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24.参考資料【ムック系雑誌『本当は怖いアートの世界』】


特集:本当は怖い西洋絵画


■“フランス象徴主義の異端児” エティエンヌ・ド・ロッシュ


19世紀末、象徴主義の黄金期にショッキングな事件で世を騒がせた異端の画家がいた。エティエンヌ・ド・ロッシュ――モローやルドンと同時代を生きながら、本国フランスでは長らく封印されてきた存在である。


象徴主義は、19世紀末のヨーロッパで広がった“内面の可視化”を目指す芸術潮流である。急速に進む産業化と合理主義への反動として、画家たちは神話・宗教・夢・幻想といった“目に見えない領域”を重視し、象徴的なイメージを通して精神世界を描こうとした。ギュスターヴ・モローの神秘的な宗教画、オディロン・ルドンの夢幻的な版画作品など、象徴主義は現実から離れた“もうひとつの世界”を提示することで知られる。

その一方で、作家の内面性や妄想、個人的神話が強く反映されるため、しばしば“狂気”や“逸脱”と結びつけられることもあった。


ド・ロッシュは特に近代資本主義文明への嫌悪が強く、"文明化されていない"カリブ海の植民地に理想を見出し、移住して孤独な創作活動に没頭した画家だった。しかし、植民地政府に逮捕されて獄中で生涯を終え、彼の名は長く封印扱いとなった。


■「理想の美」への執着――封印の核心


彼が逮捕された理由、それはモデルとした女性たちへの虐待的な理想の強要――とりわけ、外科的・薬物的処置による廃人化が当局に暴かれたためである。


特定の「ミューズ」を描く画家自体は珍しくないが、ド・ロッシュは自身の描く絵画の世界だけでなく、現実の女性を「加工」することで理想を体現しようとした。


背景には19世紀の帝国主義時代における人種的優生主義や植民地への蔑視があったと見られ、事件は当時のフランス社会に大きな衝撃を与えた。ド・ロッシュ自身、白人の医師である父親と植民地出身の母親との間に生まれた私生児であり、差別や偏見、複雑な家庭環境下で育ったことが彼の精神性に影響を与えたと言われている。

(父親のブレソール・ド・ロッシュは人種間の身体的・行動的差異に関する研究で知られる医師。特に犯罪骨相学の論文を多く著している)


■企画展《静寂の連作》――狂気と夢想の果てに


ド・ロッシュの代表作として知られるのが、計5点からなる《静寂の連作》である。


- 《忘却のガラテア》

- 《沈黙するマリア》

- 《人形の祈り》

- 《無垢と光》

- 《静寂なるシレーヌ》


このうち3点は日本の敷島美術館(S県N市)が所蔵していたが、同美術館では新たに2点を迎え、計5点の連作が揃うことになった。


これを記念し、12月から《静寂の連作》を含む所蔵品の一般公開が行われる。

国内はおろか海外でもド・ロッシュの企画展が行われるのは稀であり、恐ろしくも幻想的なド・ロッシュの世界を垣間見るまたとない機会となる。

企画展ではド・ロッシュの作品を集めた目録に加え、作品の世界観をイメージした香水も販売される。いずれも数量限定。


■敷島美術館(S県N市)××-12

・アクセス:

JR東海道新幹線 → N駅北口

東京から:〈ひかり〉60分 〈こだま〉80分

名古屋から:〈ひかり〉65分 〈こだま〉90分

N駅北口より

路線バス:文化センター前行き →「敷島美術館前」下車(10分)

徒歩:北へ2.1km(約25分)

・会期:20××年12月10日~20××年2月2日


・写真《静寂なるシレーヌ》

晩年の代表作。ド・ロッシュは生涯で4人の妻を娶り、そのいずれも"モデル"だった。《静寂なるシレーヌ》のモデルとされる最後の妻アルベルティーネは、夫の逮捕時に両手足の腱を切られた状態で発見されたが、保護から1か月後に死去した。


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