね」
そうして俺はお手製のパンケーキを披露する。そうして俺のホワイトデーは無事おわったのだった。俺達の関係? 特に進展はしなかったよ……
本当は先週やるはずが投稿が遅れてしまいました。すいません。
ホワイトデーはこの話で終わりで次から本編になります。よろしくです。