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突入!大迷宮ヴォルゴス──4

「……エンペラーアーマー!」


ソーマがスタンし動けない今、ドゥルカヌゥスの浄化の炎を()()()()()()()ため、アリスのとっさの機転でシールドガードの究極防御スキル「エンペラーアーマー(絶対防御)」を発動させる。スタンで動けないソーマをよそに、浄化の炎の黒い光弾が連続でアリスへ着弾する。


「……ふぅ」


いくらVR空間上のアバターとはいえ、ダメージも感覚となってプレイヤーへ伝わるようになっている。バトル中に受けるダメージによる感覚の不快さは耐え難いモノではないが、その感覚を回避しようとする心理はプレイヤーに働くため、ブレオンではことバトル中のダメージによる感覚のフィードバックは切ることが出来ないようになっている。


しかし、アリスは浄化の炎を受けても平然としていた。アリスが纏った青い光は浄化の炎がアリスに届く前に光弾を消し去ってゆく、アリスにはダメージが全く通っていなかった。それがエンペラーアーマーというスキルの効果である。エンペラーアーマーは()()()()()の攻撃を無効化し、使用者へのダメージを“ゼロ”にする。よってダメージを受けた際の感覚も発生しない。


シールドを掲げたままアリスは浄化の炎を一人で受け切った。メリアディとドワイトもエンペラーアーマーの発動を見て待機していたアリスへの単体強回復ではなく、全体回復に切り替えていた。ソーマも先ほどの天罰の鞭によるスタンが切れ、戦線に復帰する。


「浄化の炎は無敵スキルで一人受けするのがセオリーになってますが……」


スタンから復帰したソーマへクラウスが告げる。


「ただ、無敵スキルはご存知の通り“リキャスト(※)”が長い。できれば二人受けが望ましいですね」


 クラウスの言う通りで、タンクはその特性として所持スキルにいわゆる「無敵スキル」というものが存在する。これは文字通りあらゆるダメージを無効化するスキルで、シールドガードの「エンペラーアーマー」、アークナイトの「ジャッジメントブロック」、ルーンガードの「マイティウォール」などのスキルが無敵スキルに相当する。無敵スキルはあらゆる攻撃を無効化できるが、デメリットも当然存在した。それは圧倒的な()()()()()()()()()()()。これらの無敵スキルは総じて他のスキルに比べ数倍のリキャスト時間が設定されており安易に連発は出来ない。

高難易度レイドにおいても戦闘中に使用できるのはリキャストタイムの関係で2回ほどが限界である。


※……魔法やスキルの「再使用時間」を指す。CT(クールタイム)とは別に設定されており、スキルごとに違いはあるが大体は30秒~180秒の間である。ちなみにアリスが使用したエンペラーアーマーのリキャスト時間は“500秒”である


 タンクの無敵スキルは大抵、ヒーラーの回復が間に合わない時の緊急回避として使われるが、プレイヤーの柔軟な思考によって運営が想定している正攻法の穴を突き、ボスのダメージギミックをタンクの無敵スキルにより強引に処理する際にも使用される。先ほどクラウスが言った“一人受け”とは後者で、ドゥルカヌゥスの浄化の炎は運営の想定としてはタンクが2人で受け、ダメージをシェアするのが正攻法であった。


アリスの無敵スキルによる浄化の炎一人受けによってMTを落すことなく、ソーマたちはそのままドゥルカヌゥスのへの攻撃を続ける。


「しっかし、相変わらずタンクのあのスキルはチートすぎるよな!全然効いてねぇでやんの」


「じゃー、おっさんもタンクやれば?」


「よせやい、俺はDPSが好きなの!」


ボルフントがアリスの一人受けを見て羨ましそうに言う。が、レイジの皮肉通り無敵スキルはタンク専用のスキルであるため仕方がない。誰もが使えクラスの差が無くなってしまっては、パーティプレイでのロールの意味が無くなってしまう。


「わが眼光は全てをさらけ出す……嘘をついているものは石になるがよい!」


ドゥルカヌゥスがそう叫ぶと、ドゥルカヌゥスの両眼が怪しく光り出した。と、同時にシンボリックなマーカーが8つ……青と赤のくさび型をしたマーカーがソーマたちそれぞれの頭上に浮かび上がる。


「真実の眼」とよばれる攻撃で、ドゥルカヌゥスがこの攻撃を発動した際に青色のマーカーが頭上についていれば「真実」、赤色のマーカーが頭上についていれば「嘘」となり、嘘を見透かされたプレイヤーはドゥルカヌゥスの真実の眼と視線を合わせていると石化してしまう……というギミックであった。


「青……よっし!」


「あーん、赤ぁ!」


それぞれが素早く自分のマーカーを確認する。パーティの中で赤色のマーカーがついたのはミクとドワイト、ソーマであった。赤色のマーカーがついたプレイヤーはドゥルカヌゥスの方を向いていると石化してしまう。赤色のマーカーがついたプレイヤーは視線をそらす必要があり、視線をそらす場合は目を瞑るだけではダメで、ドゥルカヌゥスの真実の眼に背を向けなければ視線をそらした事にはならない。

それを怠り石化してしまうと、15秒ほど行動不能になり、なおかつ石化中に何らかの攻撃を食らってしまうと瞬時に死亡してしまうという凶悪なギミックである。真実の眼はドゥルカヌゥスによる他の攻撃の最中にも行われるため、他のギミックを処理しつつ自身についた真実の眼によるマーカーの色を意識しなければならなかった。


「ほっ!」


「……っととと」


 ドゥルカヌゥスの眼からフィールド全体に閃光が走る。今回は浄化の奔流も同時に来ていたため、4本の光の筋を避けながら赤色マーカーがついていた3人はドゥルカヌゥスを背にしつつ浄化の奔流も回避する。

無論、天罰の鞭中にも真実の眼は繰り出されるので回避する方向を見極めねばならない。フィールドの前へ回避するため、ドゥルカヌゥスをガン見していたせいで真実の眼を食らい石化してしまう……というのは慣れたプレイヤーでもよくやってしまうミスであった。


「よし、あとは削るだけだ『クイックブースト(攻撃力増大)』!」


「いっきますよー!」


「おねーさんも張り切っちゃう!『ホーリーピラー』!」


レイジが物理攻撃力を上げる支援スキルを発動し、ミクやボルフントの後押しをする。メリアディはクラウスへヒールワークを任せ自身も攻撃に回る。ボルフントやミク、クラウスの攻撃スキルが容赦なくドゥルカヌゥスのHPを削っていく。ドゥルカヌゥスも多彩な攻撃でソーマたちを翻弄し、何人かが石化したりしたが……やがてドゥルカヌゥスのHPが数パーセントになり、そして……。


「きぃいいい……口惜しや……所詮こちらの依代ではこの程度か……」


そう言い残し、ドゥルカヌゥスはその巨体をのけぞらせ両腕を天にかざす…。そしてグランドデーモンと同じく倒れる際に黒い粒子となってその巨体が霧散する。


<<Congratulations!>> 


「ふぅう……」


「よっしゃー!」


「2層クリア!いぇい!」


「安定してますなぁ」


ドゥルカヌゥスを倒した。ソーマは額の汗を拭う仕草をし、クリア時の余韻にひたる。他のメンバーはいつも通りソーマのクリアを喜ぶ。これでなんとか2層までを踏破したソーマ。これで残りはあと3層と4層だけとなり、大迷宮ヴォルゴスも折り返しにきた。


「なんとか2層までは行けたな……よし、とりあえずここで一旦終わっておこう」


「お、了解」


「はーい」


「……わかった」


クラウスの指示でソーマの大迷宮ヴォルゴス攻略は一旦は終了となった。それぞれ大迷宮ヴォルゴスから脱出ゲートを使い離脱する、ソーマもインスタンスから離脱した。ソーマたちは大迷宮へ突入する前の、精霊樹海にある大迷宮の入り口となる巨大な門の前に転移する。そしてクラウスは皆へ向け、今日の攻略の終了を告げる。


「後日3層からまた始めよう。では今日はこれで解散、みんなお疲れ様!」


「へーい、じゃオレはデイリーやって落ちるわ」


「わたしもデイリーやろっかな、アリスちゃんも一緒にどぉ?」


「うん……リーサも誘う……」


解散となったため、皆それぞれにリプレース(転移魔法)で思い思いの場所へ転移を開始する。リプレースを唱えると、淡い光の粒子がプレイヤーの体を包む、光の粒子はやがて強い光の塊となりそのまま光の筋となってそれぞれの目的の場所へ飛んで行った。その場に残ったのはクラウスに「話があるので」と言われたソーマとクラウス、メリアディの3人である。


クラウスが考え込んでいるの察してかメリアディが問いかける。


「どうしたの?アナタ」


「いや、うすうす感じてはいたんだが……」


「……?」


下を向いたまま考え込むクラウス。メリアディはクラウスの肩に手を置きクラウスの顔を不思議そうに見つめる。クラウスがもったいぶっているのを固唾をのんで見守るソーマ。

VR内のアバターであるが自分が今、冷や汗をかいていると錯覚するほどであった。クラウスはソーマへ顔を向けはっきりとした口調で話しはじめた。


「……今のソーマさんの装備では3層からは正直キツい。次に攻略を再開するまでに装備をもっと強化しましょう!」


「装備……ですか」


「そうねぇ、言い難いけどアリスちゃんと比べちゃうとどうしてもねぇ……」


「やはりクラスは違えど、アリスとの被ダメージとDPSの差が如実に出ているので、ソーマさんにはちょっと頑張ってもらって現バージョンにおける装備のアイテムレベルを上げてもらおうかと」


クラウスはソーマへ装備の強化をしてから3層以降を攻略することを提案する。


「無論、我々もお手伝いは致しますが」


「実は自分も……もう少し装備に関しては頑張らないとな……って思ってたとこなんで」


ソーマはアリスとの差をプレイヤースキルもだが、装備に関しても一歩……いや、二歩も三歩も遅れていると認識していた。なのでクラウスの提案はソーマにとっても願ったり叶ったりであった。


「お願いします!」


ソーマは勢いよく頭を下げる。


「ソーマちゃんのお着替え……楽しそう……フフフ」


「え……そういう話なんですか!?」


メリアディの何かを察した不穏な表情にソーマはたじろぎ後ずさる……


かくして、クラウスの一声によりソーマの強化作戦が始まった──

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