表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/37

30 ニート&エルフ&バールⅢ

「むん!」

「な、なにしてるの?」


突然動物を殺害したエルフちゃんはその死体を少し力んで運び始めた。

小柄なのにも関わらず割と普通に中型犬サイズの死体を持ち上げている様子からステータスで筋力にいくつか割り振っているらしい。

運んだ死体を公園の端にある水道の所に寝かせて、蛇口を弄って水を出した。


「なんで蛇口の使い方知ってるんだ?」


少なくとも私達と過ごした短い間に水道を使ったことはない。

その前に知ったのか。


「異世界にも似たような物があるんじゃないかな」


異世界の文化水準をよく知らないから地球における中世をイメージしちゃってたけど案外科学が進歩してる世界なのかもしれない。

魔法なんてものがあるんだから文化の発展もこの世界と同じにはできないだろうし。

しかしエルフちゃんが蛇口を使えることよりも今やっていることの方が気になる。

エルフちゃんは恐らくアイテムボックスから取り出したであろう奇妙な形のナイフで死体の首の辺りを切っていた。


「お、おいなにしてんだ!?」

「血抜きかなぁ……」


ディスカバリーチャンネルとか狩猟動画で見た事がある作業。

その後もエルフちゃんは手際良く肛門周りを切り取って内容物が出ないように縛ってから腹を裂いて内臓を取り出す。

恐らくは心臓と肝臓であろう部分だけを切り取り、残った内臓は放置して心臓と肝臓と死体を軽く洗ってアイテムボックスに入れた。

私は動物の死体をアイテムボックスに入れられるということとエルフちゃんが解体を行ったということに驚き、秋恵は目を背けている。


「終わったみたい」

「あ、ああ……」


気分悪そう。

確かに見てて気持ちの良いものではないけどそこまでではないような。


「大丈夫?」

「ああ……チュパカブラみたいなモンスターを殺したことあるけど内臓を見るのは初めてだ……」


武器がバールじゃあ中身までは出ないだろうしね。

かくいう私も魚以外の生き物の内臓を見るのは初めてだ。

思えば紫灰人とかマネキンとか対してグロくないのとしか戦ってないな。

バケツ頭は戦わずに逃げたし。


「ケットルゥ」


手とナイフを洗い終わったエルフちゃんは私の手を握った。

水に触れてたせいでエルフちゃんの手が冷たい。


「いこー」

「ほら、行くよ」

「おう……」


というかエルフちゃんは右手に変なナイフ持ったままだ。

あの動物をアイテムボックスに入れて枠がいっぱになって戻せなくなったとかかな。

だとするとエルフちゃんのレベルはそんなに高くないのかも、アイテムボックスの枠ってレベルが上がると増えるらしいし。


「この先にあるユージンって釣り具屋に寄って行こっか」

「いいけどどうして釣具屋なんだ?」

「全員分のリュックとかこの子の服とか取っていこうと思って」


私や秋恵と違って異世界から来たエルフちゃんはこれからどんどん寒くなる時期には合わない服装。

見てるこっちが寒いってありきたりな言葉が出そうな袖の短さ。

本人は気にしてないか我慢してるかだろうけどどっちにしても何か着せたい。


「服なら戻ったところにイオ――」


近くにあるスーパーマーケットがダンジョン化したと知らずに行く事を提案しようとした時。

不意に秋恵から音楽が聞えた。


「ひっ!」

「クァス!?」

「待て待て!」


こんな時だから警戒しちゃったけどよく考えれば日常ではありふれたもので、秋恵の持っていたスマホが着信音を発しただけだった。

というかスマホ持ってたのか、地図とか見るためにも教えてくれてよかったのに。

今ネットが生きてるのかも気になるけど秋恵はスマホの画面を見たら電話に出ることもなくただ固まって動かない。

画面確認するフリをして着信の音楽を周囲に聞かせるにしては長く固まってる。

そしてとうとう切れてしまった。


「出なくてよかったの?」

「ああ……今はちょっと……な」

「ふーん……使わないなら電源切っておきなよ、今みたいに突然着信音が鳴ってモンスターに襲わるかもしれないから」

「……ああ」


小さな声で返事をした秋恵はスマホの電源を切ってポケットにしまった。


「行こ」

「ああ」

「いこー」


それからの秋恵は妙に暗かった。

何か事情があるのはわかるけど私にはそんなの知ったこっちゃない。

知ったこっちゃないがエルフちゃんが秋恵を心配して何度も視線を向けている。

三人の中で一番索敵が出来るエルフちゃんがこれだとモンスターの接近に気づけないかもしれないからどうにかしたい。

雑談でもして気分を変えさせよう。


「秋恵はさぁ……」

「ん?」


やべぇ何話したらいいんだ。


「あー……あ、アイアムレジェンドって映画見た事ある?」

「いや、ねぇな」

「あそう……」


やるもんじゃないね、キャラじゃないことは。

思えば雑談をしようと思って出来たことがないな。


「無理して気使わなくていいって、山村さんはそういうの苦手なタイプだろ」


私の何を知ってるってんだ。

確かに気を使うって行為が苦手だしそもそも会話が嫌いだけどね。


「しっかしあれだな、初めて名前呼んでくれたな」

「そ、そうだっけ?」

「そうだよ」


そういえばそうかも。

秋恵が苗字を教えてくれたら苗字で呼んでたんだが。


「なあ、アタシも山村さんのこと名前で呼んで良いか?」


名前で呼ばれたからってデメリットがあるわけじゃないけど馴れ馴れしい感じがして不快だな。

ただここで拒否して好感度下げるよりは不快な方がいいか。


「い、いいよ……」


緊張して話し方戻っちゃった。


「……山村さんの名前なんだっけ?」

「志摩だよ、志摩」

「そうだった、よろしくな志摩さん」


ただ名前を呼ぶことを許しただけで明るくなった。

チョロいなこの子。


「名前も苗字みたいだな」

「それもう聞いた」

「ははっ、そうだっけ」


なんてやり取りをしているうちに目的の釣具屋が見えてきた。

釣具屋は前に見た時のまま残っていてた。

ガラス張りの一階はシャッターが下ろされてるけど二階の駐車場への入り口は開きっぱなし。


「ハッ!イリィ……!」


エルフちゃんが手を引いて私達の背後を指をさした。

「イリィ」って「あっち」とか「みて」みたいな意味があるのかなと思いつつ振り返ると遠くの方に何かが見えた。

とりあえずその何かは少なくとも今まで地球上にいた存在ではなさそう。


「あれは!」


遠くてよく見えなかったけど凄い速度で近づいて来るにつれてその姿がわかる。

ケンタウロスみたいな体型だけど上半身は人間じゃなくカマキリみたい。

でも両腕は鎌というより螺旋状にねじれた槍、全身が甲冑みたいになってる。


「ヒィィイイイイイン!」


泣き声は馬っぽい。

エルフちゃんや秋恵の反応とあの外見からして秋恵を刺したのはあいつか。


「どうする?」

「逃げる」

「アビリェヘン」

「じゃあ逃げよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ