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11 追跡

「神屍の棄児……!」


グレースさんはこの長身の怪物の事を知っているようですが、今は聞いている暇がありません。


「このっ!放して!」


両脇に抱えている冬子さんともう一人の子が暴れますが棄児という怪物は一切気にせずこちらを警戒しています。

インパクトハンドガンのセーフティを解除し、誤射しないために銃口を対象に押し付けて発砲しようと接近します。


「ギギギギャャャャ!」


しかし私が足を一歩進めた直後に棄児は窓を突き破って出て行ってしまいました。

その後を追いかけますがかなり足が速く、人間二人を抱えて私と同じくらいの速度で走っています。

追いかけて行くと森の方へ向かっているのが分かります。

ミスカトニック女学園の敷地内にはそれなりに自然が残されていますが、いつもと森の様子が何か違う気がします。


「千影様!あっち!」


棄児に抱えられている冬子さんは私から見て左側を指しています。

そちらの方を見るとあの棄児という怪物と良く似た怪物が木の陰から飛び出して来ました。

体に黒い金属のようなものがあるのは同じですが、棄児と違って全身というわけではなく部分的に覆われており、身長も人間に近いです。

インパクトハンドガンは右手に持っているので、左腕を自分の顎を隠すよう上げてインパクトハンドガンを腹部の辺りで構えて発砲します。


「ググググャャャャ!」


人間であれば心臓がある位置に命中しましたがチュパカブラと違い貫通しません。

しかし動きは鈍くなったので頭を狙って発砲、倒したのか確認する暇はないので撃つだけ撃って棄児を追いかけます。

足場の悪い森に入ると歩きなれていないせいか棄児と離れて行くのが感じられます。


「ググャャャッ!」

「ガガガャャャャ!」


二体同時に左右から現れました。

私は左側の一体の首に手をかけて飛びつき、そのまま自分の上半身を後ろに動かして体重と勢いを合わせて共に倒れます。

そしてすぐに右足で相手の左腕を拘束、左手で右肩を押さえ、その状態でもう一体に対して発砲。


「ガギャッ!」


腹部に命中しましたがやはり貫通はせず、しかし動きは止まったのでその隙に拘束している方の頭に銃口を押し付けて発砲。

足で拘束している左腕から力が抜けるのが伝わり、頭部に命中させれば致命傷になるのが分かりました。

残った一体の頭にも撃ち込んですぐに棄児を追いかけますが、既に視界からは消えています。


「誰かぁ!助けて!」


しかし棄児に抱えられているもう一人の子の声から方向はわかりました。

そちらの方へ走りますが再び視界にとらえることができません。


「おーい!」

「こっちです!おーい!」


私が声をかけると返事が返って来ます。

とにかく声を頼りに追跡して行くと突然声が聞えなくなりました。

とりあえず最後に声が聞えた方向に進むと、そこには黒い金属の山のようなものがありました。

学園の森にこんなものがあるとは聞いた事がないので、おそらく転移して来た何かなのでしょう。

その金属の山には大きく縦に割れた洞窟があり、そこから僅かに冬子さんたちの声が聞えました。


「ガガガガガガャャャ!」


追いかけて洞窟に入ろうとしたら洞窟の中からまた怪物が二体出てきました。

さらに後方からも一体迫ってきています。

動く目標の頭部に命中させる自信はなく、三体を同時に相手にしたら至近距離で撃つのも難しいのでとにかく数を減らすことに専念しましょう。

洞窟から出てきた二体は縦に並んでいるのでインパクトハンドガンをワイドモードに切り替えて発砲すると見事にドミノ倒しになりました。

その隙にセレクターを戻し、後方から来る一体に接近して体の真ん中を狙って発砲して動きが止まった所で頭に銃口を突きつけて発砲して倒しました。


「ガガャッ!」


聞える奇声から倒れていた二体がこちらに接近するのが分かりすぐに銃を向けます。

一度攻撃を受けたというのに縦並びなのは変わりません。

チュパカブラであれば何か対策をして来たのでしょうか。

ワイドモードで転ばせてから手早く頭を撃ち抜き、洞窟へ入ろうとした時でした。


「だから早いってばー!」


ウルリカさんが追いついて来ました。


「冬子さんたちはおそらく洞窟の中です、一緒に来ていただけますか?」

「ちょっと話聞いてよ!」


そんな暇があるとは思えません。

来ていただけないのであれば私一人で行きましょう。


「だから待って、連れ去られた人達に危害は加えられないらしいよ?」

「グレースさんがそう言っていたのですか?」


あれらの情報を知っているのはあの人だけでしょう。

この場にいないのは他のモンスターが転移していた時に備えて寮に残ったからでしょうか。


「うん、だから一旦戻ろ?どうやって戻るか考えずにウサギを追いかけてもいいことないって」

「ふぅ……私は冷静じゃなかったようですね、わかりました、一旦戻りましょう」


すぐにでも洞窟に飛び込みたいところですが、明かりを持たずに中がどうなっているのかわからない洞窟に入っても無駄死にする可能性の方が高いでしょう。

ウルリカさんと共に歩き、ふと疑問に思った事を聞いてみます。


「ウルリカさんはなぜ追いかけて来れたのですか?私でもあの洞窟を発見するのがやっとでしたが」

「その説明はグレースちゃんにもしないといけないから後でねー」

「そうですか、わかりました」


寮に戻るとロビーに慌てた様子の先生方がおり、グレースさんはかなり困った様子です。


「あっ!マイヤーズさん!あの子たちは――」

「黙って……」


グレースさんが杖で床を鳴らして騒ぐ方々を黙らせました。


「時間は有効に使わなければならない……連れ去られた二人を助けるためにも静かにして……」


私とウルリカさんが椅子に座るとグレースさんはすぐに話を始めました。


「二人を連れ去った神屍の棄児は連れ去った後は監禁するだけ……黒金屍骸も住みかに侵入しない限りは誘拐しようとするだけで攻撃はされない……」


確かに追いかけている途中で倒した怪物、黒金屍骸とかいうものは私を傷つけようとしてるようには感じませんでした。

インパクトハンドガンで貫けない強度であるにもかかわらず、倒す苦労はチュパカブラと変らないですし。


「危惧すべきは餓死……」

「水分の補給が不可能な環境であるなら三日以上はかなり危険ですね」

「三日以内では要救助者を発見することすら難しい……だけどあなたがいる……」


そう言いながらグレースさんが視線を向けたのはウルリカさんでした。


「僕がどうやってマイヤーズお姉様を追いかけたのか、それは僕のランダムスキルツリー[トラッキングマスター]のおかげなんだー」

「つまり?」

追跡トラッキングできるんだよ、痕跡があればねー」


ウルリカさんがそう言いながらポケットからハンカチを取り出しました。

それには血のついたガラス片が包まれていました。

棄児が窓ガラスを突き破った時のものでしょう。


「全身金属の棄児がガラスで怪我をするとは思えないから誘拐された二人のどちらかだろうねー」

「これで追跡できるというわけですか」

「可能な限り戦力を強化……二人を助けに行く……」

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