18 アーキテクト
「なるほど、この世界の別の国の名前だから苗字の前後が違うのだな」
「そそ、僕は名前だけフィンランドだからねー」
ああ最悪だ。
私の部屋に三人も入ってくるなんて。
しかもこの汚部屋を全く気にしていない上に全員土足。
「お茶が入りましたよ」
「ありがとー」
しかも普通に寛いでるし。
「あれ?うち紅茶なんてあったっけ……?」
「これは先ほどのスーパーマーケットから拝借したものです」
「建物に入ったところで僕の追跡スキルが切れちゃってね、それで商品を物色してたんだー」
二人ともお嬢様っぽい感じしてるのにシレっと窃盗ですか。
「丁度その時お子さんを連れた女性が駐車場の方に人が残ってると教えてくれたんです」
あの迷子捜してたババアか。
「それで私達を発見したということか……しかし一つ気になるのだが、ソレフマイネン殿は――」
「ウルリカでいいよー」
「そうか、ではウルリカ殿はかなり高位の偵察職なのか?髪の毛程度の痕跡から追跡するというのは帝国でも十数人しかできないらしいのだが」
確かに私達地球人がステータスを表示できるようになってからそれほど経っていないのに髪の毛くらいの物から本人を特定できて追跡可能なんてそう簡単にできていいことじゃないな。
「僕のランダムスキルツリー、トラッキングマスターのおかげだよー」
「私の武器、インパクトハンドガンもランダムスキルツリーのフューチャーソルジャーで獲得したものです」
そういえばランダムスキルツリーなんてのあったな。
よくわからないからとりあえず何もしてないけど。
「ランダムスキルツリー?なんだそれは?」
「え?知らないの……?」
「知らないぞ、ヤマムラ殿は知っているのか?」
「うん、よくわかんないけど存在は知ってるよ」
ステータスには表示されてるし。
「グレースさんは『私のいた世界では確認したことがない、地球人にしか存在しないのではないか』と言っていましたね」
「ら、ランダムスキルツリーって具体的にどういう……?」
「おそらく人によって違うものだと思うので具体的に言うのは難しいですが、私のフューチャーソルジャーの場合は――」
解説しながらマイヤーズは手を動かしてステータスで何かやっている。
少し経ってからマイヤーズはアイテムボックスから出したのであろう謎の布?を手に取った。
「スキルポイントを消費して装備を手に入れることができるんです」
「ほう、それはどんな装備だ?」
「前から気になっていたバイオスーツⅠというものを取得してみました、防具ということらしいので着てみますね」
そう言ってマイヤーズは服を脱ごうとしたらカタリナがそれを阻止した。
「どうされました?」
「人前で肌を晒すのはその……よくないぞ!」
どうもカタリナの住んでいた世界の住んでいた国では肌の露出に敏感な文化らしい。
本人だけじゃなくて他人のも気になるんだね。
「山村さん、お風呂場をお借りしても?」
「どうぞ……」
風呂場に入って行き、数分で着替えたマイヤーズが姿を見せた。
全身にピッチリと張り付いた蜂の巣みたいな六角形の網目模様がうっすらと見える黒いボディスーツ姿。
「すげー、ガンツだー」
「その言い方だとサナカンでは?」
体の形がめっちゃ分かりやすく見えてエロいけど恥ずかしくないのかなこの子。
しかしここまで体に張り付いてると着るの大変そう。
「どうやって着たのそれ……?」
「手足のパーツが分かれているので、まず胴体のパーツを着てから長い手袋と長い靴下を履いて胴体のパーツとくっ付けた感じです、胴体は首元から尾てい骨の辺りまで開きますね」
マイヤーズが首元にある小さなナットみたいなものを引っ張ってスーツを胸元まで開いた。
ファスナーみたいに開いてるけど繋ぎ目は見えないしどうやってくっ付いてるんだろ?
「お姉様下着つけてないのー?」
「これを着るのには邪魔でしたので」
ナイスバディを見せつけやがって嫌味かちくしょう。
これで女子高生とかまったくけしからん非常に眼福。
「ヤマムラ殿、目付きがいやらしいぞ」
「え?あっ、えーっと……上から服着た方が良いと思うよ……?」
「そうします、私もこのまま外出する勇気はありませんから」
室内なら人前でその格好できる勇気はあるのね。
「それで、山村さんのランダムスキルツリーはどんなのー?」
「ま、まだ……取得してないんだよね……」
「えー?さっさと取っちゃいなよー」
確かにスキルポイントをどんどん使って技を覚えれば生存に役立つかもしれない。
ランダムスキルツリーがまさしくランダムならいつ取得したって何にかなるかはわからない。
であればさっさと取得して役に立ちそうなスキルを取っていくのが良いんだろうけども。
「どうかしたー?未取得って書かれているところに触れるだけだよー?」
「いや……うん、今取得するから……」
既にステータスを強化していて知識もあるカタリナみたいな異世界人、元から運動ができたり運良く弱いモンスターを狩れた人。
そういう連中と比較しても遅れを取らずにいられる可能性があるのがランダムスキルツリー。
もしなんの役にも立たないゴミクズみたいなスキルツリーになったらどうしよう。
「ふぅ……よーし……!」
未取得と書かれた部分に触れてるとルーレットみたいなウィンドウが出た。
そして数秒経ってそれが止まる。
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ランダムスキルツリー[アーキテクト]を取得しました。
詳細:スキルポイントを消費することで拠点の作成に必要なものを作成、配置をすることができます。
レベルの上昇に伴いより高品質な物を作成可能になります。
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なにこれ良いスキルツリーなの?悪いスキルツリーなの?異世界人にはありふれたスキルツリーだったりしたら嫌だな。
こういうのは自分だけのアイデンティティーであって欲しい。
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アーキテクト スキル一覧
スキルポイント:5
・壁
[防御壁LV1:要求スキルポイント1]
・罠
[圧殺罠LV1:要求スキルポイント1]
・家
[木造小屋LV1:要求スキルポイント1]
・門
[防衛門LV1:要求スキルポイント1]
・その他
[見張り台LV1:要求スキルポイント1]
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「ランダムスキルツリー[アーキテクト]スキルポイントで拠点作りができるみたい……家とか壁とか罠とか」
「戦闘には使えなさそうだねー」
戦闘に使えないんじゃあスキルポイント稼ぎは職業の方でどうにかしないと駄目ってことか。
しかし今のところ要求スキルポイントが全部1だけどこれって少ないのかな。
「しかし便利そうですね、転移現象が全て終わった後に安全な拠点の確保が安易になるわけですから」
そう考えれば良いスキルツリーかもしれないけど、できればもっと戦いに役立つスキルツリーがよかった。
ゲームとかアニメみたいなかっこいい技や魔法を使いたい。
「まぁ微妙だけど……いいや……」
「うーむ……そろそろ妹の事を聞かせてもらってもいいか?」
さっきから静かだったカタリナが流れをぶった切って口を開いた。
ずっと妹の話をしたかったのを我慢してたのかな?ちょっと申し訳ない。
「ああ、そうですね、まずグレースさんはミスカトニック――」
そこからマイヤーズは淡々とカタリナの妹の話をした。
最初に出会ってから私達と出会うまでの経緯を非常に短くまとめた。
「ま、それで即戦力の確保のために探してたってわけだよー」
「そうか、神屍の棄児が……」
「えーっと……なにそのきじって?」
「私達の世界にあった旧き神の巨大な屍骸、そこに捨てられた人間の赤子が神の屍骸の力で変質したものだったと聞いた事がある」
「”だった”って?」
「私が生まれる何年も前に討伐された怪物なんだ」
過去に倒されたモンスターが復活したうえで転移して来てるってことか。
ヤバくね?異世界のモンスターが過去の分も含めて地球に来るのかよ。
「とにかく私の友人を救うのに協力していただければと」
「もちろん協力するぞ、妹が世話になっているのだからな」
「ありがとうございます」
「お姉さんは来てくれるー?」
「えっ?」
なぜ私を見るんだ。
「ヤマムラ殿も共に行かないか?」
「か、考えさせて……」




