17 合流
「そこにいると危ないですよ」
拳銃を持った女が話しかけてる相手が私だと分かりすぐに移動する。
倒れていたせいで這い蹲りながら必死に手足を動かす。
なんか情けない動きだけど死ぬよりはマシ。
「ターゲットを取りました、明かりをお願いします」
「おっけー」
壁際まで逃げてから状況を確認しようと振り返ると、バケツ頭は一番近くにいる私には一切の感心を示さずに銃を持った女に向かって歩いて行く。
弓を持った女が光る矢を投げ、矢筒から新たに矢を取り出すと矢は光だしてそれを投げ続ける。
そして辺り一面が明るくなった所で銃を持った女がバケツ頭に向かって歩き出した。
「貴公らはいったい何者なのだ?」
「グレースさんに頼まれてあなたを探しに来たんだよー」
カタリナが弓の女と話している間、銃の女は周囲のマネキンを撃ち壊していた。
撃っている銃は明らかに普通の火薬を用いた銃じゃないし、女の動きは非常に慣れた感じでマネキンを倒しているし明らかに普通じゃない。
あの二人は味方なのか?
「あらら?このマネキンさんたちはとっても貧弱ですね」
銃を使うほどの相手じゃない事に気づいたのか素手でマネキンを倒し、とうとうバケツ頭と対峙した。
あの異様な姿を前にしても全く動じていないのもまた異様。
「ヤマムラシマ殿!はやくこっちへ来るんだ!」
「あっうん」
バケツ頭と銃の女がどう戦うのか気になるけど今は逃げよう。
銃の女が倒したマネキンが復活する前にカタリナの所まで走る。
その間際に銃の女のバケツ頭の対決を見た。
バケツ頭が再び天井に刺さった舵輪を引き抜こうとした瞬間、女は銃を連射、恐らく銃の弾が切れたと同時に左手を握り締めた。
そしてあろうことか素手で殴りつけた。
「今のうちに逃げるぞ!」
カタリナに手を引かれて防火戸の方まで全力疾走。
「あの二人は!?」
「矢を回収してから逃げるそうだ!」
つまり時間稼ぎをしてくれるっつーことか。
カタリナに私が持たせた懐中電灯はただ足元を照らすだけ、どうやら道は完璧に覚えたらしい。
すぐに防火戸から漏れる外の日光が見え、外に飛び出た。
「はぁはぁ……」
こんな短距離でも少し走ったら息が上がる。
カタリナにはもう少し私の体力のなさを理解して欲しいもんだ。
「ヤマムラシマ殿、怪我はないか?」
アンタがいなけりゃあ怪我のリスクはなかったんだけどな。
「はぁはぁ……は、話しかけないで……」
「す、すまない……私がなにかしてしまったのか?」
呼吸が乱れている時はまともに喋れないのを察してくれよ。
しかし引き篭もりになる前から全力で走るなんて小学生の頃にしかしなかったけど、こんなに疲れるもんだったっけ。
今の私は確実に小学生の頃の私より体力ないな。
「すー……はぁ~」
二分くらいで呼吸が整ってきて、まだ息苦しさは残っているけど多少は楽になった。
両手を上げてYの字になりながら日の光を浴びる。
「あー……太陽最高……」
この肌寒い時期に汗をかいたせいで余計寒くなったけど、日光が暖かい。
懐中電灯に頼らなくてもいい明るい場所というのがこれほどありがたいとは。
落ち着いてきたので改めて辺りを見てみる。
ドーナツ店が普通に営業中、私達は二階の防火戸から出たはずなのに正面の出入り口にいる。
正面の扉はガラス張りで中が丸見えになっているはずだけど、白い霧で中が見えない。
内側にいた時は外側に白い霧がかかっていたのに、外側からだと内側に白い霧がかかってる。
「ところでさっき二人は知り合い?」
「いや、妹の知り合いらしいがよくわからない」
制服らしきものを着ていたこと、謎の銃を持っていたこと、動きが明らかに戦闘訓練を受けていること、バケツ頭を相手に怯まず向かっていくこと。
全てを含めて謎すぎる。
「しかしあの妙な武器はいったいなんなんだ?ストライカーのスキルも使っていたようだが――」
「やあ!」
「ひえっ!?」
弓を持った女が出入り口から飛び出して来たせいでまた変な声が出た。
「もう一人はどうした?」
「すぐ来るよー、あっほらきたきた」
もう一人の子が銃を撃ちながらゆっくり後退して外に出ると扉を閉めた。
閉められた扉は内側からドンドン叩かれてるけど出てきたりしないよね?
「念のため離れましょうか」
「そだねー」
「え?あっはい」
少し離れて周囲に何の脅威もないことを確認してから改めて話しをする。
「初めまして、私はマイヤーズ千影と申します」
「ウルリカ・ソレフマイネン、よろしくー」
明るいところでよく見てみると二人とも結構若いというか完全に子供、そして髪とか目とか肌が外国の人みたい。
マイヤーズって名前もイギリスかアメリカっぽいし、ソレフマイネンってのはフィンランドっぽい。
しっかしこのマイヤーズって子はどこかで見た気がする。
「私は帝国騎士団竜剣士隊の見習い四年生、ガストンの子カタリナ、先ほどは助太刀いただき感謝する、助かったよありがとう」
「いえ、時間を稼いだだけですから大したことではありません」
「あのバケツ被った奴は倒せなかったしねー」
あのSTEMの中にいる処刑隊の静岡県民みたいなの相手に時間を稼ごうとしただけでも大したことじゃ?怖くなかったのかな。
「改めて確認しますが、あなたはグレースさんの姉ですね?」
「ああ、しかしどうやって私を捜したんだ?」
「これを預かってねー」
ソレフマイネンが取り出したのはカタリナが持ってた子汚い袋と同じもの。
「グレースの認識袋か」
「これに入ってる髪の毛を手掛かりに僕のスキルで追跡したのさ、ついでにこの認識袋を見せて知り合いだと証明してくれってね」
「うーむ……それでも私が信じなかった場合は?」
「『七歳の頃にやらかした事をバラされたくなかったら信じて』だそうです」
「はっはっは!グレースらしいな!」
「ところでさー、この人はだれなのかな?」
私抜きで話が進行していたのに突然話題にされた。
自己紹介は私が嫌いなものベスト10に入っているんだけどしないと駄目な状況か。
「や、山村志摩です……」
「私の友人だ」
いつ私とカタリナは友人になったんだ。
そんなつもりはないんですけど。
「よろしくお願いします、山村さん」
「あっうん……よろしく……」
「それでは――」
「待て!」
マイヤーズの言葉を遮ってカタリナが声をあげながら私の方を見た。
「な、なに?」
「ヤマムラサン?貴公はヤマムラシマが呼び名じゃないのか?」
「山村が苗字で志摩が名前だけど……」
「”さん”は敬称だねー」
「なんてことだ……ここは家名と名前を使う文化だったのか……ずっとおかしな呼び方をしてしまっていたのだな、すまない」
「いいよ別に」
今更そんなことに気づかれて呼び方変えられてもね。
「それでは一旦山村殿の自宅へ移動してから話をしよう、マイヤーズチ……貴公はどこからが名前なのだ?」
「いいから早く帰ろうよ……」




