5 射手
交信堂
礼拝堂のようなものです。
観測台
天文台みたいなもんです。
「はぁッ……!」
グレースさんが杖を振るうと同時に杖から光で形成された刃が出現してチュパカブラの体を切り裂き、二体が倒れました。
私はエネルギー残量を確認することなくインパクトハンドガンを撃ち続けます。
グレースさんの魔法は高威力ながらも使用までに時間がかかるものだと感じます。
私の射撃を含めてもチュパカブラが来るまでに全てを倒すのは不可能なので確実に襲われます。
インパクトハンドガンの威力は思ったよりも高く、後ろの子達と入り乱れてしまうと誤射の危険があるので射撃ができるのは今の内だけでしょう。
「グールの筋力は普通の人間と変わらない……爪と噛み付きに注意して全員で押さえつければ勝てる……」
グレースさんはそう言いますがあの子たちが突然素手で戦うのは心理的に難しいと思います。
そうこうしている内に残り四体のチュパカブラはとうとう私の眼前に辿り着き、右腕を振り上げます。
私は目の前のチュパカブラにあえて接近。
左腕で頭部を守り、右腕で胴体を守りつつヒップシューティングに近い形で銃口をチュパカブラの腹部に押し当てて発砲。
「グギャッ!」
そのままチュパカブラの右腕を掴んで引っ張り、足を引っ掛けて転ばせてからトドメに至近距離で頭部に発砲。
「来ないでっ!」
「いやっ!」
二人の子が恐怖から交信堂の方へ走って逃げ、それに釣られて同じ方向へ逃げる子達が続出しました。
その結果四体の内二体がそれを追いかけて行きます。
「このっ!離れてくださいまし!」
残り二体は私を通り過ぎて後ろにいた子に襲い掛かりました。
一体は冬子さんとガーランド教諭が鞄を盾にして引きつけ、他の何人かが鉛筆で眼球を狙おうとしています。
そしてもう一体はグレースさんが素手で後頭部を掴んでおり、掴まれたチュパカブラは悲鳴をあげて眼球から炎を出していました。
「こちらは任せて……残りを追って……」
私は言われた通り逃げた子たちを追いかけた二体の方へ走ります。
グレースさんは私のインパクトハンドガンと違って周囲に被害が出る恐れのない技を持っているようなので、あの場は任せた方が良いでしょう。
しかし彼らの筋力は普通の人間と変わらないと言っていましたが、走る速度こそ人間と変わらないものの持久力はかなりあるように思えます。
「グルルル!」
「あっちいってよ!」
交信堂内に逃げた子達は長椅子を挟んだ状態で二体と鬼ごっこをしています。
「こっちを見なさい!相手は私ですよ!」
「グルル……」
私が大声を出すと二体は私に気づいて他の子を追いかけるのをやめました。
逃げ回る複数人より、逃げない一人を二体で相手にした方が良いと判断したのでしょう。
「そうそう良い子ですね、あなた達は観測台へ行ってください」
「は、はいっ!」
交信堂の出入り口は正面の扉だけなので裏にある階段から屋上の観測台に立て篭もってもらいます。
一体は私の正面に立ち、もう一体はゆっくりと移動していますが、これは私を挟み撃ちにする気ですね。
しかしおかげで他の子たちが階段を登って観測台へ行く時間は稼げました。
誤射の危険がなくなったので正面にいるチュパカブラに発砲します。
この銃の発砲音はあまり大きくないので屋内でも耳を気にする必要がなくて良いですね。
「グァガッ……」
距離が近くあまり動いていなかったので胴体の真ん中、通常の生物であれば確実に内臓のある箇所を撃ち抜けました。
即座に残った一体に銃を向けます。
「グギッ!」
「あら」
どうやら私の持っている武器がどういうものかを理解したようで、長椅子に隠れてしまいました。
隠れた長椅子ごと撃ち抜こうと二回発砲しますが手ごたえはありません。
チュパカブラはただ隠れただけではないようで、隙間から移動しているのが見えます。
遮蔽物に隠れつつ逃げるか、私が隙を見せるのを待つ気なのでしょう。
セレクターを切り替えて範囲の広い、ワイドモードで撃ってみます。
バワァ!
強風と水に手を叩き付けた音を混ぜたような発砲音と共に長椅子とチュパカブラを転がしました。
インパクトハンドガンの詳細では非殺傷武器にもなるかもしれないと書いてありましたが、これは至近距離なら普通に殺傷力がありそうですね。
「グァァ……」
逃げないうちにトドメを刺しておきましょう。
セレクターを切り替えて銃口をチュパカブラの頭に押し当ててトリガーを引きます。
ピッ!
「あら?どうしたのでしょうか?」
何度もトリガーを引いてみますがピッという音が鳴るだけでした。
銃の右側を見てみるとゲージが赤く表示されていました。
エネルギー切れですね。
「グアッ!」
「おっと」
起き上がらずに攻撃して来るのがわかったので距離を取りましたが間に合わず、爪が私の右手に命中して銃が左側に飛んで行ってしまいました。
私の右手は甲の皮膚が少々剥がれて出血しており、指を動かせません。
痛いです。
「血が出たじゃあないですか」
「グルルルル!」
チュパカブラはかなりご立腹みたいです。
インパクトハンドガンのエネルギーチャージがどれくらい必要なのかわかりませんし、回収しようにも背中を見せては攻撃を受けるでしょう。
グレースさんの所まで逃げようにも出入り口はチュパカブラの向こう側、観測台に逃げればあの子たちにも危険が及ぶでしょう。
「となれば戦うのが一番ですね」
格闘はあまり得意ではありませんが幸いにも相手は人間に近い体型で体格も私同じくらい。
右手の指が動かせないこと以外は身体に問題なし。
足の関節を破壊して行動不能にしましょう。
「すぅーふぅー……」
呼吸を整えつつ構え、相手の攻撃を誘発するために接近しようとしたその時でした。
「グルァッ!?」
チュパカブラの胸に矢が突き刺さり、続いてもう一本矢が刺さるとチュパカブラは倒れます。
矢の刺さっている向きから矢を放った者がいるのはバルコニーであるとわかり後方を見上げると、そこには弓を持った子がいました。
「やあ」
観測台へ逃げた子ではありませんが、普段の生活で見た事はある一年生の子でした。
しかしなぜあそこにいるのか疑問です。
その子は階段を降りて私の目の前まで歩いて来ました。
「初めましてというべきかな?マイヤーズお姉様」




