47話 地球side 普段より綺麗だなって
「さてと、料理頑張らなくっちゃ」
優汰の家の台所で、エプロンを着ながら気合を入れている。
ちなみに莉子の家には調理器具の類が殆どない。
いつも優汰の家で食べているから、わざわざ2セット揃える必要はないのだろう。
「なあ、いっそ優汰の家に住んだらいいんじゃないか」
「私もそうしたいんだけどねー」
優汰曰く間違いを起こしたくないようだ。
要するにまあ、ムラムラっとなって衝動的に、避妊もせずに成してしまって。
みたいなことを彼は恐れているのだろう。
どこかの牙猫族に見習わせたい精神だ、ルリララは思う。
「優汰疲れてるだろうし、先にお風呂入って貰った方がいいかな」
「どっちでもいいんじゃね」
「ねーねぇ」
女児用エプロンを着たミミナナが、ルリララの裾を引っ張っている。
「どした、トイレか?」
「ううん、あのおんなのひとってヘンだったよね」
「忘れろ」
即返事。
ルリララは思い出してしまった。
ひとしきり莉子と会話をしていた百合花は去り際、ルリララのほうをじっと見つめてこう言った。
「ライバルだったら●●しなくちゃいけない所だった」
そう言って彼女は立ち去ったのだが。
「(思い出しちまったじゃねーか……)」
ぞわりと、カマイタチで肌を撫でられたような感触。
背中から冷や汗が流れた。
悪魔将と対峙しても、ここまで死の恐怖を感じることは無かった。
つくづく他人でよかった。
それ以前に優汰に同情を禁じ得なかった。
あんな色々な意味でヤバい女が恋敵とか。
「(なんつーか、生きれ優汰)」
あれだったら魔物を斃すほうが100倍楽だろう。
「ルリララおねえちゃん?」
「っと悪い。晩飯作るんだったよな」
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「魚焼くんだよな。火はどうするんだ?」
「火は使わないよ。IHだし」
グリルを取り出し、下処理をした魚を網上に置いた。受け皿を重曹入りの水で浸しておくのも忘れない。
ガラス窓越しの内部で、オレンジ色に発光し始める。
「便利なモンだなぁ」
ルリララは思わず呟いた。
驚きの生活水準である。
ここに至るまでに、一体どれだけの産業革命がなされたのだろう。
再現できるだろうか。
自分達の世界が、ここまで発展するのにあと何百年掛かるだろうか、彼女には想像つかなかった。
「?」
「っと悪い。考え事してた」
調理は進んでいく。
ミミナナも手伝いたがっているようだ。
ただし、いくら火を使わないとはいえ鍋は熱いし、火傷の危険がある。
残念がったが、後ろからニコニコした様子で眺めていた。
あらかた料理が完成したところで、玄関のチャイムが鳴った。
「ただいま」
「おかえり優汰!」
帰ってきた優汰を全力の抱きしめ出迎える莉子。
よくもまあ、人前で恥ずかしげもなくイチャイチャものだと、いつもながらルリララは感心してしまう。
「ん?」
優汰の後ろに、背の高い誰かが立っている。
「……っておい!」
よく見知った男2人だった。
ルリララの顔が微妙に険しくなる。
「てへ。来ちゃった」
「なんでテメーらまでいるんだ?」
ヴァイスとエンレゥ。高身長の男が2人並ぶと壮観、というより物騒だ。
「なんでこいつら連れてきたんだ優汰」
「連れてきたんじゃなくて表で会ったんだけど……」
「ルリたんばっかりずるいっ! 僕達だってパーティ参加したいなー的な感じ?」
説明を聞いて、ルリララは頭を抱えた。
「エンレゥおにいちゃん?」
「な、なんだ」
「ちょっとあかいよ?」
気のせいだろ、とエンレゥが誤魔化す。
「どした、風邪でも引いたのか?」
「ちげーよ、その……」
「……?」
「何かお前、普段より綺麗だなって思っただけだ」
エンレゥは視線を逸らす。
もしかしてこの反応は。
莉子に勧められ、ちょっとした化粧をしていた。
ついさっきまで忘れていたが。
「ふーん……」
「な、なんだよ」
ルリララはエンレゥの顔を見上げる。
「(こいつもこんな反応するんだな)」
ただの戦闘バカだと思っていたが。中々どうして。
「勇者にへ、変なコトこかされてねえだろうな!」
「あのな」
「6人分かー。そんなに量ないんだけど」
ぼやく莉子。すかさず後ろからヴァイスが包みを取り出す。
「大丈夫! 向こうから色々持ってきたから」
包みを開けると向こうの料理が沢山出てきた。
全部ヴァイスの手作りらしい。他にもフルーツや果汁水が並ぶ。
「ならOK、上がってよ! ちなみに土足厳禁だからね」
「土足厳禁だからなーエンレゥ」
「わーってるってルリララ!」




