34あかり救出
俺は院長、医師、看護官、技官を連れて病院の会議室に入った。
マジックバッグを机の上に丁寧に置いた。
俺「既に救出した女生徒がマジックバッグの中にいます。
5名です。内1名は命の危険があります。
マジックバッグの中は時間が停止しているので、今は問題ありません。
後の4人は肉体的損傷は軽微ですが、大きな精神ダメージを負っています。
ここにトラが書いた5名の保護するまでの扱われ方、あとハナが書いた肉体的損傷のカルテがあります。
参考にしてください」
モモ医師「命の危機にある患者の容態は?」
俺「患者は花田あかりです。
説明すると怒りで我を忘れてしまそうで、怖いので、カルテを渡します。
話す勇気がないので花田とは会話していませんが、精神は壊れているとカルテに書いてあります」
モモ医師「了解しました。必ず回復させます。安心してください」
患者の氏名と共にカルテ、マジックバッグを医師達に渡した。
俺「このマジックバッグの中では時間経過しません。治療に役立ててください。
女生徒は救出しだい、病院に連れてきます。
よろしくお願いします」
トコ院長「マジックバッグの術式は素晴らしい。治療に役立ちます。
50万年ぶりの仕事です。
この機会を与えてくださった優斗様に感謝します」
* *
遡ること、病院建設の1週間まえ。
女生徒達の捜索は進んでいた。
この時点で2名の行方は既に判っていた。
しかし、女生徒2名の発見時には移転魔法を習得できていなかった。
このため救出はできなかった。
移転魔法を習得した夜、トラから緊急連絡が入った。
トラ「緊急事態です。
女生徒を見つけました。
キアルクス公爵邸の地下室です。
命の危機に瀕しています」
俺「了、その場所に、スパイゴーレムはいる?」
トラ「優斗をスパイゴーレムをつなぎます」
スパイゴーレムの情報が頭に流れる。
部屋には敵はいない。
俺はスパイゴーレムの情報を使い、即座に移転した。
部屋はまさに拷問室だった。
天井付近に不可視状態で浮かぶスパイゴーレムに念話で指示をだす。
俺「この部屋周辺を索敵で警戒。
敵が接近したら知らせて。
あと、女生徒はどこ? 教えて」
スパイゴーレムは「了解」と返事をし、
拷問室の中央を指さす。
そこには檻があった。
檻の中に何かがうずくまっている。
それは赤黒いアザや、ただれた傷や血糊で埋め尽くされていた。
急いで近づき確認する。
胸の膨らみでで女と判る。
顔を確認する。青や赤、黒いあざ、切り刻まれた鼻や耳、酷い状態だったが、誰だか確認できた。花田あかりであった。
こみ上げる感情を抑え、救出を急ぐ。
良かった。まだ息がある。だが今にも途絶えそうだ。
睡眠弾と麻痺弾を花田に打ち込み、マジックポーチに収納する。
俺「トラ、王都の拠点に移転する。トラにつなぐよ」
トラ「了」
王都の拠点の情報が頭になだれ込む。
即座に移転する。
俺「ハナを呼んでくれ、クラスメイトの処置を頼みたい」
トラがハナを呼んでくれた。
マジックポーチから花田を出し、まず、奴隷の首輪を外した。
俺「ハナ、この娘の体の状態を調べカルテを作て。
見落としの無いようにね。
ただ、容態が急変するようなら、作業を中断、即、マジックバックに収納してね。
あと体を隠すよう、布かなんか、かけてあげて。
作業が終わったら、すぐにこのマジックバッグに収納してね。
トラ、この娘はクラスメイトの花田あかり。花田がこの状況に至る経緯をまとめてくれる。
カルテに追加するよ」
トラ、ハナ「了」
俺「トラ、俺の認識が甘かった。
今すぐ居場所が判明した女生徒の救出を開始する。
周りに人がいない女生徒を優先して救出する。
順番に教て」
トラ「王都の娼館です。
スパイゴーレムを優斗につなぎます」
3畳ほどの部屋でベッドの上に女が1人座っている。
部屋に敵はいない。
移転と同時に、女に睡眠弾を打ち込む。
女の顔を確認する。クラスメイトだ。
変な化粧でも面影で判る。
クラスメイトをマジックポーチに収納し、王都の拠点に帰還した。
俺「次をお願い」
トラ「次も王都の娼館です。
ただ、2人です。
スパイゴーレムを優斗につなぎます」
スパイゴーレムの見ている部屋の様子が俺の頭に流れ込む。
どうやら最中のようだ。
かまわず移転した。
移転と同時に、部屋の男女に睡眠弾を撃ち込む。
索敵で周りに敵がいないか確認する。
周りに人の気配が多い。
敵が部屋に踏み込まないよう、手近にあった腰掛けで、部屋の入り口をふさぐ。
女に覆いかぶさる男を引きはがすが、なぜか男女の結合部が離れない。
え、どうして? だが、驚いている時間はない。
女生徒の回収が最優先だ。
ここは敵が多い。手荒だが、確実で最速の方法を選択する。
男に即死のマジックバレットを打ち込む。
女を傷つけぬよう、男の結合部をナイフで慎重に切断する。
分離した男をベッドの下に転がし、女からどける。
女の顔を確認する。クラスメイトだった。
血で体を汚してしまった。
ハナに体を清めてもらおう。
クラスメイトをマジックポーチに収納し、王都の拠点に帰還した。
帰還するとハナは仕事を終えて待っていた。
クラスメイトを俺のポーチから出す。
次に2人の奴隷の首輪を外した。
俺「ハナ、花田あかりの処置は終わった?」
ハナ「終わりました。
体の状態を報告します」
ハナは話し始めた。
危篤の原因は体内への異物の挿入で内臓が傷ついた為であった。
それに続く体の凄惨な状況説明に、
途中まで聞いて「ハナ、中断してくれ。
後はカルテで確認する」
聞くに堪えず、逃げてしまった。
怒りが収まらない。
俺「トラ、誰がこんなことをしたか徹底的に調べて、
関連する者、家族も使用人も全員、全員だよ」
俺「ハナ、クラスメイトの処置をお願い。
カルテもね。
一人、体を血で汚しちゃった。
怪我はしていない。
きれいにしてあげて。
後、血で汚れてる娘の股間に変なの詰まってる。
取って、犬のエサにでもして」
トラと今後の協議を行う。
女生徒は見つけ次第、俺に連絡、救出を開始することを決めた。
ハナがクラスメイトの処置を終えるのを待った。
3人を収容したマジックバッグを受け取り、魔道具工房に帰還した。