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31 ニート&エルフ&バールⅣ

「ヒヒィイイイイン!」


あのモンスターは馬に人が騎乗しているのではなく馬と合わさっている人馬型モンスター。

秋恵とエルフちゃんがコンビニに逃げたように建物の中に逃げれば多分安全。

なので追いつかれる前に走って釣具屋へ。


「左から駐車場へ!」

「わかった!」


私達から見て左側に青に白の文字でPと書かれた二階と屋上にある駐車場への入り口があるのでそこへ向かって走る。

大した距離はないので追いつかれる前に入る事が出来たけどぶら下がっている看板に気づいた。


[↑ IN 高さ制限2.3M OUT]


これあの人馬型モンスターも余裕で入って来れるな。

電気が通ってないため薄暗い駐車場に入っても走るのを止めず、右側にある階段へ直行。

駐車場内にモンスターがいる可能性もあったけど構わず走り抜けたせいでいたのかわからない。

なので階段の扉を閉めたら真っ暗で何も見えなくなった。


「はぁはぁ、逃げ切ったか?」

「ぜぇぜぇ……た、たぶん」

「ふぅ……イクァンムス」


とりあえず明かりをつけようと思ったけど肝心の明かりを持っていないことに気づいた。

懐中電灯やライターやマッチは自宅になかったから食べ物や水と一緒に取ってこようと思ってたんだった。


「明かり持ってない?」

「ちょっと待ってくれ」


秋恵がそう言って少し経つとスマホの明かりがついた。

暗所にいたのに突然光りを見て少し眩しい。


「一階に下りて明かり探しつつクリアリングね」

「クリアリングってなんだ?」

「安全確認」


階段に窓がないから真っ暗だっただけで一階の店内は少しだけど外の光りが差し込んでいた。

コンビニと違って釣具屋は荒らされた感じがない。

世界の終わりでこんなところに用がある人間はあまりいないだろうから当然か。

食べ物とかもないし。


「おっ、あったぞ」


レジの横に電池と小さなペンライトがあったので電池を入れて秋恵とエルフちゃんに渡す。


「クァス?」

「ここを押して」


私はエルフちゃんにペンライトをつけたり消したりするのを見せる。

するとエルフちゃんはすぐに真似してライトをつけた。


「おぉ!」


驚いたような感心したような感じでライトをつけたり消したりしている。

エルフもこういう時は「おぉ!」って言うのか。


「見て回ろう」

「ああ」


とりあえず光源は確保できたので改めて店内を物色しつつモンスターがいないかを確認。

実際のところ既に声や足音をたてているのに何も近寄ってこないし、何かいたらエルフちゃんが気づいてるだろうから多分モンスターはいないと思う。

それでも念のため確認しないと安心できない。


「いない……かな?」

「いないな」


あらかた店内を見て回ったのでモンスターはいないだろうと確信した。

これでゆっくりと物色できるな。

と思ったらエルフちゃんが袖を引っ張って来た。


「どうしたの?」

「イリィ」


エルフちゃんは何もないただの壁をライトで照らして指をさす。

しかしその行為で何を伝えたいのかよくわからない。

エルフちゃんは私達に伝わってない事を察知したのか何度も指をさしたりして悩んだ結果、秋恵の袖を引っ張った。


「なんだ?」

「ブェック」


秋恵を屈ませると秋恵の背中をつつき、その後に先ほどと同じように壁にむかって指をさした。

その動作から「背中を刺す」「外にいる」ということが読み取れた。

秋恵の背中を刺した人馬型モンスターがこの建物周り、壁のすぐ向こう側をずっとうろついてるらしい。


「アタシらを狙ってるのか?ただうろうろしてるだけ?」

「さあ……どうだろ」


どちらにしても店内には入ってこないみたいだから物色と休憩をしつつ様子をみるのが一番。

秋恵とエルフちゃんはコンビニの中にいて私が行くまでの間にどっか行ったみたいだし。

多分そのうちどっか行ってくれるのを期待しよう。


「釣具屋だから当然だけど釣竿すっげえ沢山あるな」

「中古も取り扱ってるらしいから」


釣竿の中には驚くような値札がついているものもある。

この竿一本の値段でsteamのセールでゲームが何本買えるんだろ。


「こんな値段の竿じゃないと釣れない魚がいんのか」

「どうだろね」


姉ちゃんからなんとなく聞いた覚えはあるけど思い出せないから言わないでおこう。

それよりもこの釣具屋はアウトドア用品も少し取り扱っているのでLEDランタンとかケミカルライトとかあるはずだからそれを探す。

と思っていたらフィッシングウェアのコーナーが目の前にあったので先にここでエルフちゃんの服を取っていく。


「この子に合うサイズって少ないね、子供用のとかないかな」

「いやサイズも問題だけどデザインが……機能的っつーか可愛くねーのばっかりだな」


そこは問題といえるのか。


「別によくない?」

「悪かないけどよくもないだろ、もうちょっと探そうぜ」


エルフちゃんに可愛い服着せたいって気持ちはわかるけど今考えることじゃないよなぁ。

モンスターが私達を認識するのにどんな器官を使ってるのかわからない以上は目立つ色は避けるべきだと思う。

なので目立たないこととサイズが合うことをクリアしてないのは却下しよう。


「おっ、こっちは女性用があるな……ん?」

「どうしたの?」

「なんか宝箱みたいなのがあんだけど」


秋恵が視線を向ける方には人が入れるくらいの大きさで木材を金属で繋いだ箱があった。

錠や鍵穴のようなものはない。


「転移して来た異世界の物じゃないかな、弓とか入ってることがあるみたい」


ソレフマイネンが持ってた弓は転移して来た宝箱から出たものらしいし。


「へぇ、何が入って――」

「待って」

「どうした?」

「いや、こう露骨に目立つところに置いてあるとさ」


私は剣を軽く叩きつけてみた。


「なにしてんだ」

「罠じゃないかなーなんて思っちゃ――」


『ファァァァァァ……』


「えっ!?」

「はい!?」


宝箱から声が聞え、直後に宝箱の蓋が開く。


「クァス?」


宝箱の中には短い触手のようなものがびっしりと並び、中から長い腕が出てきた。

その長い腕が床に手をついて宝箱が持ち上がり、ゆっくりと手を進めてテケテケみたいに近寄って来た。


「うっわ……」

「きめぇ……」

「メォレィ……」

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