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21 黒金の騎士

私とウルリカさんの攻撃を防げる盾を持ち、スキルの使用が可能かつ知性のある敵。

それに対して私は盾を失い、罠にかけやすくするために黒金の騎士を誘導した場所は一本道なので私達は縦並び、人数の多さを活かせないことに加えて非戦闘員を一人抱えている状態。

黒金の騎士がどれほどの強さなのかわかりませんが、重傷者を出さずに勝利することが可能な相手なのでしょうか。


「私の魔法が有効……」

「では時間を稼ぎます」


話し合っている時間はありませんのでグレースさんの攻撃が通用するのであればとにかく押し返して広い場所に誘導するのが良いと判断しました。

騎士の持つ盾と同様に鎧も黒金化しているように見え、加えて鎧の中にいる本体も黒金化しているのであれば盾をかいくぐり鎧を攻撃できてもインパクトハンドガンや弓矢程度では有効打にはならないでしょう。

期待できるのはグレースさんの魔法かカタリナさんの攻撃ですが、カタリナさんは人を抱えているので今すぐに動けるのは私だけ。


「その子は僕に任せて!早く!」


追跡という重要なスキルを持ち、騎士に対して有効な攻撃手段のないウルリカさんが鹿野さんを連れて逃げるのでしょう。

私はインパクトハンドガンをワイドモードに切り替えて連射しながら黒金の騎士に接近します。

ワイドモードの存在を知らなかった黒金の騎士は盾を構えたまま接近しようとして来たため、歩行姿勢かつ盾でしっかりと衝撃波を受けてたことによりバランスを崩します。

その隙に衝撃波を体に浴びせると、黒金の騎士は姿勢を保つために後ろにさがるのでエネルギーが切れるまで撃つことにします。


「二十秒稼いで……!」

「わかりました」


と言ったものの予備バッテリーはチャージシールドと共に飛んで行ってしまったのでエネルギーが切れたらインパクトハンドガンは使えません。

私は黒金の騎士の間合いに入る前にインパクトハンドガンを遠くに投げ、拳を固めて殴りかかります。


「しっ!」


バキッ!


私の右拳は常人ではありえない速度で鎧の腹部に衝突しました。

命中すると黒金が木材のように破片が飛び、同時に私の拳にも強い衝撃が返って来ます。

私の職業ストライカーのスキル[ガットストライク]と身に着けているバイオスーツの身体強化が組み合わさった威力は普通の生物であればかなりの大打撃であっただろうと感じますが、騎士に対する効果は薄いようです。

本来内臓にダメージを通すのが目的のスキルであるため鎧の上からでは普通の人間より少し力強いパンチ程度なのでしょう。

スキル発動直後の隙を騎士が見逃してくれることはなく、盾で体の右脇を殴られてしまいました。

強力なシールドバッシュで容易く転倒した私目掛けて騎士が剣を突き立てようとしたその時。


「でやァァァ!」


カタリナさんが剣のガードで騎士の頭部をフルスイングしました。

その攻撃はそれなりに効いたようで、騎士はよろめいたのでその隙に立ち上がって再び接近して拳を構えます。


「よせ!私に任せるんだ!」


カタリナさんの警告は無視して左拳を握り、弓を引くように腕を引き腰を入れて殴りつけます。

すると鎧の黒金はさきほどよりも多くの破片を散らし、騎士は再び私を盾で攻撃してきましたが来る事が読めている攻撃なので距離をとって避けます。


「[ガットストライク]よりも[チャージブロー]の方が効果的なようですね」


騎士がなぜ私を剣ではなく盾で攻撃したのか。

見たところ黒金の騎士が持つ剣は普通の人間であれば片手で振るうのには適さない大きさのものです。

無論普通の人間ではないので片手でも十分扱えるのでしょうが、さきほどは私が拳で攻撃できるほどの至近距離であり、左手に盾を持っていることから剣をすぐに持ち替えることもできないため仕方なく盾で攻撃したのでしょう。


「二人とも離れて……!」


グレースさんの声に従い私もカタリナさんも騎士から離れると同時に黒く長い煙のような何かが騎士に近づきました。

騎士は盾を構えますが、煙はそれを無視して騎士の体を包み込みます。

煙はグレースさんの持つ杖と繋がっていて、グレースさんが杖を引き抜くような動作をすると同時に煙が騎士に吸い込まれるようにして消え、騎士から黒金の砕ける音が鳴り響きました。


『ぐあああああ!』


ずっと沈黙を貫いていた黒金の騎士が初めて声を発しました。

そして膝をついて倒れましたが、活動を停止させたという感じではなく、あくまで大ダメージを与えただけでしょう。


「まだ倒せてない……また二十秒かせ――」

『ぐっ……がァ!』

「なに!?」


黒金の騎士は剣の柄と刀身を持ち、ダンベルを持ち上げるようにして鎧の隙間から自身の首に刃をぶつけました。

いったい何をしているのかわかりませんでしたが、刃が首の所で止まると体の力が抜けたのか両腕はただ肩からぶらさがっているだけになり、一切動かなくなりました。


「死んだのか?」

「なにをしたのでしょうか?」

「おそらく……自決……」


グレースさんが騎士に近づき、カタリナさんがそれをとめて自分で近づきます。

カタリナさんが剣でつつきますが無反応。


「カタリナ……そのマント見覚えない……?」


グレースさんが指差すのは騎士が身に着けているマント。

布は黒金に変化しないのか、汚れてはいますが布本来の姿を保っています。


「これは王国騎士団のものか、それも上級の」

「王国の上級騎士レベルであれば死してなおも精神支配に耐性が残る……私の魔法が刺激になったか体力と共に支配が薄くなったか……」


よくわかりませんがとりあえず助かったということなのでしょうか。


「黒金化によって力を全て使えず上級騎士の強力な鎧や盾も黒金化で劣化していた……それでも私達より強かった……」

「そうか、私達を守ってくれたのだな」


話からしてあの騎士は知り合いでもなく同じ国の者でもなく、ましてや死亡しているにも関わらず彼女達はとても感傷的になっています。

死んでしまえばそれまで、死者を弔うのは残された者のためとされることが多いこの世界と違い、死後という概念が確認できる異世界人の感性なのでしょうか、それともあの二人だけなのでしょうか。


「終わったー?」

「あらウルリカさん、逃げていなかったのですか?」

「逃げても僕だけじゃあこの子守って逃げれるか不安だし、というかまだ助けてない人がいるんだし」


冬子さんを優先したい私からすれば遠巻きに様子を見ていてくれたのはありがたいですね。

私はインパクトハンドガンとチャージシールドを回収します。

インパクトハンドガンはバッテリーをすぐに入れ替えられるようにチャージシールドの近くに投げたのですが、必要なかったですね。


「一旦外へ戻ろう……」

「うむ、その子を安全な場所まで連れていかねば」


確かに私は少しの負傷をしていますし、グレースさんは魔力を消費、非戦闘員を抱えたまま追跡を続けるのはよくないでしょう。

ですがせっかくここまで進んだのであればもう少し探したいという感情が湧いてきます。

確かに私達は二人を助けるために来ましたが、あくまで私が優先するのは冬子さんなのですから。


「そうですね、では戻りましょうか」


しかしここで意見をしたとしても納得してもらえる気はしません。

私にとって冬子さんは友人ですが、彼女達からすればどちらも助けるべき人間の一人であり、同じように助けるべき人間の鹿野さんは生存が確認できています。


「あっあのっ、もう一人のかたは?」

「後で助けに戻る……今はあなたを優先する……」

「でっ、でも多分近くにいるんです」

「そう思う根拠はなんなのー?」

「最初は二人一緒にいたんです、私は一人で出口を探して歩いていたんですけどここで鎧の人に通せん坊されちゃって……でもここに来るまでの距離はそんなになかったです」

「具体的にどれくらいの距離なのでしょうか?」

「私の歩幅は60cmで700歩くらい歩いた程度です」


程度とは言いますが彼女は招かれた客だからこそ自由に動き回れたのであって、私達は完全に敵対しているため容易く通してくれるとは思えません。

私はそれでも捜索を続けたいですが、ウルリカさんはともかくグレースさんとカタリナさんを納得させるには弱い気がします。

しばし沈黙が続いた後、なぜかグレースさんが私を見つめました。


「カタリナはその子を連れて帰って……私達は捜索を続ける……いい……?」

「いいよー」

「そうか、グレースがそう言うのならそうしよう」


なんと予想外にも私の望むとおりになりました。


「ありがとうございます」

「早く助けるのが最善……それだけ……」

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