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25 ここが一週間前

「私はカラン、マイヤーズ千影、貴女の親愛なる機械です」


カランと名乗るそれは真っ白な肌――というよりは装甲――であり、人間であれば白目であるはずの部分は黒く、瞳はライトグリーンで発光しています。

かなりの長身で推定190cm、関節などを見ればすぐにそれが人間ではないとわかるものになっていて、人造人間アンドロイドと聞いて最初に思い浮かぶそれでした。


「えーっと……お姉様のスキルで出したのこの人?」

「人ではなく機械です、それもただの機械ではありません、非常に優れたとても優秀で特別な機械です」


私のスキルで取得できる武器には自立する機械も含まれているのですね。


「だというのに貴女は私ではなくガウスガンを選ぼうとしましたねマイヤーズ千影」

「カランというがどんな装備なのか分からなかったものですから、申しわけ――」

「謝罪は不要です、人間などと違って機械は根に持ったりしませんからね単細胞、間違えましたマイヤーズ千影」


機械に罵倒されるとは貴重な体験ですが、カランと話すのは後にしましょう。


「カランさん、神屍の棄児を倒すのに協力していただけますか?」

「専用装備があれば協力するまでもないですが、現在のスキルポイントではヒートソーが最も有効です、カートリッジも取得してください」


協力してもらえるかという質問には答えてくれませんでした。

カランさんは私の装備とはいえ自我を持っているみたいなので拒否するかもしれないと思いましたが、そんなやり取りをするまでもなく協力してもらえるみたいですね。

言われた通りヒートソーとカートリッジというものを取得してアイテムボックスから出しました。

ヒートソーは腰鉈を両手持ちサイズに大きくしたものをノコギリ刃にして引き金と撃鉄を取り付けたような外見であり、カートリッジは30cmほどの円柱。


「グリップ下部のセーフティを解除、撃鉄ハンマーをハーフコックに」

「はい」


言われた通りグリップ下部の安全装置らしきものを回転させ、ヒートソーのハンマーをハーフコックにすると峰の部分が開きました。


「カートリッジの赤い方を入れて閉じ、フルコックにすれば準備完了、トリガーを引いている間は発熱します、発熱時間は短いので使用する時以外はトリガーを引かないように」


カートリッジの赤く塗られている方を開いたところに差し込んで閉じ、ハンマーをフルコックにするとカランさんは落ちているチャージシールドを拾って先に歩いて行きました。


「あっ、待ってよー」

「ウルリカ・ソレフマイネンは阿賀野冬子とここで待機しなさい」


それを告げると同時にカランさんの真っ白な肌が周囲の黒金に近い黒色に変化し、目は発光しなくなりました。

二十秒も歩かずに棄児とグレースさんとカタリナさんが視界に入ります。

思ったよりもずっと近い距離で休んでいたのですね。


「オギャアアアアアア!」

「せやぁッ!」


私が気絶する前とは違い、棄児は走り回りながらしっかりと相手を狙ってヒット&アウェイを繰り返しています。

それに対してグレースさんの魔法で守られたカタリナさんがすれ違うように剣で攻撃を行っていますが、あれはグレースさんの魔力が切れたら終わりでしょう。

気絶している間に何かがあったか、時間経過かで攻撃パターンが変化していますね。


「私があのモンスターの動きを止めます、その隙にヒートソーで首を落としてください」


カランさんはチャージシールドを私に投げ渡した直後に足が伸びて変形、逆関節になると棄児にも劣らぬ速度で走りました。

しかし残念ながら左目が痛くて涙が出るせいで追うのが難しいです。

どうせ視界が悪いなら左側にチャージシールドを構えておきましょう。


「な、なんだあいつは!?」


高速で走る棄児と真っ向からぶつかり、レスリングのように組み付いて停止しました。

走って近づきますが、組み付きの体勢から首を落とせという指示通りにはできないので足を攻撃することにします。

ヒートソーのトリガーを引くとノコギリのようになっている部分が黄色く光り、熱を帯び始めたので棄児の足に押し付けて前後に動かしました。


「オギャアアアアアア!」


棄児の絶叫が耳に響きます。

ここで初めて左耳が聞えにくくなっているのに気づきました。

数秒でヒートソーは棄児の足を溶断したので続いてもう片方の足に刃を当ててトリガーを引くと、一瞬だけ黄色く光ったら突然ハンマーがカチンと音をたてて発熱しなくなりました。


「あら?」

「燃料切れです、カートリッジを入れ替えなさい」


片足になったとはいえ棄児に組み付きながら喋って一切声に変化がないのはさすが機械。


「ギャッ!アアア!」


しかし両手を塞がれ足を溶断された棄児はカランさんに頭突きをし始めました。

頭突きを受けるたびにガコンガコンと金属音が響きます。


「早くカートリッジを入れ替えて止めを刺しなさい、頭突きが効いているのではありません、とても不快なのです、鈍感な貴女にはわからないでしょうねマイヤーズ千影」


私がカートリッジを入れ替え終えると、カランさんが組み付きの体勢を変えて頭部を攻撃できるようにしてくれたので首に刃をあててトリガーを引きます。


「オオオギャャアアアアアアアア!」


首を落とそうと思ったのですが、その前に棄児が断末魔の叫びと共に動かなくなって地面に倒れ、カランさんは組み付くのをやめました。

何が起こっているのかわからず様子を見ていると、棄児の体がバラバラに砕け散り煙のように消えてしまいました。


「討伐成功、貴女がモタモタしているから断頭する前に熱のダメージで絶命してしまったようです」


断頭がしたかったわけではないので倒せたのなら問題はないです。

神屍の棄児が消えた場所に金色の文字が刻まれた四角い緑色の宝石のようなものが落ちていました。


「これはなんでしょう?」

「それは魔道石……スクロールとは違い使用すると封じられた魔法を覚えることができる……」


いつのまにかグレースさんとカタリナさんが近寄って来ておりこの石の説明をしてくれました。

二人とも大きな怪我はないようですね。


「あの怪物を止める筋力とその足、貴公はいったい何者だ?」

「私はカラン、マイヤーズ千影の親愛なる機械です」

「話はあと……とりあえず洞窟を出る……」


カランさんが変形させた足を戻したのを見ても気にせずに出口へ歩いて行くあたりグレースさんらしいですね。

私は魔道石をアイテムボックスに入れ、ついでに詳細を見てみます。


――――

出自不明の産声


何者かが放棄した赤子へ授けられた、旧き神の御技の一部


使用に魔力と激痛を伴うそれは

持ち物、あるいは体を一時的に黒金へと変化させる


棄児は深い孤独に苛まれ、故に家族を求めている

立ち上がったその時から一人であった棄児は、いつ孤独を知ったのだろうか

――――


これは良い魔法なのでしょうか、後でグレースさんに聞いてみましょう。


「何をしているのですか」

「今行きます」


落ちているチャージシールドを拾ってカランさんに付いて行くと、すぐに冬子さんとウルリカさんが駆け寄って来ます。


「出られるようになってたけど倒したのー?」

「ええ」

「千影様!お怪我は!?」

「ないですよ、それより外へ出ましょう」


冬子さんはカタリナさんに抱えてもらって外へ出ると太陽の光りで目が眩みました。

しかしそれはとても心地よく、両手を広げて日光を浴びます。


「太陽さいこー!」


棄児を倒し洞窟から出て緊張が解れ、改めて体の痛みを実感して辛いです。

左目と左耳を含む頭部の左側に背中と肩、わき腹に激痛が元気に駆け回って私を苦しめます。

今夜は確実に痛みで寝れないでしょう。


「痛いようですねマイヤーズ千影」

「ええ、これだけ痛くても気絶できないのですね、意識を失えれば楽なのですが」

「生物の体は不便なことこの上ない、やはり機械の方が優れています」


カランさんとの会話で気を紛らわそうとしますがその程度ではどうにもなりません。

涙が出てきました。

森を抜けたところで歩くのも辛くなってきました。


「グレースさん、眠る魔法とか――」

「きゃっ!」


言い終わる前に突然地震が来ました。

前のとは比べ物にならないほど大きな地震であり、疲労が溜まって満足に歩けていなかったため転倒しかけましたが、カランさんが受け止めてくれました。


「のろまな貴女に二足歩行は難しいでしょう、大人しく抱えられることを推奨します」

「お願いします」


二分ほど続いた地震がおさまると、皆が空を見上げていました。


「あれなにー?」


ウルリカさんがそう言って空を指差しました。

私は涙を拭って空を見上げると一瞬台風と間違うほど強い風に吹かれ、上空にあるものに気づきました。

オニイトマキエイに似た形状の半透明で巨大な何かがゆっくりと移動していました。


「あれは……造物主の先触れ……?」

「敵ですか?」

「わからない……世界が大きく変る時に姿を現すという……壁画や言い伝えでしか知る者はいない……」

「透明で空を飛ぶ巨大な何か、という話があるだけだ」

「そうですか」


あれが何であれ、敵でなければそれで良い。

そんな事を考えていたら、後方から異様な気配を感じました。

その場にいた全員が同じものを感じて振り返ると、そこには体長十数メートルのゲームや漫画、絵画などでもよく見るものがいました。

先ほど地震が起こった時に転移して来たのでしょう。


「ひいっ!」

「ど、ドラゴン!」

「あれは敵ですか?」

「敵の可能性が高い……」

「かっこいいー」


赤い鱗に覆われ、翼が片方しかなく頭部に傷があり、手――もしくは前足――に巨大な木の板のようなものを持っているドラゴンは私達を見つめてこう言いました。


『ここはどこだ?』

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