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6 お持ち帰り

「初めましてというべきかな?マイヤーズお姉様」

「初めまして、助けていただきありがとうございます」


インパクトハンドガンを回収して冬子さんたちの様子を見に行きます。


「えっ、ちょっと」


十数体のチュパカブラは突然現れたのであと数秒後に再び現れないとは限りませんし、見逃していただけでまだ他にもいるかもしれません。

インパクトハンドガンのエネルギーゲージは青色になっているので一回は撃てるだけエネルギーはチャージされているでしょう。


「待ってよーもう少しなにかないのー?」

「後ほど改めてお礼をさせていただきますので、今は観測台の子達をお願いできますか?」

「いいけどさー、手大丈夫なのー?」

「死にはしませんので、それでは」


まあ痛いのは凄く嫌ですが気にするのは安全が確認できてからにしないともっと酷い怪我をしかねません。

交信堂を出て周辺を警戒しつつ中庭の方へ歩くとすぐにみんなが見えます。

見たところ全員無事みたいですね。


「みなさん、ご無事でなによ――」

「ちっ!ちち、千影様!血が!」


なんか沢山ちって言っていますね。


「うっわぁ痛そう、大丈夫なんですかそれ……」

「大丈夫です、それより怪我をした人はいませんか?」

「マイヤーズ様以上の怪我人はいないですね」

「そうですか、それはよかっ――」

「よくありませんわ……」


冬子さんは瞳に涙を溜めていました。

私がしっかりインパクトハンドガンのエネルギー残量を気にしていれば怪我をせず、冬子さんに心配をかける事もなかったでしょう。

自分の行動を後悔していますが冬子さんがここまで想ってくれるのはとても嬉しいですね。

少し得をしました。


「それくらいの怪我なら……私が治せる……」


グレースさんがそう言いながら手招きしてきました。


「そうなのですか、ではお願いします」

「そこに座って……」


インパクトハンドガンのセーフティをかけて制服の隙間に差し込み、指示通りガゼボの椅子に座ります。

グレースさんは腰の入れ物から小瓶を取り出して栓を抜き、中に入っている液体を私の右手にかけました。

液体は栄養ドリンクみたいな薄い黄緑色でボディソープのような粘度があり、かけられた瞬間傷の痛みが非常に強くなりました。


「これはいったいなんですの?」

「錬金術師が作った……治療の魔液……」


それだけ言うとグレースさんは私の右手を触って液体を傷に塗りたくります。

そして塗るのをやめて両手で私の右手を包むと両手が発光し、私の剥がれた右手の皮膚が少しずつ繋がり始めました。

私の血で見えにくいですが傷はゆっくりと、しかし確実に治っています。


「す、凄いですわねこれ」


二分ほどで傷は完治しました。

手についた魔液というものはいつのまにか消えており、私の流した血と痛みだけが残っています。


「あの……それうちの生徒達にもお願いできますでしょうか?」


ガーランド教諭はそう言いながら軽症を負っている子達に視線を向けます。


「断る……」

「な、なぜでしょうか?」

「治療の魔液は魔力を送ることで効果を発揮する……私の魔力は残り少ない……魔液も有限……自然治癒で対処できる傷に使いたくはない……」


ガーランド教諭は少し不満そうですが納得した様子です。


「傷を治していただきありがとうございます」

「別に……」


私が感謝の気持ちを告げるとグレースさんは少し俯きました。

照れているのですね。


「お礼がしたいのですが、何かお求めになるものはありますか?」

「……魔力の回復がしたい……一晩泊めて欲しい……」




「ここがヤマムラシマ殿の住居なのか?おっきいなぁ」


説得するのも通報するのも面倒だから放置してたらマンションまでついてきたぞコイツ。

てっきり途中で諦めるか他の人に行くと思ったのに。


(こんな大きな家に住んでるとは、ひょっとしてヤマムラシマ殿はこの世界の貴族なのだろうか?身なりや歩き方は裕福そうには見えないがこの世界ではそういうものなのか?)


「うーむ」


なに考え込んでるんだかなぁ。

しかしさすがに初対面で自宅に上がらせるわけにはいかない。

というか家族だろうが友人だろうが人を自分の部屋に入れたくないし。

私はそこまで安くないぞ、ここははっきり言わないと。


「あっ、あのぅ……」

「む?どうかしたのか?」

「……なんでも……ないっ」


あー駄目だ。

なんというか純粋に懐いてきてる気がして邪険に扱えないよ。

激安だな私。


「この建物は魔法のリフトで移動するのか、話に聞く魔法図書館みたいだな!」


この女が邪な事を考えている感じがしないのはきっと完全に頭がおかしくなって、本当に自分をなんたら騎士と思い込んでる精神異常者だからなんだ。


「なんだか扉が沢山あるぞ、なぜこんなに?」


あっ、もう着いちゃった。

ここまで来たらもう入れるしかない感じ。

私の体力じゃあ強引に追い出すのも無理そうだし、何かされても抵抗できないだろうなぁ。

お持ち帰りされるのはこんな気分なのか、いや持ち帰ってるのは私のほうか。


「ヤマムラシマ殿……私の後ろにいろ」


扉を開けたら突然私を押しのけて剣を抜いたぞ。

今度はどんな設定を話す気だ?


「なっ、なに?」

「荒らされている、何者かが侵入したようだ」


散らかってるだけだよちくしょうめ。


『あ”あ”あ”あ”あ”あ”』

「なんだ、亡霊か」

「え」

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