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一攫千金──後編

「苦労する割には、なんもねーな」


「まだ上層だからだろう、箱はだいたい地下5階辺りからでなきゃ出てこん。運がよけりゃ……そろそろなんだが」


 地下2階ではソーマがトラップを踏み全員のHPが一桁になり危うく全滅しかけ、その後も何回かトラブルに見舞われながらもようやく地下5階へ到達できた。地下4階からの階段を降り進んでみると、どうやら一本道らしく、6フロアほど通路を延々と歩くとその先に次の階へ降りる階段と、その手前に宝箱が置かれているだけのフロアがあった。


「あ、宝箱ですよ!」


宝箱に近づきミクが目を輝かせる。反射的に宝箱を開けようと手を伸ばすが「ガシッ」とジンベイの大きな手に掴まれ、宝箱に触れることは出来なかった。


(はや)る気持ちはわかるが、まずは解除だぞ」


「ミク……迂闊……」


「あー、ごめんなさい!そだった……」


ミクは頭に手をやり、ミルディの特徴的な耳を垂れ反省する。それを見たソーマとレイジが(あざとい…)と、思考をシンクロさせていた。ダンジョンに置かれている宝箱の常としてトラップが仕掛けられている。これは古今東西、RPGの常識である。無論このエーテルダンジョンの宝箱とて例外では無かった。


「ところで、お前ら()()()()()()()のレベルは?」


「1です!」


「……まだ2」


「オレは4」


「3ですぅ」


ジンベイが念のため、各自のトレハン……「トレジャーハントスキル」のレベルを聞いた。各々が答えるが、ジンベイ以外は初歩といえるスキルレベルしかなかった。ソーマに至ってはトレジャーハントクエストをクリアしていない為、トレハンスキルすら持っていなかった。


「……お前ら……次、宝箱があっても触んなよ……」


エーテルダンジョンでは最低でも7レベル以上のトレハンスキルが必要になってくる。宝箱のトラップを解錠して開けることが出来るのは、このパーティ中ではトレハンスキルをカンストしているジンベイしかいなかった。ジンベイがまずトラップのレベルを探り、それからトレハンスキルで宝箱のトラップの解錠を試みる。


「だってさー、トレハンスキルってあんま使わないしなぁ」


「わたしも上げようとしてないから低いまま」


ジンベイの解錠作業により「ガチャリ」と音がして宝箱が開く。宝箱の中には──


◆30,000ゴルダ金貨……ヴレインディアで流通している貨幣


◆ファイアサンド×500……生産時に使用する触媒。炎の魔質を持った砂


◆銀聖布×2……生産素材。銀によって清められた布


◆アジャイ王の粘土板×1……装備強化素材。古代ヴレインディア帝国皇帝アジャイの盟約を彫り込んだ粘土板


宝箱から出たアイテムは、ゴルダ以外はその場にいるプレイヤーで分配になる。ジンベイが仕切り、皆に希望を聞きアイテム分配を処理する。それぞれが希望を出し、ダイスによる勝負で出した目の多いプレイヤーが貰っていく、いわゆる「ロット勝負」も可能であるが今回は主催であるジンベイが分配を管理する方法に設定されていた。


「粘土板は欲しい奴いるか?」


「あ、それ欲しいです」


 ソーマが名乗りを上げた。他には希望者がいなかったため、ソーマが手に入れることになった。他のアイテムの分配を終えた一行は、すぐ横にある階段を降り地下6階へ進む。降りた先では、パーティが居るフロアから先いは床が無くぽっかりと底へ暗闇が広がっており、目の前も遥か先まで吸い込まれるように真っ暗で何も見えなかった。


「……これ進めない」


アリスが状況を短く、そして明確に述べる。皆、一様にうなずく……。


「こ……これ、どうするんですか?」


「床が……無い。どれくらい先まで無いんだろう?」


「いや、どうにかして進む方法がある筈だ。その辺の壁にスイッチみたいなのは無いか?」


ジンベイに言われ、ソーマたちは一斉に壁を調べ始める。しかしそれらしいスイッチや、魔法的なギミックは見当たらなかった。レイジが隠れた魔法反応を探し当てる「看破魔法(ディテクトマジック)」を使用しても反応が無い。


「どうにかして床を作らないと先へは進めないな……」


「でもどうやって……」


「とりあえず何かやってみる……」


アリスがヒーラーでも使える攻撃魔法「セイントフレア」を目の前の暗闇に向かって放つ──

アリスの手のひらから出現した青白い光の弾は、そのままフロアを直進するがすぐに暗闇に飲み込まれ消えていった。


「ダメか……」


ジンベイが落胆した声を発した瞬間、ボッボッボ……という音と共に、通路の両脇にずらっと架かっていた松明の先から一斉に炎が上り通路を照らす。そのため地下6階全体が一気に明るくなった。すると4フロアほど先の天井に何か突き出たものがあるのにリーサが気付いた。


「わぁ、一気に明るくなりましたね!」


「魔法に反応する仕掛けになってたのか……」


「天井に何かあるです!」


リーサがその物体を指さす。指さした方向には、天井から頭を下にしてぶら下がるコウモリを象ったような像が見える。おそらくこれが何らかのギミックを発動するスイッチになっているに違いない。


「ヒーラーのお嬢さんたち、あれに魔法を当てれるか?」


「ダメ……届かない……」


「まぁまぁ、ここはオレの出番でしょ」


そういって後ろから他のメンバーをかき分けレイジが出てきた。そのまま弓に矢を番え像を狙う。レンジャーの強みは射程の長さにある。ブレオンではスキルにそれぞれ最大射程が設定されており、レンジャーのスキルには、キャスタークラスが使う魔法のゆうに二倍ほどの射程が設定されているものがあった。


レイジは十分に狙いを定めると、レンジャーのスキルにおいて最大射程を誇る「レンジペネトレイター」を放った。


バヒュゥウウ──


轟音を轟かせ、放たれた矢が風と共に目標へ向かって一直線に進む。レイジの「よし」という声と共に、その矢は見事天井にある像に当たり像を粉砕した。すると──


ゴン…ゴゴゴゴゴゴ──


轟音と共に、先ほど何もなかった部分に石畳がせり出し足場となる床が現れた。


「やったー!」


「なーるほど、こういう仕掛けだったのか……よくやったぜレイジ!」


ミクが飛びあがって喜び、ジンベイはレイジの肩を叩き(ねぎら)う。


「でも、レンジャーがいないとこのトラップは解除できませんでしたね」


「おそらく突入時のパーティ編成をサーチしてその後のトラップが組まれている……らしい、あくまでもプレイヤーの推察だがな」


その後はトラップもなく順調に階を進み、とうとう地下9階から下へ降りる階段があるフロアまで到達した。


「よし、下への階段があるな。おそらく次の階で最後かもしれん。みんな、注意して進もう」


ジンベイの言葉に全員がうなずく……。ソーマたちはついに地下10階まで到達することに成功した。地下9階の階段を下りたその先は今までのダンジョンの造りと全く違っており、太い石の柱が何本も壁に埋め込まれた広い部屋の真ん中に円形の石でできた台座があり、その台座の上には宝箱らしきものが置かれていた。降りた途端にマップも全フロアが開示される。


「お、地下10階はこのフロアだけだ」


「しめた、当たりだぞ。部屋の真ん中に箱が見えるだろう、あれが目当てのレアアイテムが入ってる箱だ」


「部屋にも宝箱にもトラップが仕掛けられてるだろうから慎重にな」


ジンベイは全員に注意するよう念押しする。全員が一歩一歩、トラップが発動した際にすぐに対応できるように慎重に台座へ向かってゆく。しかし……、何事もなく部屋の中央にある台座へ到達した一行は拍子抜けする。


「あれ……何もない?」


「普通、こういうのってボスモンスターとか出てくるんじゃねぇの?」


「とにかく、宝箱を開けてみるぞ……」


ジンベイがトレハンスキルで解錠し、そのまま宝箱を開く──


◆アジャイの宝珠×1……装備強化素材。皇帝アジャイが神官庁に作らせた宝珠。いまだ高い魔力が秘められている


見事にジンベイの目当てのレアアイテムがドロップした。


「よしよし!こいつが欲しかったんだ」


ジンベイは宝箱からテニスボール程もある、赤い翡翠のようなものをとり出しアイテムボックスへ仕舞う。


「あそこから地上へ戻れる、みんなお疲れ!助かったぜ」


台座の先の石畳に魔法陣が描かれていた。地上への出口となる魔法陣の上へ全員が乗る、すると魔法陣から青白い光の筋が出て全員が一気に転移された。


「地上へ戻ってきた……?」


魔法陣から転移した先は、エーテルダンジョンへの扉があった場所だった。ソーマたち一行はいっきに明るい場所へ出た為、目を開けられずにいた。手で太陽の光をさえぎつつゆっくりと目を開ける。


「それって何に使うんです?」


ソーマが先ほど手に入れた「アジャイの宝珠」の使い道について聞く。ジンベイはアジャイの宝珠を空にかざしながら


「次のバージョンアップで実装される新しい生産レシピに使うと踏んでんだ。これひとつを割れば10人分の装備素材になる。それがおまえらの装備更新に使えるって寸法よ……俺の予想が当たってりゃの話だがな!ハハハ」


「おっさんにはいつも世話になるね」


「とにかく一旦ラーファムに戻りましょう!」


「……賛成」


「楽しかったですね!」


無事レアアイテムを手に入れた一行は、ギルドハウスのあるラーファムへ戻る事にした。


──ブレオンの外、リアル空間──


高層ビルが立ち並ぶ都市の一角にあるビル、その上層階にある事務所、備えつけられたソファへ座りノートPCで作業している男性と、その後ろでティーサーバーから紅茶を注ぐ女性がいた。女性はカップをソファの前にあるテーブルへ置くと、女性は男性の肩に手を置き、男性の頬に自身の顔を近づけながら呟く……。


「ねぇ、もしかして……ソーマ君にザイドの代わりやらせようとしてる?」


「さぁ、それはどうかな……」


紅茶をすすりながら男性は、女性の意図を察してか答えをはぐらかす。


「わるいひと……んぅ……」


女性が言い終わる前に男性が自身の口で女性の口を塞いだ──

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