23.【五島尚弥(喫茶オールド・ムーン店主)の証言②】
こんにちは。この前は大変でしたね。
はは、三宅さんのマシンガントークの話ですよ。疲れちゃうでしょう。
これ、良かったらサービスです。……いえいえ、遠慮なく。メニュー化予定の創作ドリンクだから、感想聞かせてね。
それで、メールした件だけど……山田さんのことで思い出したことがありましてね。
秋の始めくらいだったかなあ、山田さんがスーツ姿の男性と話し込んでたことがあってね。どうも待ち合わせしてたみたいで、いつもの窓際の席じゃなくて、入り口からよく見える――そう、そこの席に座って。四十代くらいかな?いかにも堅そうな、真面目そうな雰囲気の男性でした。
後で山田さんに聞いたら、『残置物の中に手放したくないものが混じってて、前に住んでた人のお兄さんがわざわざ取りに来た』って話でしたね。なんでも、山田さんの前に妹さんが住んでたんだけど、今は入院中で、その人が『あれだけはどうしても』って言いだしたとかで。
男性ですか?礼儀正しい感じの人でしたよ。『お手数をおかけして申し訳ない』って、山田さんの方が恐縮するくらい丁寧に、菓子折り持参で挨拶しててね。
……え?ああ、そういう感じはありませんでしたよ、結婚指輪してましたし。
妹さんは元々持病があったとかで、家で倒れて入院しちゃったから、そのままお兄さんが引き取ることにして家を売却した、って言ってたそうです。
……で、わざわざ「どうしても手渡しで」って話だったその画集、すごくレアなものらしいんですよ。地方の美術館の企画展で一時期だけ手に入ったものらしくて。俺もそういうの疎いんで、後からバイトの子に聞いた話なんですけどね。
バイトの子ですか?それが、課題で忙しくて出てこれないらしくて。ええ、美大生なんですよ。
その代わり、雑誌の切り抜きのコピーくれたんで、お渡ししますね。




