45話 地球side 「ダメっ!」
初めてのスーパー、ミミナナは不安よりも好奇心のほうが勝っているようだ。
「楽隊が、いるのです!」
店内BGMがとても気に入っている様子だ。くるくるとリズムに合わせて踊っている
「はしゃぎすぎるなよ」
「そーゆールリララだって」
はしゃいでるじゃん、と莉子は笑う。
試食コーナーの、鉄板で焼かれているウインナーに目が泳いでしまっているから。
「アルバイトで頑張ってる優汰に、美味しいものを作ってあげなくちゃ!」
莉子は腕まくりをしながら気合を入れている。
優汰のアルバイトが土木工事だと聞いている。肉体労働だしきっとお腹が空いてるだろうと、いつもより多めに作る予定のようだ。
「アタシにも手伝えることはあるか?」
「ルリララはゆっくりしてていいよ」
「気にすんな」
元々ルリララは、料理が嫌いな方ではない。
むしろ数少ない趣味の一つだ。こっちの色々な器具を使って、向こうじゃ作れないような料理をしてみたいとも考えている。
「どんな料理を作る気なんだ?」
「今日はねー」
主食にロールキャベツ。それから簡単な煮物などを作る予定のようだ。
皆の分も作るからね! と意気込んでいる。ミミナナは喜んでいた。
「そういや、優汰が帰って来るのって何時くらいだっけ」
「6時上がりっていってたから。あと2時間くらいかな?」
急がないと、と莉子は言う。しかし口元には笑みが浮かぶ。恋人のことを思い浮かべるのが楽しいのだろう。
キャベツとひき肉、それ以外にいくらかの野菜。
あとルリララの頼みでウインナー1袋を買い物カゴに詰め精算、スーパーを後にした。
自動ドアをくぐると、外はもう日が暮れかけていた。
「ゴメンね、荷物持ってもらっちゃって」
「気にするなって」
それなりの大荷物だが、ルリララにとってこの程度なんてことない。小指の先で持てるほどだ。
「ばんごはん、たのしみです!」
「そうそう、もうすぐ晩御飯だからキャンディは一個だけな」
「もういっこ、ダメ?」
「ルリララってば、お姉さんみたい」
「まあ妹みたいなモンだけどな」
そんな風に会話を楽しみながら歩いていると。
「おっ、可愛い女の子」
複数の男が寄ってきた。
ルリララが僅かに目を細める。
あの太ったビチクソ野郎に、雰囲気が何となく似ていたからか。
「ねーねー、ヒマだよね?」
人数で上回っているからか、男共は高圧的だ。
ルリララは自分の姿が、一見するとひ弱そうに映るのを知っている。
男共が自分達を舐めているのが容易に想像ついた。
チャラチャラした声が耳に障る。
彼らの視線は、莉子の胸に注がれていた。
「俺達今から遊びに行くんだけど、一緒にどう?」
「すみません、通して下さい」
「いいじゃん」
男の1人が莉子の腕を掴もうとする。
だがミミナナが、男の手を制した。
「ん、キミ妹さん? お姉ちゃんはこれから俺達とイイことするんだよ」
「そうそう。だからお姉ちゃんの帰りが遅くなるって、パパやママに伝えてあげなよ」
掴んだ右手に、ぐっと力を込める。
一瞬で男の手首が砕け散った。
「イダダダダ!?」
「莉子おねえちゃんをいじめるのは」
既に泡を吹いて失神寸前の男の腕をひねり上げて持ち上げる。
「ダメっ!」
男を背負い投げ、というより片手で吹っ飛ばした。
勢いよくアスファルトの地面に叩きつける。おそらく全身の骨が粉々に砕けているだろう。
たとえ幼子とはいえ、ワーキャットが本気を出せば、この位は当然だ。
「すみません、急いでるので」
そう言って莉子は、2人を連れてそそくさと立ち去った。
後に残された男達は、ピクリとも動かない仲間を見つめ茫然としていた。




