46話 地球side 帰り道
夕暮れの遊歩道。3人の少女が手を繋いで歩いている。
「あーゆーのイヤ! あんなヒトだいきらい!」
「まぁまぁ」
ナンパをしてきた男共を振り払ったのは数分前だが、ミミナナはまだ怒りが収まっていない。
物凄く怒っているようだ。頬を膨らませて憤慨していて、それを莉子が宥めている。
「つーか莉子こそ平気か?」
「平気だよ。ミミナナちゃんが護ってくれたし」
ありがとうね、とミミナナに礼を言った。
「ま、莉子がOKなら別にいいけどな。買い物のときは、いつも絡まれてるのか」
「普段は優汰と一緒だから、そんなに危険じゃないんだけどね」
魅力的な肢体を備える莉子は、常日頃から男性などに劣情を向けられている。
ただ買い物にしろ何にしろ、優汰と行動しているので普段は寄ってこなし、大抵は優汰が撃退している。
今日は連れが少女2人だったので狙われたのだろう。
「にしてもミミナナちゃん、強いんだね」
「<土魔>数体くらいなら、普通に葬っちまうぜ。こんなナリでも牙猫族なんだ」
えっへんと、彼女は小さな胸を張る。
あの。
不意に女性の声が響く。
「? なんか用か?」
ルリララは振り向いて話し掛けた。
スーパーに入るずっと前から彼女は着けてきていた。
勿論彼女は気付いていたが、敵意は無いようなので泳がせていた。
まさか話し掛けてくるとは思っていなかったようだが。
「結木乃さん、……久しぶりです」
「貴女は?」
「この間、合同練習でご一緒させていただいた、八見 百合花です」
背が高めな莉子より、頭一つ分は大きい。おそらく170cmは超えているだろう。
「ああこの間のバスケの」
「覚えて、いてくれたんですね。嬉しい……」
嘘だな。
ルリララは察した。
彼女が誰なのかは知らないが、莉子の性格からして覚えてたのは本当にたまたまだろう。
なにせ莉子は、興味のない人の顔を覚えるのが本当に苦手らしい。
優先順位トップは優汰、2位は同率で自分達とヴァイスだろうか。
おそらく背の高い彼女はランク外に入っている筈だ。というか今まさに、現在進行形で興味を持っていないのが見て取れる。
「さっきスーパーで買い物してましたよね?」
「うん」
「結木乃さんって料理上手なんですか?」
「うん」
「私も料理は大好きなんです。お弁当作りとか趣味なんです」
「へぇ~」
一応、百合花さんは莉子と会話をしているのだが。
莉子は一切興味を持っていないようで、適当な相槌を打っているだけだ。
壁に向かってブツブツと独りで喋っている風にしか見えない。
「(……なんか不気味だな、この女)」
百合花をじっと観察しながら、心の中で呟く。
莉子をやけに気にかけているが、そのじつ彼女自身は周りが全く見えていない様子。
こういう奴って厄介なんだよな。そんな様子で眺めていると。
目が合うやいなや、じっと見つめ返してきた。
「な、なんだ」
「貴女も。莉子さんを好いているのですか」
「ハァ? あんた突然何言ってるんだ」
「やはり貴女も莉子さんのことが」
百合花が一方的に喋り続けるせいで、会話が成立しない。ルリララの発言を理解しているかどうかすら疑わしい。
「ルリララおねえちゃん、このヒトってだれ?」
「アタシも知らない、初対面だ」
ルリララの陰に隠れて、後ろから眺めていたミミナナがこっそり顔を出した。
「まさか、この子は、莉子さんと貴女の子供!」
「何でだよ!?」
ルリララは激昂する。ミミナナは呆れてしまったのか目を逸らしてしまった。
しょうがなしに莉子は、その場しのぎの嘘をつく。
「貴女は、莉子さんの友達の瑠璃さん」
「そうだ」
「そしてこの子は貴女の妹さんの巳菜さん」
「うん」
ミミナナは目を合わせようとしない。危険人物と認識したのだろう。
この女はヤバい。
先程から気になっていたが百合花の視線は、莉子の胸と股間に釘付けだ。
ルリララは同性愛になど興味無いが、そういう性癖を持つ女性がいることも理解している。
「ゴメンなさいね、なんか足止めしちゃって」
さっさと家に帰りたいのだろう、話をまとめる為に莉子が謝る。百合花は何故かはげしく狼狽し始めた。
「勝手に勘違いしちゃった私が悪いんです。ゴメンなさい嫌いにならないでください」
「(さっきの男共のほうが、まだマシじゃね?)」
眺めているルリララは心の中でそっと呟いた。




