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突入!大迷宮ヴォルゴス──5

蒼馬将一はバイトを終え、帰宅後PCを立ち上げるなり動画サイトを検索し、とある動画を見ていた。

その動画のタイトルは──


──Labyrinth Volgos Floor3 (savage)worldfast clear!──


動画の再生数は20万回を超えていた。


「これ、クラウスさんの上げた動画だったのか……」


 ブレオンではインスタンス内で行われるバトルコンテンツにおいてはプレイデータを動画として保存でき、運営が許可した範囲内ならば外部のライブストリーミング配信及び動画共有サイトなどへアップロードすることが可能であった。このため、非常に多くの高難易度レイドの動画がストリーミン配信や動画共有サイトにアップロードされて出回っていた。


食事もそこそこに、缶ビールを開け動画をつまみにゴッゴッゴ……という音を立て一気に喉へ流し込む。


「ふぅ……」


最初にあけたビールを飲み干し、次の缶へ手を伸ばす。その間も動画からは目を離さない。「大迷宮ヴォルゴス3層」の予習として、動画を一通り見てギミックや自分のクラスの立ち位置を事前に確認するためだ。動画を眺めながらある程度のボスのギミックや攻撃の流れを確認する。動画を確認するうちに将一はとあることに気付く……。


「これ、MT(メンタンク)()()()()()()……ST(サブタンク)は誰だろ……オレが入る前に居たって人か」


 動画にはクラウス率いるガントレットの面々が映っていたが、ソーマとミクの代わりに別人がいた。一人はジンベイである。もう一人は……。

将一は3、4回ほど動画を確認したところで動画を止め、ばたんという音と共に床に倒れ込んだ。そのまま頭の下で腕を組み、天井を見上げ呟く……。


「ジンベイさんはともかく、あの人はなんで抜けたんだろう……」


自分より先にガントレットでSTを務めていた“ザイド”というプレイヤー、将一はそのザイドと言うプレイヤーの事は自分からギルドのメンバーへ尋ねることは無かったため、何も知らなかった。


「アリスの相棒だった人……」


将一は、ザイドと言うプレイヤーについて想いを馳せる、が……そうしているうちに酔いが回ってきたのか目が重くなり、将一はそのまま寝てしまった。


──大迷宮ヴォルゴス──探索編──


すでに2層までの探索を終えていたソーマたち冒険者による探索部隊はその先へと進む。おそらくこの先もヴォルゴスとの盟約を結んだ門番がソーマたちの行く手に立ち塞がる筈である。


「みんな揃ったな。それじゃ3層の攻略を始めよう」


「おっけー、いつでも」


「飯も強化薬も準備よし!」


「いっちゃいましょう!」


クラウスが全員揃っていることを確認し、それぞれが準備完了している旨を示す。大迷宮ヴォルゴスは4層構造になっており、すでに第2層までソーマは攻略している。ちょうど折り返しになる3層からは難易度が一気に上がると言われており、大迷宮ヴォルゴスが実装された当時は3層で進行が何週間もストップするパーティが多かった。


いよいよ大迷宮ヴォルゴス第3層への侵入を開始する。マッチング(閉鎖空間転移)による転移でソーマたちは以前攻略してた2層の大浴場の中心にいた。前に来た時と同じく湯気が立ち込め、大理石でできた壁からは温水が滝のようにそこら中から流れている。大浴場の正面の壁には巨大な扉があった。ソーマたち浴槽に渡された大理石でできた橋を渡り、扉の前に立つ。


ゴゴゴ──


すると、扉は自然に開き3層への道が開ける。扉の先は横幅が5メートルはあろうかという巨大な階段が下へ伸びていた。暗い通路に敷かれた階段を下へ降りていく。


「ソーマちゃん装備更新したんだ?」


「あ、えぇ……結局はジンベイさん任せっきりでエンチャント(装備強化)して貰ったんですけど」


3層への階段の道すがらレイジがソーマの装備が以前のものと違っているのに気づく。


「わたしからジンベイへ頼んでおいたので、ソーマさんはお気になさらずに」


クラウスが笑顔で言う。クラウスはソーマの装備強化の依頼を、ソーマが大迷宮ヴォルゴスを攻略し始めたすぐ後にジンベイにしていた。


 ジンベイは高難易度レイドの攻略を引退した後、ガントレットのサポートとして、メンバーへの装備の製作や強化薬などの消費アイテムの供給を行っている。トップレイドチームにはこういったサポートメンバーが存在することは珍しくない。

サポートメンバーも装備やアイテムの有償供給によるリターンを望んでいるわけでは無く、自分のサポートでレイドチームが早期クリアできればよい。そのためゴルダ(ゲーム内通貨)を惜しまないほどの資産を持っているため、両者ともに思惑が一致した場合このような関係が生まれる。


ジンベイはレイドを引退した後、クラフティングで自身のゴルダがみるみる増えていくことの楽しさに目覚めてしまい、それが高じて()()()()()()()()()()()()()()となり、現在では軽く数十億を超えるほどのゴルダを所有していた。


「でも、ソーマちゃん外見にもっと気を使わないと」


「へ?……ダメですかね今の装備だと」


 メリアディがソーマの装備へダメ出しをする。ただしダメ出ししたのは、()()()()()()()()()その見た目である。ソーマの装備はギルド装備と生産装備が混在していたため、統一感が無くお世辞にもイケてるとはいいがたい外見をしていた。

ブレオンの装備はだいたい頭から足までの5部位を一体としてデザインされている為、それをひとつでも欠けると著しく統一感が無くなる。

 

 そのため、ブレオンでは実際に来ている装備へ別の装備のイメージを上書きできるシステムが存在する「レイヤードスタイル」とよばれるもので、これによってプレイヤーは独自におしゃれを楽しんでいる。

おしゃれ用の装備はゲームを始めたばかりの初心者でも装備可能なように、ILは非常に低く設定されている。実用的な性能は無いが、レイヤードスタイルでいわゆる本気装備へ上書きすれば見た目はおしゃれなコーディネートのそのままで、色々なコンテンツへ参加することが可能だ。


「ソーマさん、()()の装備まんまだから、ちょっとちぐはぐなんですよね……統一感が欲しいって言うか……」


メリアディのダメ出しにミクも乗っかる。


「そそ……その辺もうちょっと気を使うと、もっとカッコ良くなるわよ!」


「アリスちゃんもほら、こんなかわいいのに!」


そういってメリアディはアリスの肩を掴みソーマの方へ向ける。


「……わたし……そういうのあんまり……」


アリスはそっぽを向きぼそりと呟くが、当のアリスも今の見た目はまんざらでもなかった。この間のメリアディとミクによる着せ替え作戦でコーディネートされたレイヤードスタイルにより、おしゃれ装備に上書きされている。

上半身を甲冑で固めつつも、ふわりと広がり膝上までのプリーツのレイヤードスカート、そこから覗く足には編み上げの細めなアップロングブーツを履いており、そのギャップがメリアディに言わせればカワイイのだという。


「はぁ……今度考えてみます……」


「何なら私たちが考えてあげよっか?ソーマちゃんのコーディネート」


「あ、わたしも!」


メリアディとミクは新しいおもちゃを見つけたかのように2人で盛り上がる。そうこうしているうちに階段の先が明るくなってきた。階段はその部分で終わっており、明るくなった先を抜けると目的の3層へ辿りつく。降りた先の通路を進むと再び上層と同じような大広間が目の前に広がる。


教会の礼拝堂のような四角い大広間には左右の壁の両側に大きな窪みがあり、その窪みの中には甲冑を纏い、剣と盾を携えた騎士のような彫像が立っていた。


「では行きますか」


「了解」


クラウスがソーマへ促す。大広間の入り口にはお決まりの赤い半透明な仕切りがエフェクトとして漂っている。それを跨ぎ大広間へソーマを先頭に全員が進む。


ズンッ、スンッ、ズシン──


ソーマたちが大広間へ入ると同時に、両側の騎士の彫像が動き出しソーマたちの前に立ち塞がる。ゆうに10メートル以上はあろうか……。4、5階建てのビル程の大きさがあった。


「……我らはこの迷宮を守るために主により造られた『カストルとポルックス』……」


「主の命により、こを通すわけにはゆかぬ。……だがよくぞここまでたどり着いた……敬意を表し全力で参る!……せいぜい足掻いて見せよ!」


“カストルとポルックス”……ふたご座の双星と同じ、ギリシャ神話の兄弟の名前を名乗った2体の巨大な彫像から同時に全く同じ口上が発せられ、それが共音し大広間全体へ響く。どうやらこれまで対峙してきた冥界から召喚されたデーモンの類では無く、大魔導師ヴォルゴスによって命を吹き込まれたゴーレムのようなモノであろう。

それが迷宮へ侵入してきた冒険者に反応し、防衛機構として起動したのである。


カストルとポルックスは右手に持った巨大な剣を高く掲げ、左手に持つ盾を体に前へ出す。2体が同じ構えを取りソーマたちへ威嚇する。


ソーマたちもそれに応えるかのように武器を構え戦闘態勢をとる。


「事前の段取り通り、アリスとソーマさんは1体づつ取ってください」


「……うん」


「はい!」


「じゃー俺たちはいつも通りだな!ミク、頑張ろうぜ」


「ハイ!殴るのは任せてください!」


ボルフントとミクが奮い立つ。アリスとソーマはお互いの1体づつボスを持つ作戦である。


「じゃあ私はアリスちゃんを見てようかな、ドワイトはソーマちゃんをお願いね」


「了解しました、ソーマさんをフォローします」


ヒーラー陣はお互いにタンクに張り付きフォローする。今回のバトルでは完全にチームを2つに分け、同時に2体のボスを捌くことになる。


「それではアリス、ソーマさん準備ができ次第どうぞ」


クラウスが先頭にいる2人のタンクへイニシアチブを渡す。アリスとソーマはお互い見つめ合い頷く……。手に持った武器を握りしめ2体のボスへ顔を向ける。


そして……。


「はぁあああああ!」


「うぉおおおおおお!」


アリスが右にいるカストルへ、ソーマは左にいるポルックスへ……それぞれタウントスキルを撃ち込み戦闘が始まった。


──大迷宮ヴォルゴス第3層攻略開始──


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