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29話 異世界side 美少女は呟く

 張りのある豊かなバスト、コルセットが必要無いほどに細いウエスト、余裕あるスカートでも隠しきれない安産型のヒップ。

 輝くプラチナローズの髪、深く紅い双眸、官能の口元から漏れる魅惑の吐息、すらりと長い手足、内に秘めたる確かな身体能力。


 一体どれだけの言葉を並べれば、彼女を表すことが出来るだろうか。

 能天気な立ち振る舞いからは品性を感じられない。

しかし否定しようのない、歴然とした『美少女』が佇んでいた。


「なんか暇だな」


 美少女は呟く。夕日は沈み、辺りはすっかり暗くなった。

 果汁水やケーキ類を食べるのに飽きてしまったようだ。


 ランプに明かりを点け、バルコニーからそっと外を眺める。

 眼下に広がるのは、日本のそれよりも遥かに低い科学水準。こういった風景は中世ヨーロッパに例えるのが普通だろうか。

 建築技術を見る限り、それにすら劣っていると美少女は思った。


 興味無いながら、美少女はこの異世界について考察を始める。


 文明というのは年月を追うごとに進歩していくもの。

 例えばサルが人間へ、縄文時代から弥生時代へと移っていくにつれ、道具の使い方や衣食住のあれやこれやとか。

 そういったのをより高性能に、より便利に改良していき、地球人類は進化していった。


 翻って、ここはどう?


 ルリララ曰く、この世界のヒトの文明は数百年ほど停滞している。

 驚くことに数百年もの間、この世界のヒトはただの一つも発明をしていないという。


 連れ立ってるパーティの一人は、かつてエリシア教=全人類皆奴隷などと評した。

 勇者に頼り切るという、くだらぬ宗教のせいで、ヒトは進化を止めてしまったと。


 けれども、本当に理由はそれだけ?

 たかが宗教一つで、数百年も文明が停滞するなどありえない。


 もっとろくでもない、救いようのない真実が隠されてるんじゃないかと勘繰りたくなる。


 そもそも魔物を統率しているのは誰だ?

 悪魔将か? いや、勘がそうでないと告げている。


 そもそも将軍というのは、指揮官に与えられる称号だ。

 となると悪魔将を牛耳っているトップがいるに違いない。


 魔物のトップが、この名無し世界そのものを支配している……?


「だーるーいー」


 美少女は考察全てを放棄した。

 核心に迫る内容がいくつかあったものの、美少女にとっては恋人以外、その他大勢は至極どうでもいいようだった。


 恋人が旅立っていった鉱山がある方向に、じっと目を凝らす。


「優汰は、ここから見えないかな」


 いつもなら美少女は、恋人である優汰と地球に帰っている時刻。2人きりで夕食を食べている頃だ。


 ルリララに貰った薬草瓶を手中で弄びながら、彼氏の名を口ずさむ。


「優汰、大丈夫かな」


 遠征の前、ルリララが語っていた。

 悪魔将は、確認されているのは合計3体。

 <黒騎士>の他には、魔道を極めし<地獄姫 レズニーニャ>。空飛ぶ怪鳥<邪乞鳥 ムーヒーホー>がいるらしい。

 ルリララも名前以外はよく知らないそうだが。


「まーいっか」


 美少女はバルコニーを出る。


「どうせヒマだし、お城の中とか探検してこよーっと」


 それから彼女は数時間かけ、エリシア城の使用人などに多大な迷惑を掛けたのだった。


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