7 ニート&ナイト
ついさっき私の自宅から突然奇声をあげるおじいさんが出てきた。
そしてなんと私をすり抜けて外へ飛び出して落下して行った。
なんだったんだあれ。
「あれって……」
「ヤマムラシマ殿は亡霊を見るのは初めてか?」
「ま、まあ」
なに普通に寛いでるんだこいつ。
「あれは自身の死を再現しているだけだから害はない、滅多に見れるものではないし運が良かったな!」
良くないよ。
なんで自分の家でオバケ見て喜ぶと思ってるんだ。
しかし今日は変な虫いるし変な女いるし変なおばけ見るし、いったいなんなんだ。
ひょっとして私が待ち望んでいた非現実的な何かが起きてるとか?ロズウェル事件が原因で起こった政府の陰謀により宇宙人襲来か?私が生きてる間に世界終わってくれるとか最高だな。
ってキバヤシか私は。
「考え込んでいるようだがどうかしたのか?悩み事であればいくらでも――」
「ち、違うから……!」
なんで一々顔近づけるんだよ。
「そうか、しかし何かあれば言って欲しい」
出て行ってくださいと言ったらどうなるのか気になる。
「ところで一つ気になっているのだが、さっきから光っているあの絵はいったいなんだ?」
「あっ、消し忘れてたなぁ」
指差しているのはコンビニへ行く前にディスク入れっぱなしでメニュー画面のままになっているテレビ。
そういえばあの変な虫とか報道されてないかな。
「リモコン……あった」
「なんと!絵が動いてるぞ!?」
入力を切り替えて最初に映った番組では教授と出版社が喧嘩していた。
『ですからこうしてる今も異世界人は来てるわけですよ』
『どうしてあなたソレ知ってるの?』
『私の友人の、友人がですね、異世界人の写真をですね、特別に提供してくれたんですよ、今日はそれを持ってきましたので、これなんですけども』
『ただのアメリカじゃないか!』
『地球人と異世界人はほとんど同じなんですよ』
異世界人ねぇ……。
「絵が喋った?ひょっとしてこれはグレースの言っていた太古の鏡というものか?」
「あの、あなたはその……異世界人……?」
「この世界の者達からすればそうだろう、私からすればこの世界が異世界でヤマムラシマ殿が異世界人だがな」
わーお、凄いこと聞いたぜ。
小学生の頃からずっと期待していた非現実的な現象が起こってくれたんだな、運が良いな私。
変な虫とか幽霊の目撃と元からあった願望のおかげでなんか簡単に納得できた。
「そっちの世界は魔法とかあるの……?」
「あるぞ、私はポイントのほとんどを剣士などのスキルツリーに割り振っているから使えないが、魔道士隊なら様々な魔法を使える」
「え?ポイント?スキルツリーって?」
なんか突然ゲームじみた単語が出た気がする。
「知らないのか?空中に文字が現れる”導き”を出して自身が選択可能にした職業や称号を選び、それに準じた力を手に入れるんだ」
一気に胡散臭くなった。
自分を異世界の騎士だと思い込んでる精神異常者説が再浮上しちまったよ。
よくよく考えれば異世界人と日本語で会話できてるのもアレだし。
「そ、その導き?ってどうやって出せるの……?」
しかしどこか期待しちゃってる私。
「ある程度モンスターなどを倒すと出したり消したりできるようになる」
あのコンビニにいた変な虫がモンスターだったりして。
もしそうならあの虫を殴り殺した人は出せるようになってたりするのかも。
「出したり消したりって……呪文言ったりするの……?」
「いや、突然感覚が芽生えるというか、うーむ……出したり消したりする感覚を説明するのは獣人族が耳や尻尾の動かし方を私達に説明するようなものだからなぁ」
獣人族ってなんだろ?カジートみたいな感じのやつかな。
「そこまで気になるのなら手頃なのを倒してみればいい、最初のうちはポイントの獲得も早い――」
この人が喋り終わる前に突然地震が起きた。
普段の地震は小さいのが来たと思ったら大きくなる感じだけど、これは最初から大きいのが来た感じだなぁ。
なんて考えてたら私を庇うように抱きしめられた。
「な、なにすんのさ……?」
「建物が崩れるかもしれない、こんな縦に長い建物じゃあなおさら危険だ」
「これくらいじゃ崩れないよ……」
大げさだなぁ。
震度三くらいだし、すぐにおさまったし。
「はなしてくださいな……」
「ん?ああそうだな、無事でなによ――」
「ぎゃあああああ!」
またしても喋り終わる前に遮られた。
今度は地震じゃなく誰かの悲鳴だけど、お隣さんが地震で何か壊れたのかな?お気の毒。
「これは……まさか!」
なんて考えてたら今度は床に置いてた剣を持って出て行っちゃったぞ。
とりあえず私も靴を履いて追いかけ……あいつ今まで土足だったじゃねぇかちくしょうめ。
改めて追いかけるとエレベーターの前に何度か目にしたことのあるマンションの住人のおばちゃんが腰を抜かしたようにしりもちをついていた。
そして頭が正方形であること以外は人間と同じような体型の全身紫色の何かが剣を持っていてた。
その怪物に対して自称騎士見習いのカタリナが剣を構えていた。
「丁度良い獲物だ、ヤマムラシマ殿の糧としようではないか!」




