4 試射
「あー……あなたはどちら様で?」
「……帝国騎士団……の、見習い四年生……ガストンの子グレース……」
魔女のような格好の方の返答でガーランド教諭は呆れたような困ったような表情になりました。
「なんで敷地内に入ってきたんですか?」
「意図して他者の所有する敷地に侵入したわけではない……」
あまりはっきりと言わないタイプのようですね。
意図的に言葉を濁しているというよりは単純に聞かれたことしか言わないのでしょう。
「えー……じゃあとりあえず警察呼んでいいですか?」
「警察……取り締まられては困る……私は姉を探さなければならない……」
「姉?ひょっとしてあなたはここの生徒の妹さんだったり――」
ガーランド教諭が言いかけたところで突然大きな地震が発生しました。
私は冬子さんの肩を掴んで少し強引に姿勢を低くさせました。
「きゃぁっ!」
「みんなしゃがんで!」
近くの子が転倒したのを見た冬子さんは大声で姿勢を低くするように言うと、その場にいた方々は全員地面に手をついてじっとします。
この中庭はガゼボ以外建築物はないので姿勢を低くしたまま慌てずゆっくりガゼボから離れます。
ガゼボは倒れそうには見えませんが気をつけるにこしたことはないでしょう。
「震度五くらいかしら?」
「そこまで大きくはないと思うけど」
一分もせずに地震が収まりましたが、余震の可能性も考えて全員動きません。
建物の窓が割れたりしないか気になり周囲を見回してみると、いつのまにか遠くに点々と黒い何かがあるのがわかりました。
そしてグレースという方はそれらに対して杖を向けながら歩き始めました。
「全員ここから動かないで……散らばられたら守れない……」
その黒い何かが近づいて来るにつれてその正体がわかりました。
おまわりさんに噛み付いていたチュパカブラと同じものが十数体。
それが一斉にこちらへ走ってきている姿は、少なくとも友好的な存在には見えません。
「なんなんですかあれ!?」
「お、おばけですわ!」
私は少し離れたところから質問してみました。
「グレースさん、あれは私達にとって害のある存在なのですか?」
「あれは食屍鬼……少なくとも……あそこにいるのは敵……つまり害……」
「そうですか」
グレースさんの持つ杖はバチバチと音をたてる黒い電気が走っています。
そして少し経った後にグレースさんが杖を地面に突き立てると黒い雷が地面を這って進み、遠くにいるチュパカブラに轟音をたてながら命中、チュパカブラは糸が切れたように倒れて動かなくなりました。
「ま、魔法!?」
「あのお方は本物の魔女なの?」
グレースさんはもう一度同じことをしようとしていますが、チュパカブラの移動速度からしてあと一回使用できる程度でしょう。
私はステータスを開き、インパクトハンドガンを取り出すためにアイテムボックスを開きます。
「ち、千影様?なにをなさっているのですか?」
「私も戦おうかと、そういえばこのステータス見えていますか?」
「すてーたす?」
どうやら冬子さんは私のステータスが見えていないようです。
しかしグレースさんはこちらに一瞬視線を向けてこう言います。
「”導き”が出せるのか……共に戦って欲しい……手数が足りない……」
「承知しました」
導きとはなんなのか気になりますが今はそれどころではありませんね。
先ほどの黒い雷をもう一度放つと今度は杖を両手に持ってそのまま殴りかかるのではないかという構えをしました。
そして杖が青白い光を帯びはじめます。
私はインパクトハンドガンをアイテムボックスから出して手に持ち、左側にあるサムセーフティのようなセレクターを押し上げます。
するとインパクトハンドガンから甲高い起動音のようなものが聞え、右側にエネルギーが表示されました。
「それはなに……?」
「私は未来の兵器とかだと思ってます」
にしては照準器がスリードットタイプのオープンサイトという未来的な感じがしないものですが。
一段押し上げたセレクターはiのようなマークが表示されています。
さらにもう一段押し上げると扇のようなマークが表示されているので、おそらくこれが範囲を広くした状態でしょう。
「構えて……」
グレースさんがそう言うので私はインパクトハンドガンのセレクターを一段下げ範囲の狭いモードに変え、一番近いチュパカブラに向けます。
射程がわからないので今の内に試し撃ちをしておきましょう。
ドゥン!
なんとも低い発砲音と共におじい様の持っていた45口径の拳銃くらいの反動がきました。
撃ち放った衝撃は20メートルほど先のチュパカブラの胴体に命中して貫通したのか一瞬穴が空いたのが見えました。
弾道がわかりにくいですしチュパカブラはすぐに倒れてしまったのでよくわかりませんが、とりあえず20メートルは射程があり胴体に当てればチュパカブラを一撃で倒すストッピングパワーはあるみたいですね。
しかし初めての銃で当てられるとは思いませんでした、射撃を教えてくださったおじい様に感謝したいです。
「千影様……あなたはいったい何者なんですの……」




