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42話 地球side バナナと白い液体

『我ら牙猫族は強くなければならない。』

 そう豪語する私達は、ヒトから見ると傲慢に映るだろう。


『我ら牙猫族は血に飢えた獣でなければならない』

 そう叫ぶ私達を、ヒトは野蛮人と蔑むだろう。


 たとえ傲慢でも野蛮でも、私達は戦い続ける。魔物と、獲物と、自分たち自身と。

 強さは牙猫族の誇りだから。

 だから。


 だから私は、強くなりたい。






 昼食はサンドイッチとミルクココアだった。


「簡単なのでゴメンねー」

「突然来たアタシらが悪いんだから」

「これ、おいしいよ」

「ありがと!」


 ミミナナに美味しいと褒めてもらえて、莉子は思わず抱きついてしまった。心の距離は縮まって、さっきより拒否は無い。


「優汰は優しいのがいいんだよね」

「名前通りだな」


 食事が終わると、やがて恋愛話に発展した。

 自然な流れでそうシフトしたのは3人全員、意中の相手はいるからだろう。


「ルリララって、やっぱりあのエンレゥって人が好きなの?」


 問いながらも莉子は微妙な表情を浮かべる。


「そんな顔しながら聞くなよ」

「……だってー」


 莉子とエンレゥは一応、挨拶は済ませている。

 だが彼はああいう高圧的な性格だ。

 あまり良い印象は持っていないだろうなと彼女は推測する。


「まあ孕まされそうにはなったけどな」

「その話、詳しく聞かせて!」


 莉子は急に身を乗り出す。

 なんで食いついてきたのか解からないまま、ルリララは事の顛末を話していく。

 喋っている途中で頬が赤くなっていることに気付いていない様子だ。


「まあ大体こんな感じだ。で、なんで興味津津なんだ?」

「応用すれば、優汰も私を孕」

「ミミナナはどうだ」


 強引に別のほうへ持っていった。


「?」

「ククツラとは、上手くやってるか」


 牙猫族の里に住む、ミミナナと同年代の男の子である。

 彼について振られて、彼女もまた莉子と同じように微妙な表情になった。


「ククツラ君って、こどもっぽい」


 口を尖らせるミミナナ曰く。

 髪の毛を引っ張られたり、口喧嘩になるとすぐチビとか貧乳だとか罵ってくるのがイヤらしい。

 どうやらククツラ君は、女の子に対して意地悪したくなる年頃なのだろう。


 ぐぅー。

 ミミナナのお腹が鳴った。育ち盛りの彼女にとって、サンドイッチは軽すぎたかもしれない。

 いそいそと、カバンから干し肉を取り出そうとする。


「待ってミミナナちゃん」


 莉子が制した。


「折角だから、こっちの美味しいのを教えてあげる」


 用意するから、一緒においで。そう言って莉子は階段を下りていく。

 リビングに降りて戸棚を開け、中に入っていたお菓子などテーブルに並べていく。


「これはなに?」


 たどたどしい口調でミミナナは質問する。

 彼女の目に留まったのは、バスケットの中に入っている黄色い果物。


「バナナっていう果物だよ」

「ばなな?」


 ルリララも覗きこむ。彼女も初めて見る果物だ。

 ニの腕くらいの長さ。

 点々と黒ずんでいて、1本1本がやや太く、弓なりに曲がっている。


「バナナは健康にいいんだよ」


 房から1本、細い所をちぎって渡す。

 受け取ったミミナナだが、食べ方が解からず先っぽをチロチロと舐める。


 味がしない。

 齧ってみる。

 皮の内部で、ぐちゃっと中身が崩れた。いやな感触が歯の内側に広がる。


「むにってしててやわらかいけど……」


 ミミナナは困った風な表情で見上げた。


「ゴメン、ちゃんと説明しなきゃだね」


 莉子は突起物をつまむ。


「こうやって皮を剥くの」


 下に引っ張ると中から、白い実が露出した。


「じゃあ食べてみて」


 莉子に勧められるまま。

 2人のネコミミ少女は、こわごわと先端を齧り口の中でもぐもぐと咀嚼した。


「おいしい、よ」

「なんか濃厚な味だな。柔らかくてとろける感じ」


 ネバっとした甘みが、咥内いっぱいに広がっていく。

 今まで食べたことのない、とても独特な、食感と味だった。


「どうルリララ。癖になっちゃうでしょ」

「美味いよ。でもなんでこんな、一杯置いてるんだ?」

「優汰のために、これで練習してるから」


 どんな練習なのかを察したルリララは、追及を止めた。

 男性のアレに、形が似ていなくもない。


「ねぇ」

「どしたミミナナ」

「これ、にがい」


 バナナの細い筋の事を言っているよう

 舌や歯茎に絡みついて、ベトッとするのが気持ち悪いようだ。


「バナナの筋には抗酸化成分が含まれてて、健康にいいんだよ」

「へえ」


 莉子はよく、健康や美容にも気を使うような発言をしている。

 生活水準が高いと、そういうのにも気を配れるんだなとルリララは感心した。


「バナナはね、ミルクと一緒に食べると美味しいんだよ」


 そう言うと莉子は、冷蔵庫から特濃牛乳1Lと描かれた、紙の筒を取り出した。


「これも、こいです」

「食べながら喋るな、こぼすだろ」


 コップに注がれたそれが美味しいらしい。

 しかし急いで飲んだからか、口元から少し垂れている。


 まあ、がっつくのも無理はないとルリララは思う。それほどに美味しい。

 これほどの珍味は、自分達の世界じゃ味わえない。

 バナナと牛乳、濃厚で栄養価も高そうなのが口の中に広がっていく。

 かなりの贅沢だと彼女は感じた。


「クッキーとか、色々あるから好きなだけ食べてね」


 莉子は戸棚から、他にも色々なお菓子を出していった。

 他愛のないお喋りをしながら、昼過ぎの穏やかな時間が流れていく。


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