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突入!大迷宮ヴォルゴス──6

 ソーマが左にいるポルックスへスライパーショットを放つ。剣を振り下ろした軌跡がオレンジ色の波動になってポルックスへ撃ち込まれる。ポルックスは自身の脅威をソーマと判断し、巨大な剣をソーマへ振り降ろしありったけの攻撃を浴びせる。

アリスも右にいるカストルへハウリングブレードに一閃を撃ち込み、カストルがアリスへ釘付けになる。お互いが“カストルとポルックスと呼ばれる”2体の彫像をそれぞれフィールドの左右へ、丁度両側でカストルとポルックスを背中合わせになるように固定する。


「さぁ、きますよ!」


クラウスは2人のタンクがボスを固定したのを確認すると、皆にこの後来るボスのスキルを警戒するように注意を促す。


すると、カストルとポルックスは盾を頭上に掲げる動作と同時に何やら詠唱を始めた。


──双星の(スターライト)爆轟(デトネーション)──


詠唱が終了するとフィールドの中心に巨大な火の玉が出現し、段々と大きくなりフィールドを占有していく。出現時の大きさから3倍以上に膨れ上がったところで火の玉は爆ぜ、巨大な爆炎が広がりソーマたちを包み込んだ。と、同時に衝撃が体にぶつかってくる。


ゴバァアアアアアアア!!!


爆音が遅れて聞こえて来る。剣龍の究極(アルティメット)龍技(ドライブ)並みの攻撃が開幕からいきなりきた感じである。双星の爆轟の派手なエフェクト共に、ソーマたちへダメージが伝わる、が……すでに展開を終えていたメリアディの全体バリア「女神の抱擁」と、ドワイトの「ロードキュア(全体回復魔法)」によりHPは2割も削られてはいなかった。


「……ッ、相変わらず派手なエフェクトの割には大したことねーな」


「そりゃ、メリ姉のバリアとドワイトのヒールのおかげっしょ!」


「そうだっけ?ヒーラー様々だな!」


全員が双星の爆轟を凌ぎボルフントが軽口を叩く。レイジの言う通り、爆風と衝撃が全身を通り過ぎていったが、メリアディとドワイトの回復魔法のお蔭で殆どダメージらしいダメージは負っていない。


 だが、問題は攻撃の派手さやダメージではなかった。双星の爆轟の追加効果としてパーティ全員にデバフが付与される。これが厄介でカストルとポルックス戦ではパーティを2つに分けねばならなかった。ソーマたちに一斉にデバフが付与された。ソーマ、ボルフント、レイジ、クラウス、メリアディには頭上に黒い円形のシンボルが浮き上がる。対してアリス、ミク、ドワイトには白いシンボルが頭上に浮かび上がった。デバフの色の割合は黒が5、白が3となった。


「黒?……よしそのまま!」


「えっと……白!あぁーんあっちだぁ~」


「黒、ほい!今のうちにDotいれとくかぁ!」


 クラウスはデバフを確認すると全体魔法から単体魔法へ切り替える、ミクはさっきまで殴っていたポルックスから離れカストルへ間合いを一瞬で詰めるスキル「縮地」を発動する。レイジは冷静にスキル発動時の硬直を狙いDoTを更新してゆく。皆、自分のデバフを確認し瞬時にカストルとポルックス、どちらを相手するべきか判断する。

このデバフの特性として黒が「カストルの威光に支配された状態」、白が「ポルックスの威光に支配された状態」という説明がなされており、ようは「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」……という非常に厄介なデバフである。


もし自分に付与されたデバフと同じ色のボスを攻撃した場合、その攻撃が反射ダメージとして自身に返ってくる。そのため自分のデバフよく確認し、色の違う方を殴らねばならなかった。


攻撃が反射されるのはもちろん、同じ色のボスからの攻撃は非常に痛いため、タンクが自分が付いたデバフの色と別のボスと対峙していた場合、スイッチによりお互いのボスを交換しなければならない。カストルは“黒”、ポルックスは“白”……と一般的に認識されており、今回は偶然にもソーマのデバフが黒、アリスが白であったため、お互いのボスを交換する必要はなく現状のままでボスをフィールド両側に固定する。


「……こっち白」


「黒です!このままこっち殴ります!」


ソーマとアリスはお互いのデバフを申告し、そのままスイッチすることなくカストルとポルックスと対峙する。

 それぞれの色の判別については……お互いの依代である彫像に使われた石の“色”である。カストルとポルックスは全く姿形が同じであるが、唯一、色が違っていたのである。カストルは黒みがかった、囲碁の黒石に使われる頁岩(けつがん)のような素材で全体が造られている。対してポルックスは御影石のような素材で造られ、全身が白くなっていた。



──双星の爆轟1回目──


●カストル……○デバフ付きアリス、ミク、ドワイト


○ポルックス……●デバフ付きソーマ、ボルフント、レイジ、クラウス、メリアディ



最初の双星の爆轟によりチームが分けられた。それぞれが対応したボスへの攻撃を行う。黒のデバフが付いた人数が多いため、ポルックスのHPの方が若干削れるのが早い。デバフの効果時間は50秒ほどで、50秒経過するとデバフは切れるようになっている。

そして、一回目の双星の爆轟によるデバフが切れる。


「ボルフント、カストルの方を頼む!」


「了解、っしゃー!」


クラウスの指示でボルフントはそれまで攻撃していたポルックスからカストルへターゲットを変える。すでにデバフは消失しているため反射ダメージもなく攻撃することが可能であった。ボルフントの槍がカストルの石材で造られた体に容赦なく突き刺さる。


 カストルとポルックスも冒険者を排除しようと次々と攻撃を繰り出す。右手に持った剣を掲げ、勢いよく振り下ろすヘイト1位への強攻撃「ゴッズブレード」。そして鈍い風切り音と共に、横薙ぎで自身の前方にいるプレイヤーを吹き飛ばさんとする前方範囲攻撃「ガストファウント」……そのどれもボスと対峙するタンクのHPをガクンと減らす。

ソーマとアリスは防御スキルでそれらの攻撃に耐える。まだ一撃でHPが半分以上削られるほどの威力は無い。ソーマとアリスはカストルとポルックスから繰り出される巨大な剣による攻撃を盾で凌ぎつつ、自身も隙あらばボスへ攻撃スキルを撃ち込む。

すると、ソーマの足元にAoEの発生を示す予兆である円形のエフェクトが現れる。ソーマはそのエフェクトを回避するため自身の立ち位置を少しずらす、ボスをDPSの方へ向けないよう気をつけながら……。


「おおぉ!これでも食らうがよい!ピラークラッシュ!」


そう叫ぶと、カストルとポルックスは持っていた盾を床に叩きつける。すると上空から巨大な円柱が降ってきた。ズンッ……という鈍い衝突音と共に、1本……2本……3本……合計4本の円柱がそれぞれ発生していたAoEめがけて突き刺さった。円柱はそのまま深く突き刺さり根元部分を残し横倒しになるが、しばらくして床へ突き刺さっていた円柱の根元部分も含めて4本の円柱が一気に視界から消え去る。


この辺りはゲームとしてのディフォルメが優先されていた。


「ひゃー、あっぶなぁい」


「あぶね……今のAoE見てなかったぞ」


ミクとレイジにもAoEが来ており、(すん)でのところで円柱を回避する。DPSが食らえばひとたまりもなく攻撃に集中しすぎていると見逃して食らってしまう場合がままあった。AoEは4つ発生しており最後の1つはドワイトに来ていたが、こちらはきっちりとフィールド端へ誘導し回避していた。ソーマたちはカストルとポルックスのHPを減らしていく、なるべく2体均等に……。


そうしているうちに、カストルとポルックスは再び盾を頭上に掲げる動作をする。双星の爆轟の詠唱を始めた合図だ。


「きますよ!双星の爆轟」


「みんな、集まってぇ……『女神の抱擁(全体バリア)』」


「こちらも……『キュアプロージョン(全体軽減魔法)』!」


クラウスの合図と共にメリアディとドワイトがお互いバリアなどの軽減魔法を重ね、双星の爆轟によるダメージへ備える。そして再びフィールド中央に火の玉が発生する。


ゴバァアアアアアアア!!!


一回目と同様に火の玉は大きくなり、ある程度大きくなった時点で爆発する。爆炎と衝撃に耐え、自身のデバフを確認するソーマたち。すると──



──双星の爆轟2回目──


●カストル……○デバフ付きソーマ、ボルフント、クラウス、メリアディ


○ポルックス……●デバフ付きアリス、ミク、レイジ、ドワイト



ソーマとアリスに先ほどとは逆のデバフが付与された。デバフと同じ色のボスへの攻撃は反射される……ならばお互いの持っているボスを入れ替えねばならない。詠唱後の硬直の隙をついてスイッチを行いお互いのボスを交換する準備に入る。

2人はフィールド端にいる相方を無言で見つめる。お互いすでにデバフの確認は終えており、あとはスイッチでボスを交換するだけである。


「……はっ!」


「でやぁああ!」


ソーマはアリスが右へ固定しているカストルへ、アリスはソーマが左へ固定しているポルックスへ……それぞれタウントスキルをほぼ同時に撃ち込む。


フィールド両側から放たれたソーマのスライパーショットが、アリスのハウリングブレードが……フィールド中央で交差する!

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