第4話 憑依を待ち侘びて
『うへ!? ダメですって、それに僕は物理的なことは』
「いやそうじゃないんだ。こう、フレディーに手をかざすと透けるだろう? これを全身でやるのさ」
ところのつまり、私の全身に重なるようにしてフレディーが横になれば……
『大丈夫ですかエリンさん、息使いがおかしくなってますよ?』
「はあ、はあ、あ、すまない。これはただ興奮してしまっただけだ。美青年と……一つに……ふへへへへ」
短期的な発情期に入った私は変態的笑みを浮かべていた。いや、発情はもはや日常だったね、すまないすまない。
私は乙女失格だな。こんな私を妻として選んでしまったフレディーに申し訳ない気持ちになる。まあ性欲の方が気持ち強いけど。
『今日だけですよ?』
「毎日してくれ、朝昼晩三回だ」
フレディーが本日二度目のやれやれ表情を見せる。
そんなフレディーは身体を少しずつねじ込ませ、私の身体と重なっていく……!
あ、これ想像よりやば、なんかこう……
寒気がすんごいする!!!
『全身重なりましたよ、大丈夫ですか?』
フレディーの声が頭からめちゃ響く!
脳内に直接爽やかボイスが侵入して来て刺激強すぎるって!
でもそれより寒気が、さぶぶぶ……
ちょっくら白湯でも飲もうかな。
私がベットから降りようとするも、何故か身体が自由に動かせない。まるで身体が石のようだ。
……喋りも出来ないぞこれ?
何が起きているんだ?
脳内から爽やかボイスの直接攻撃。
『もしかしたら僕、エリンさんに憑依したのかもしれません』
え?
憑依ってそりゃあ……
フレディーと本当に一つになったってことか!?
あ、人生で一番気持ちが高ぶって来た。
それなのに身体を動かせないってどんなプレイだ!?
『僕とりあえず動かしてみますね』
と脳内に響かせるフレディーは、私の身体を起き上がらせる。
自分の身体が勝手に動いている!
え、これってフレディーが私の身体を好きなように触れるってことだよな?
そう考えただけで高ぶり人生最高潮の記録が更新してしまう……!
フレディーよ、男の子が乙女の身体に乗り移ったらまずすることがあるだろう?
胸を揉むお約束が!!!
『慣れてないので難しいですねこれ。ベットから降りるのはやめて、指遊びから始めますか』
フレディーは私の手の指を器用に一本ずつ折り曲げていく。その謎の準備体操みたいな行動は何だ?
なんかナンシーにやらせた方が効果覿面そうだ。
……あれ、準備体操しているはずの左手が徐に胸に近づいているのは気のせいか?
あ、待って、左手が本当に胸を……これはあれだ。
非陳述記憶による無意識行動!
非陳述記憶とは行為そのものの記憶、身体に染み込んだ記憶だ。
フレディーはまだ完全には私の身体を動かせない。私がいつも一発かましている時の行動が無意識のうちに行動に移してしまっているのだ。
つまり、左手が無意識に胸を揉みくだそうとしている!
人生最高潮を迎えた私にダイレクトな刺激はダメだ!
いやフレディーに揉めとお願いしたのは私だから本望なのか……?
それでも、あ、左が胸に触れ───
『───ぐわっ! あ、あれ? 追い出された?』
フレディーは私の身体から投げ出されるように勢いよく飛び出す。
フレディーは私に視線を向けながら。
『大丈夫ですかエリンさん……あ』
「………………んぁっ」
この汚い哀れな女を見ないでくれフレディー。
純粋な美青年が見てはいけない光景なんだ。
私は悶え痙攣する身体を必死にうずくまって抑えるも、もう身体が限界のようで、新鮮な魚の如くベットの上でピチピチ跳ねていた。
そんな私に小説を書き書きしていたナンシーが一言。
「せめて声は抑えてくれ、その、集中出来ないからさ……」
いつもの強めな口調が弱々しく聞こえた。




