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これも愛?

クラウスの装備強化指令により、ソーマはいよいよ自身の装備の強化を本格的に意識し始めた。

ブレオンにおいて、装備の入手手段は大まかに言って四つ。


◆高難易度レイドを攻略しクリア時の報酬として装備を入手する


◆プレイヤーの生産品をマーケットなどで購入する


◆メインクエストやサブクエストの報酬


ギルドトークン(共通紙幣)を集め冒険者ギルドでトークンと装備を交換する


ブレオンでは“IL(アイテムレベル)”で装備のランク付けが行わており、高いILの装備は当然その入手難易度に比例する。現バージョンでは高難易度レイドの頂点に存在する「大迷宮ヴォルゴス」で得られる装備が一番ILが高い。ただ、ソーマは大迷宮ヴォルゴスを攻略するために装備の更新を行っているので、大迷宮ヴォルゴスで得られる装備はどの部位も所持していないため、それに次ぐILの装備となるとギルドトークンで得られる装備やマーケットで買える生産装備で固めるしかなかった。


メインクエストやサブクエストで得られる装備はあくまでもメインクエストを進めていく過程でレベルアップと共に更新されるクエスト用の装備品でしかなく、IL自体は低く設定されていた。

いわゆる()()()()()()()()と呼ばれる高難易度レイドやPvPなどのカンスト後のコンテンツに使える代物では無いため今回の候補からは外れる。


「うーん……やっぱギルド装備の方がILは高い……か……」


 蒼馬将一(そうましょういち)は、コンビニのバックヤードで休憩中にスマホでブレオンのコンパニオンアプリからデータベースへアクセスし、装備のILやステータスを調べていた。そこへ商品の発注処理を終えた中村美玖(なかむらみく)がバックヤードへ入ってくる。休憩していた将一を見るなりスマホを弄る将一のそばへ寄り


「あ、蒼馬さん何してんですか?カノジョさんとのLINE?」


「んー……俺、彼女いないよ?……ちょっと調べ物してんの」


「へぇ……そうなんだ……」


しかし、将一は美玖の反応は気にせずスマホの画面を凝視する。


「あのさぁ、()()()()()の方ってガチ装備だとILいくつ?」


「えっと、ダークミスト装備(大迷宮ヴォルゴスでドロップする装備)で固めてるから、確か“IL200”ですね」


「すっげ……オレの今のガチ装備だと“IL188”だよ……」


将一はあまりのILの差に愕然とした。ここでいうILとは「各部位の装備のILの平均」であり、美玖の場合、各部位のILが全て200であったため平均も200となる。将一の場合は一カ所IL200の装備があったが、他は生産装備であったため美玖よりも平均ILが低くなっていた。


「ギルド装備はどうです?あれIL200ですよ……あ、交換できるだけのトークンがあれば……ですけど」


「うーん、ギルドトークンはやっと集め出したとこなんだよね……」


美玖の提案にも、将一は気のない返事で答える。それもそのはずで、冒険者ギルドが発行している「ギルドトークン」は原則的に熟練冒険者用の共通紙幣であり、レベル50になり冒険者としての活動が認められた者にしか発行されない。

ソーマはカンストしてまだ一ヶ月半ほどだったため、ギルドトークンで交換できる装備も胴装備をやっと交換できる数しか稼いでいなかった。


「はー…どうすっかな……っと、休憩も終わりか……」


「はい、仕事仕事ですよっ!」


そういって美玖は将一の背中を押しバックヤードから押し出そうとする。美玖に急かされながら、将一はスマホをバックヤードにあるテーブルへ置き、そのまま表のレジへ向かった。


 次の大迷宮ヴォルゴス攻略の活動日までに装備を更新させILを上げる……その為には冒険者ギルドで交換できる、いわゆる「ギルド装備」を揃えるのが手っ取り早かった。しかし、ギルドトークンは保持上限が設定されているため、今のソーマの所持数ではあと一カ所ほどしかギルド装備を交換できてなかった。ならば、あとの部位は生産装備をエンチャントで強化するしかない。

IL(アイテムレベル)における装備性能の差は絶対であるが、()()の例外としてエンチャント(装備強化)による強化でILの差を覆すことが出来る。これは生産装備だけの仕様であり、レイドでドロップする装備へのエンチャントによる強化は出来ない。このような仕様になっているのはクラフティングの救済措置としてでもあった。


生産クラスにほとんど手を付けていないソーマは当然スキルも心許ない。なのでソーマは同じギルドのジンベイへ装備のエンチャント強化を依頼することにした。ソーマはギルド情報でジンベイがログインしているのを確認するとダイレクトチャットでジンベイに依頼する。


「ジンベイさん……ちょっと頼みたいことがあるんですけど……」


ソーマの依頼を聞き、ジンベイは少し考え込むとソーマへ答える。


「……クラウスから話は聞いてたけどよ。まぁ装備の更新は今のお前さんじゃ、ちとしんどいわな」


「はい……なんでエンチャントで強化した装備を用意しようかと……」


「成る程ね、それで俺にその強化を頼む、と?……いいぜ」


「ホントですか!……あ、でも強化に使うアンク(強化素材)ってかなり使うんですよね?自分アンクもあんまり持ってないし、それにゴルダの手持ちが……」


「その辺は心配すんな。クラウスにも言われてるし……ただし、俺の頼みも聞いてもらう。ギブアンドテイクってやつだ。()()()()()()()()()()()って言うだろ?」


声の向こうからでもジンベイがニヤリと不敵な笑みを浮かべるのが想像できた……。


──商業都市レクテナント──


 装備のエンチャントによる強化を()()でやって貰う代わりに、ジンベイからとある頼みごとをされたソーマはレクテナントへ来ていた。ジンベイに「レクテナントにある商館へ行け」と言われていたので素直に商館を目指す。ソーマは市街のすぐ入り口に設置されている転送門から転移すると、そのまま大通りを進み商館を目指す。

ソーマは以前のサブクエストのせいかレクテナントにはあまり良い印象は持ってなかったが、それでも胡散臭い魔導師ギルドさえ無視すれば便利な街である。大陸の中心に位置すため交通の便も良く、施設も充実している為レクテナントを拠点とする冒険者は多かった。


レクテナント市街をちょうど“Y字”に通る大通りが交差する部分に商館はあった。中心部にドーム状の屋根を持つ建物があり、平たい屋根の建物がドーム状の建物を四角く囲っていた。

「商館」とは主に生産クラスへの仕事の斡旋、生産用設備(生産時のスキル)の貸し出し(効果上昇)などを行い、また冒険者自身が売買を行えるマーケットの出店手続きも執り仕切っている。冒険者ギルドがバトルクラスの支援施設とすれば、商館が生産クラスの為の支援施設といえる。


ソーマが商館の扉を開け足を踏みいれると


ガンガンガン……ギッギッギッ……トントントン……


金槌で金属の板を延ばす音、ノコギリで丸太をひく音、タガネで金属に彫りを入れる音……色々な作業の音が重なり、まるで演奏会で響く音楽のように商館の中に溢れていた。商館に併設されている作業所で100人以上の冒険者がめいめいに生産作業をしているせいだ。その熱気に圧倒されながらも、ソーマはそこからどうしたらいいかわからず、とりあえず商館の受付カウンターを目指した。


「ちょっとそこのアンタ、そうアンタだよ」


ソーマが辺りをきょろきょろ見回していると、突然声を掛けられた。ソーマが自分の事だと気付くには少しの時間を要したが、声を掛けたプレイヤーらしき人物はカウンターにいるソーマへ近付いた。


「ふぅん……アンタがジンベイの使いってこと?じゃあクラウスの連れなんだ……なるほどね」


横髪が胸にかかるほどの栗色の髪にはクセがところどころついており、平均的なフェイスタイプでキャラメイクされた顔にはリムの無い眼鏡をかけ、それが少なからず特徴になっていた。ヒュースの女性は自分を()()()()と言い、口ぶりからジンベイやクラウスを知っているようだった。

ラムレイは続けて話す。


「アイツ……また自分で来ずにわざわざ使いを寄越すなんて……」


「はぁ……」


「あぁ、ごめんこっちの話。で、アンタ……ジンベイから話は聞いてる?」


ラムレイは目の前で手を振る仕草をし、その様子からはジンベイに呆れているようだった。ソーマはとりあえずラムレイの話を聞くしかないと思い会話を進める。


「いえ……レクテナントにある商館へ行け……としか」


ソーマは本当にジンベイにそれしか教えられておらず、レクテナントで何をするのかは全く分からなかった。


「それにしても、なんで自分がジンベイさんの使いだと分かったんです?」


「そりゃ……その格好さ、そんないかにも冒険者ですってなガチガチの甲冑着てて剣を下げてここに突っ立ってりゃ、いやでもわかるよ」


「ここはそういう冒険者が来るようなとこじゃないからね、見てみな」


そう言って、ラムレイと言う女性……にみえるプレイヤーはカウンターへ肘を付き後ろを向く。ソーマもつられて同じ方向を向くが、そこには生産用の装備でクラフティングを行うプレイヤーばかりであった。その中にあって戦闘へ赴く格好でカウンターに立つソーマはいやがおうにも目立つ。


「ラムレイさんでしたっけ……その感じだと、ジンベイさんをよく知ってるんですよね?」


「ジンベイとはサービス開始時からよくつるんでてさ、アイツがレイド引退して生産専になるって時も色々教えてあげたんだ」


「そうなるといい感じになる事あるじゃん?お互い人間だし」


「あぁー」


そう言われ、ソーマは察する。VRMMORPGであろうとプレイヤーの中身は血が通った人間である、一緒にいれば当然好意を抱く事もある。しかし……そのあとの話が違っていた。


「でもわたし中身男だし、べつに()()()やってるワケでもなかったからね」


「えっ?」


ソーマが思いもよらない、意外な答えが返ってきた。

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