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27 ニート&エルフ&……

スクロールの使い方はカタリナに聞いてたからその通りにする。

まずスクロールをアイテムボックスから取り出して手に持って破く。

すると破いたスクロールが灰みたいになって消え、私の手が緑色に光って暖かくなった。

ちょっと面白い。


「クァスエスッ?」

「えっと……この人が助からなくても私のせいじゃないからね」


光った手を傷口に近づけると、煙が換気扇に吸い込まれるみたいに光りが傷口に吸い込まれた。

なんだか冷水に体温が奪われるのに近い感覚があるなこれ。


「はぁ……はぁ……」


呼吸は落ち着いてるみたいだけどいまいち効果があるのかわからん。

服に付着した血のせいで[ヒーリング]が傷にどんな影響を与えているのかも見えない。

怪我人って動かしても良いんだっけ?頭を打ってたら動かさない方が良いんだっけ?頭打ってるのかすらわからんぞ。

まあいいか、動かすだけで命に関わるレベルの怪我なら私がどう足掻いたって助からないだろうし。


「さ、触りますよー?」


肩を掴んで仰向けにしようとするけど人間ってかなり重いんだな。

というか生き物って柔らかくて上手く動かせない。

傷があるであろう箇所に気をつかいつつ動かすと、この人が手に握っていたバールが落ちた。

このバールで戦ってたのかな。


「あっ、これは」


電気がついてないかつ早朝で薄暗かったから外見が分からないけどとりあえずこの人は女だ。

部分的にやわらかいが、しかし大きさに関しては――


「へへっ……勝ったな」

「はぁはぁ……なにがだよ……」

「ひっ!」


突然手を掴まれた。

ヤンキーっぽい、というか喋った。


「ブェネ!?」

「おぅ……無事だったか……」


[ヒーリング]のおかげで意識が戻ったのか、元から意識があったけど喋れなかったか。

とりあえず揉んでいたのを謝罪するべきか、でも命を救ったわけだしあくまで仰向けにしようとした結果なわけで。

いやそもそも助かったなら話す必要ないな、エルフちゃんに気を取られてるうちに逃げよう。


「待て……!」


そういえば手つかまれたままだった。


「は、放してください」

「よせ、危険だ……」

「き、危険?」


ああ、そういえばこの人どうやって怪我したんだろ。

どんな傷だったか見る前に治しちゃったからわからないけど本人に聞いてみるのが手っ取り早い。

やっぱり謝ろう。

しかしその前に許してもらいやすくするために愛想よくしとこう。

とりあえずリュックからペットボトルを出して差し出す。


「あっ、これ飲みます?」

「ああ……ありがとう」


中身はただの水道水だけどね。

あとはエナジーバーを渡し、少し休憩をさせて落ち着かせてから改めて問う。


「危険っていったい?」

「ふぅ……少し前、あんたが来る一時間前くらいだ、馬みたいな何かに乗った化け物が人を追い掛け回してたんだよ」


スマホで時間を確認しながらエルフちゃんを見た。


「この子が狙われてたから化け物をぶん殴ったんだがまるで効かなくてな、この子つれて逃げたんだが後ろから刺されちまったんだ、ただ建物の中までは追ってこなかったよ」


馬みたいな何かに騎乗したままじゃあコンビニに入れないけど、降りてまで追うつもりはない程度の執着だったのね。

大した距離じゃないとはいえマンションからこのコンビニまでの距離で誰も見かけなかったのはその化け物がいたせいか。

しかしまあ聞く限りエルフちゃんとはそこで初めて出会ったみたいだけどよく助ける気になれたな。


「あ、あの……ごめんなさい、触っちゃって」

「アタシがムカついたのは触った後の勝利宣言だけどな、まあいいけどよ」


どうせ許してくれるならもっと触っときゃあよかったぜ。


「グラチァコ!」

「え?なに?」


エルフちゃんが私の手を掴んで何か言ってるけど何語かすらわからない。

竜言の刻印ってやつがなくて言葉が自動翻訳されてないんだろうけど、なんとなくお腹がすいてるんじゃないかって気がする。

なのでポケットに入れてたある物を差し出す。


「キャンディたべる?」

「んんんー?」


首かしげちゃった。

お腹がすいてたわけじゃないみたい。

予想が外れた。


「なぁアンタ、どこか安全な場所を知らないか?」

「え?えーっと……」


今安全な場所なんて地球上に存在するのかというのは置いといて、カタリナの妹が言ってたらしい二つの世界が一つになる云々からして、今が世界が一つになった状態ならもうモンスターが転移して来ることはない。

であればモンスターを排除できる強い人がいる場所こそ安全。

ちゃんとした武器を持った自衛隊や米軍みたいな組織の基地をあてにするなら横須賀か厚木が近いけど、世界がこんな状況で受け入れてもらえるとは限らないし、人が多すぎると人間同士で争いなるかもしれない。

とするともっと近くにあって人数はそこそこで強い人がいて受け入れてもらえる確立の高い場所、ミスカトニック女学園だな。


「ま、まあ知ってるけど」


あっ、知ってるって言わないほうがよかったかも。

まだこの人を信用できる要素がないのにぽんぽん教えちゃうのは良くないよね。


「そうか」


それだけ言って少し黙った後、また口を開いた。


「アタシは……秋恵あきえだ、アンタの名前は?」


カタリナといいなんで先に名乗るんだ。

こっちも名乗らなきゃいけないみたいな感じにしやがってよぉ。

しかもなんで苗字は言わないんだ。


「や、山村志摩」

「どっちも苗字みたいだな」

「やむら……シーマ?」


人の名前聞いた感想がそれか。


「山村さん、アタシは行かなきゃいけない所があるんだがこの子を連れて行くのも置いて行くのも難しい、だからせめてこの子を安全な場所まで送りたいんだ」

「……それで?」

「この子を山村さんの知ってる安全な場所ってとこに連れてって欲しい、もちろんアタシもそこまでは一緒に行く」


そんなことをして私になんのメリットがあるんだ。

確かに私自身の安全のためにもカタリナたちと合流した方がいいかもしれないけど、他人と過ごすストレスを抱えるくらいなら多少危険でも一人でいたい。


「えー……」

「……頼むよ」

「たのむょ?クィドワスヅ?」


あーちくしょう純粋な目をこっちに向けるんじゃないエルフちゃんめ。


「そんな目で見ないでよ……わかった、一緒に行こう」

「ありがとう」


まあ電気が使えないんじゃあ他にやることないし、いざとなったら放置して逃げればいいよね。


グゥ……


「な、なに!?」


突然鳴った音に驚いて剣に手をかけたけど、それはモンスターの唸り声とかではなかった。

エルフちゃんのお腹が鳴った音だった。

さっきの予想は当たってたみたい。


「ご、ご飯食べよっか」

「ああ」

「ゴハン?」

おじいさんかお嬢様かヤンキーで迷った。

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