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28 ニート&エルフ&バール

騒動が始まってモンスターが出るまでの間に荒らした人がいたらしく、それなりに商品がなくなっていたけど、それでもまだある程度は残っていた。

まずこのコンビニが最後に商品を仕入れたのがいつかわからないので日持ちしなさそうな食べ物は除く。

大体の缶詰は大きかったり重かったりするから持って行かないのでここで食べ、持って行くのはカロリーがメイトなやつとかチョコバーとかにする。

とりあえずエルフちゃんには桃の缶詰をあげた。


「レクメンツィ!」

「美味しい……って感じのかな?」

「そうだろ、多分」


異世界人、それものエルフの体がどうなってるのか分からないから食べさせていいものかどうか不安になる。

まあ食べて笑顔になってるから喜んでるってことだろうし、いいか。


「それで、持って行く飯はそれだけか?」

「あっうん、荷物が重いと疲れるからね」


リュックにはできるだけ軽い食べ物を選んで移動に支障がない程度の量を入れる。

秋恵の服が血まみれだったので中に入れていた着替えを渡してスペースを作り、水は捨ててコンビニの飲み物と入れ替える。

いやー、コンビニを好きに漁ることが出来るなんてなぁ。

本来頑張って働いて稼いだ金で買うものをただのニートが好き勝手に荒らすなんて最高じゃあないか。


「他に持っていくもんはあるか?」

「えーっと……トイレットペーパー……は邪魔だからポケットティッシュくらいかな」


カタリナは人助けが終わったら一度私のところに戻って来ると言ってたから自宅でそれを待つだけだし、このコンビニは近い距離にあるから無理せず運べば良い。

最悪の場合は静岡ダンジョン化した場所に行けば食べ物は手に入る。

威勢よく家を出た割には結局コンビニ行って自宅に戻って篭城である。

まあ私が行動したところでできる事はこんなもんだろう。


「むぐむぐ」

「……美味しい?」

「んぐ、おいしー?マンヅエスェ?」


なんとなく言ってみた「美味しい?」を「一口ちょうだい」みたいな感じに受け取ったらしく、桃を刺したプラスチックのフォークを私に向けた。

せっかくの好意だし少しだけかじってみる。


「んー……うんうん」


久しぶりに缶詰の桃食べたけど、やっぱり黄色いやつより白いやつの方が好きだな。


「ウンウン、はむっ!」


エルフちゃんと私達の食事が終わったのでコンビニを出ようとすると、秋恵が立ち止まってなにやら財布から金を取り出してレジに置いていた。


「えっと、なにしてるの?」

「災害とかで止むを得ず商品を貰う場合は金を置いて行くもんだろ」


私は異世界人であるカタリナから聞いた情報で、もう社会が元に戻る気がしていないから何も思わないけど、秋恵は元に戻る事を期待してるのかな。

今置いた金額からして私やエルフちゃんの分も入ってるみたいだけどこの先同じ事を繰り返して現金がなくなったらどうするんだろ。


「千円くらいは持っといた方が良いよ、この先喉が渇いて目の前に電源入った自販機が……なんてこともあるかもしれないから」


電気が通ってないのはこの辺りだけかもしれないということを踏まえて紙一枚持ち歩くくらいなら損はない。


「そうか、わかった」


秋恵は財布をポケットにしまうとバールを持って先にコンビニを出て周囲を確認、それが終わると手招きをしてきた。


「さ、行こう」

「いこー?」


剣を入れた紙袋を左手に持って、右手でエルフちゃんと手を繋いで歩く。


「ハッ、いこー!」


そう言って私に合わせて歩き始めた。

「行こう」という言葉を理解したみたい。

話しかけ続ければもっと覚えるのかな。

まあ竜言の刻印がある異世界人がいれば覚えるまでもないんだろうけど。


「山村さんの自宅に来る迎えってどんな人なんだ?」

「え?あー……」


カタリナは気にしないだろうけど、やたら情報漏らして迷惑かける原因になったら嫌だし適当に応えておこう。


「うーん……性格は少し暑苦しいかなぁ、外見はハリウッドでアクションやってそうな感じ」

「よくわかんねーな、映画とかあんま見ないから」

「ふーん、じゃあ普段なにしてるのさ」

「友達と遊んだり、奇術の練習とか勉強とかだな」


マジシャンでも目指してるのかな。


「山村さんは普段なにしてるんだ?」

「ゲームしたり漫画読んだりかな……」


クソコラ作ったり動画編集したりss書いたりアニメ見て掲示板に張り付いたりとかは言わない。


「見た目通りインドア派なんだな」

「インドア派でよかったよ、余計な混乱に巻き込まれずにすんだから」

「アタシも大学サボっててよかったぜ」


大学サボってなければ後ろから刺されなかったかもしれないとは思わないのかなこの子。

しかし今更気づいたけど私にしては会話がスムーズになってる。

正確には話をする時にどもる事が減ってる気がする。

これは良い事なのかもしれないが、慣れるほど誰かと話してると思うと反吐が出るわ。


「しっかしマジで人いねぇな、大体二時間か三時間くらい前までは大騒ぎだったのに」

「隠れてるんでしょ、この辺りはマンション多いから一人もいないってことはな――」

「クイエセ……」


もうすぐそこに私のマンションがあるというところで、エルフちゃんが繋いでいる手を引っ張って立ち止まった。


「ん?」

「どうかし――」

「クイエセ……!」


言葉はわからないけれど静かにしつつも力を込めたエルフちゃんの声から、何かよくないことが起こっているというのは伝わった。

そしてすぐにエルフちゃんは私と秋恵を指差して自分の口を手で覆う。

それが「静かに」というジェスチャーな気がしたので黙ると、遠くから足音のようなものが聞えた。

私達三人の足音がなければそれなりに聞える大きさの音で、それは私のマンションの入り口から聞えたのでこっそりと覗く。


「なんだありゃ?」


秋恵が小声で呟きたくなるのもわかるものがいた。

私の住んでるマンションも含めて三つの建物で凹の形をしている場所、その真ん中に身長二メートル近い人型のロボットのようなものが立って辺りを見ていた。

そのロボットは一秒もせずに視線が定まり、足が変形したかと思ったら階段を使わずにマンションを上り始めた。

ヤマカシみたい。


「あれ?あそこって私の――」

「ヂフェセイ、イリィ……!」


エルフちゃんが小声で何かを言いながら私の手を引いてきたのでエルフちゃんを見ると、あのロボットのようなものとはまったく別の方向を指差していた。

その指の先にはもはや存在すること自体に驚かずとも、姿形に驚くべきものがいた。


「うっわ……」

「でっけぇ……」


外見を地球上の生物で例えるなら頭がハエトリグサのナナフシといった具合で、植物とも虫とも思える姿。

しかしその大きさは地球上の生物ではありえないほどでかい。

マンションの向こう側が見えないけど、九階建ての建物から姿を見せる程度の大きさであることだけはわかる。


「おいあれ」

「え?あっ」


超巨大ナナフシがいる事に気づいていなかったであろうマンションの住人が出てきてしまい、それを発見した超巨大ナナフシが細長い手?足?を伸ばして捕らえようとする。

そこに一瞬電気のようなものが走ってナナフシが焦げた。

どうやらロボットが攻撃したらしい。


「……どうすんだ?」

「どうもこうもさっさと逃げよう」


あのロボットが人を助けたようにも見えたけど、偶然そのタイミングで攻撃したってだけかもしれないのでどっちが味方とかなんて考えることはできない。

多分あの場で起こっているのは怪獣対決みたいなものな気がする。

ああいうのには不用意に近づかないですぐに逃げるのが一番賢いと思う。

映画とか漫画でもああいうものに携帯電話のカメラを向けてる奴は大抵死ぬもんね。


「どこに向かってんだ?」

「予定変更、迎えは待たずにこっちから行く」


マンションに背を向けて逃げ始めてから爆発みたいな音が聞えてきた。

戻った時に私の部屋が吹き飛んでたりしたらどうしよ。


「はぁ……嫌だなぁもう……」

「ブェネ?」

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