↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/183

戦いの後 4

 一年前。聖神討伐後、しばらくして。

 異世界人全員を集めて話し合うことにした。

 聖神がいなくなり、異世界人の中でも、死んでいた日々と現実との記憶の齟齬などの問題があったし、情報の共有は必要だと考えたからだ。

 それに『転移が可能であること』を伝えるためだ。

 俺は聖神との戦いで、創造の力を一時的に得て、想像の力の本質に気づいた。

 想像は俺の、俺自身の力。

 転移は俺の手によるものだと、気づいたのだ。

 創造に触れることで、想像を知った。

 創造の残滓により、俺の意思で転移が可能だと直感したのだ。

 曖昧な言葉と確信だった。

 互いに思うところはあるに決まっている。

 異世界人は、沼田以外は生存している。

 俺が殺した長府も生き返っていたのだ。

 だが、長府はもちろん、江古田沙理、小倉凛奈も俺に対して悪感情を抱いているだろう。

 そう思っていた。

 彼らに再び会うまでは。

 俺は、聖神との戦いで、聖神の身体から吸収された人達を救い出した。

 各国の統治者に加え、江古田や小倉もだ。

 その時、各国の将軍に助けを請い、なぜか快諾してくれたことも記憶に新しい。


 問題はその後。

 一先ず、目を覚ました金山、江古田と小倉に事情を説明した。

 小倉は比較的冷静だったが、江古田は俺に敵意をむき出しにしていた。

 長府を殺した時、江古田の激昂ぶりは凄まじかった。

 それほどに愛情を感じていたのだろう。

 この時、まだ俺達は長府が生き返ったことを知らない。

 そして、俺も転移の力が俺のものなのだと気づいてはいなかった。

 説明後、金山や小倉と江古田はオーガスへと帰っていった。

 正直、金山との接点はほぼなかったが、トッテルミシュアに帰ると言っていたので、他国に世話になっていたようだった。

 その後、長府が生きているという知らせを小倉から受けた。

 その時には、俺は転移の力があること、恐らくは一度しか使えないほどの力を消耗することに気づいていた。

 最初の転移は偶発的なものか、最初の力の開放により、通常よりも強大な力が扱えたのか、理由はわからないが、安易に使えるものではないと気づいていた。

 一度だけの転移なのだ。

 長府の蘇生を知り、丁度いい時期だと考えた俺は、異世界人達に連絡した。

 今でも覚えている。

 長府と再会した時の場面を。

 俺の敵だった男。殺した男が悠々自適に歩いている姿を見て、奇妙な感覚に陥った。

 俺を殺した人間は、こんな風な感情を抱いていたのだろうか。

 長府と視線が合うと、警戒してしまった、俺は顔をしかめた。

 そして。


「おまえが日下部虎次か?」

 と聞かれたのだ。


 まるで初めて会ったかのように。


「彼は記憶を失っているわ。この世界に転移して間もないくらいまで」


 小倉が俺に耳打ちした言葉は衝撃的なものだった。

 死ぬ前どころか、転移したばかりまで記憶が遡っている。

 どうやら蘇生の反動ではなく、バッドステータスによるものらしかった。



●バッドステータス

 ・記憶の憧憬

   …ランダムで記憶が失われる。どの記憶が失われるかはわからない。

    ただし、スキルの使用を抑えればその頻度は減らせることができる。



 長府のステータスにはこう記載してあった。

 死の段階で、より顕著に効果が出てしまったのだろうか。

 綺麗に記憶がなくなってしまっているらしかった。

 長府は小倉のことしか覚えていない。

 江古田のことは忘れてしまったらしかった。

 隣で江古田が悲しげに目を伏せていた姿が印象深かった。

 沼田以外の異世界人が集結し、話し合いを始めた。

 俺は、転移が俺の力であったと話し、日本へ帰すことができるかもしれないと告げた。

 全員が半信半疑だったが、俺を糾弾する声はなかった。

 誰もが、別の世界に行きたいと心の底で思っていたから、らしかった。

 明確に理解していたことにも驚いたが、あまりに淡泊な反応にも肩透かしを食らった。

 もっと罵詈雑言を浴びせられるかと思ったからだ。

 話を終えた後、帰還を希望したのは結城さん、朱夏、金山、剣崎さんの四人。

 他の、俺を含めた五人は残留を決意したのだ。

 日時を決め、それまでに出立の準備を整えるように言うと、全員が帰路に就いた。

 俺は長府の考えがわからなかった。

 知ろうともしなかったが。

 敵対し、一方的に敵意を持って、殺した。

 後悔はないが、ふと疑問に思ったのだ。

 長府は何がしたかったのだろうか、と。


「なあ」


 気づけば、去ろうとする長府に声をかけていた。


「あ?」

「おまえは、日本に未練はないのか?」

「未練? あるわけねぇだろ、あんな場所」


 俺が言うのもなんだが、日本は裕福で平和。物に溢れて、利便性に富んでいる。

 娯楽も多く、生きるための選択肢も多い。

 だがそれは先人が築き上げた恩恵であって、俺達が作り上げたものではない。

 それはある意味、過去の人間が真っ白な場所を踏みしだき、無数の足跡を造っているようなもの。

 無知は恐怖の要因にもなるが、同時に未来への希望でもある。

 知らないことと、知ること、それぞれに長所と短所があるのだから。

 中世時代のような貧困な世界であるグリュシュナに比べると、現代の方が幸福でいられるのかもしれない。

 しかし、俺達は異世界に残ることを決めた。

 俺には責任があるし、何よりこの世界が、みんなが好きだ。

 だから、残ることを決めたのだ。

 だが、長府は?

 なぜ残るのだろうか。


「何でもあるってことは自由がねぇ。つまらねぇんだよ、あそこは。

 牢獄だ。あんな窮屈で、がんじがらめの世界なんかごめんだ」

「……じゃあ、おまえはこの世界で何がしたいんだ?」

「何が? そんなの決まってるだろ。好きに生きる、それだけだ」


 好きに生きる、か。

 どんな世界での状況でも自由意思はある。そういう人間もいるだろう。

 だが、実際、過去に決められた何かから逸脱することは、困難な場合もある。

 安全な道を知った人間は、それ以外の場所を歩くと言う選択を避ける傾向にあるからだ。

 物は溢れ、便利だが、何か見えないものに縛られる現代。

 物はなく、不便だが、だからこそ自由な部分が多い異世界。

 どちらがいいのかは本人次第、なのだろう。

 俺は勝手に納得し、それ以上、問いかけることはなかった。

 長府も、もう話すことはないとばかりに俺に背中を向け、そして手を上げた。


「あ、ま、待ってよ和也君!」


 江古田が長府を追う中、小倉はその場に立ち止ったままだった。

 何を考えているのかわからないのは、長府よりも小倉だ。

 彼女は長府に好意を寄せているのかと思っていた。

 だが、どこか冷めており、興味がないようにも見える。


「あんたも日本に帰らないのか?」

「ええ、帰らないわよ」

「……長府が帰らないからか?」

「そうね」


 やはり、恋愛感情があるのだろうか。

 他人の事情に首を突っ込む気はないが、少し、いやかなり接点があった相手のことだ。

 多少は気になっていた。

 俺の顔を見て、小倉は歪んだ笑みを浮かべる。


「別に好きなわけじゃないわ。幼馴染なのも偶然で、好んでじゃない。

 和也はそう思っていないでしょうけど。彼、自分に自信があるから」

「……じゃあ、なんで?」

「面白いから、かしら。あいつ、いつも何かに巻き込まれるのよね。

 自信家だから自分から首を突っ込むし、偉そうにしてる。

 そんな奴が、失敗するところを見ると楽しくてしょうがないのよ。

 滑稽で、面白くてたまらないの。わかる?」

「わからないな」


 そのためだけに、自分を犠牲にするものだろうか。

 そのためだけに、異世界に残り、共に過ごすだろうか。


「わたしは楽しいことが好き。それだけよ。だって刺激のない生活なんてつまらないもの。

 あっちに戻れば、刺激が少ない日々に戻る。

 日常から出て、刺激を求めても、他人の手垢がついた場所か、理不尽で一方的な場所しかない。それも、搾取されるのはこちら側。

 だったらここに残った方が楽しいじゃない?」

「もしそれが事実なら別に長府について行かなくてもいいだろ。

 自分の意思でついて行っているんだから、あんたは長府のことを気に入ってるんじゃないのか?」


 小倉は驚いたように、目を開いた。

 そのままの表情を保っていたが、やがて小さく笑う。


「ふふ、そうかもしれないわね」


 そう言って、長府達の後を追っていった。

 これは直感だが、恐らく、もう彼等と会うことはないだろう。

 目的も、生きる道も違う。

 本来ならば交差することがない人生が、一時的に重なっただけだ。

 それが長府達との最後の時間だった。


   ●□●□


 ――というところで目が覚めた。


「はっ!?」


 俺の視界には地面が広がっている。

 どうやら意識を失っていた、いや、走馬灯を見ていたらしい。

 一時的に記憶が飛んで、昔の映像が浮かんだようだった。

 どういうことだ、俺はババ様と別れて、街中を歩いていたはずだ。

 それがなぜ、転んでいる?

 俺はガバッと上体を起こした。

 すると、そこには。


「王様あああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!」

「くひひ、いいよぉ、すごい、いいよぉ。王様の脛、スネ、すんごい、硬そうでいいよぉ」

「みぃつぅけぇたぁよぉっ! 王様ぁっ!」

「ひいいぃっ!?」


 俺は思わず悲鳴を上げた。

 俺の脛を折らんがために、ローキック技術に磨きをかけている少年と少女が、俺を見降ろしていたのだ。

 短髪の少年は嬉しそうに顔を歪めて、ローキックの素振りをしている。

 やや長めの髪で童顔な少年は、狂ったようにキヒキヒと笑いながら、じりじりと俺に迫っている。視線は俺の脛に固定されていた。目はイッてる。

 唯一まともそうな少女。肩まで伸ばした髪を部分的に結っている。可愛い部類の顔立ちだが、目が笑っていない。

 ついに現れてしまった。


 奴等は。


 ローキッカーズ!


 略してローキッズ!


 あんまり短くなっていない!

 毎回毎回遭遇する度に、俺の脛を狙う奴らだ。

 恐ろしい。

 何が恐ろしいって意味がわからないから恐ろしい。

 考えて欲しい。考えなくてもわかるだろうけど。

 普通さ、他人の脛、折ろうとする?

 蹴る?

 硬いからって喜ぶ?

 意味わからないよね?

 変態だよぉ。俺とは違う方向への変人共だよぉ。

 あ、違うか。俺はまともだな。たまに変態とか言われるから勘違いしちゃった。

 それはいいとして。

 ものすごく嬉しそうにしながら俺に近づいてくるローキッズ。

 どうやら歩いている時に、脛を全力で蹴られたらしい。

 そして転倒し、一瞬だけ気を失って、走馬灯を見ていた、と。

 おかげで、脛がヒリヒリしている。

 なんて奴らだ。

 末恐ろしい。彼等がハイアス和国の未来を支える子供なのだ。

 この国、大丈夫なのだろうか。

 俺はゆっくりと立ち上がった。


 俺は王。


 この国を導き、民を幸せする義務がある。

 ならば逃げてはいけない。

 俺はズボンの裾を上げた。


「何を!?」


 警戒している短髪キッズ。

 だが安心しろ。俺は王。子供に手を出すつもりはない。

 俺は両足の脛を見せつけ、そして姿勢を低くした。


「いつでも、来い」

「な、なにぃ!? まさか、ここに来て、受けて立つとばかりに脛を見せつけるだって!?」


 童顔キッズが演技がかった口調で説明した。

 だが俺に動揺はない。

 さあ、いつでもこい。俺は逃げも脛を隠しもしない。

 全力で露出する!


「いいだろう、王様。その心意気買ったあああああっ!」


 短髪少年がよくわからない台詞と共に地を蹴った。

 ちなみに彼等の年齢は、莉依ちゃんよりも少し上程度である。

 以前よりも成長した体躯から放たれた鋭い蹴りが、俺の脛に突き刺さる。

 体重が乗った一撃。

 ギギィッ! と気味の悪い音を生み出しながら、俺達の脛は交錯する。


「くっ! 硬い!」


 短髪少年は痛みに顔を顰めて身を引いた。

 これでも俺は手加減している。相手の足を折らないようにな。


「ヒ、ヒヒッ、王様の脛ぇ、折っちゃうよ? 折っちゃうからね? 

 ポキポキ、ポッキ。ポキェェェェェェェェェイィイィィッ!」


 奇声と共に疾走した童顔少年は獣じみた動きで、下段回し蹴りを放つ。

 短髪少年よりは体重が軽いが、身のこなしは上。

 素晴らしい体さばきから生み出された半月の蹴りが、俺の脛へ吸い込まれる。

 が。


「ギアアアアッ!」


 童顔少年、轟沈。

 痛みにもんどりを打ちながら、下がっていった。


「次はあたしの番だね!」


 タンタンと警戒にジャンプする少女。

 褐色の肌が、健康的で中々に魅力的だ。

 太腿が露出するほどに短いズボン、ショートパンツを履いているので、色々と丸見えだ。


「ふふ、いつも王様には負かされているけど、ずっと鍛えてきたんだからね!

 今度こそ参ったって言わせるんだから! この鍛え上げた足でね!」


 スッと伸ばした足は、言葉通りに引き締まっている。

 だが、女の子独特の丸みがあり、健康的と煽情的との間の主張をしている。

 ふむ。

 これは、いかんね。

 けしからんね。

 俺は思わず、じっと足を見つめた。

 中々にいい、いやかなりいい。

 おいおい、落ち着け、俺は莉依ちゃん一筋だ。

 だが、待て。これは単に感情とは別の何かだ。

 好きな人がいるからって、その人だけにしか欲情しないって男が存在するだろうか。

 いやいない。

 それとこれとは話が別。

 本能だから。

 根源的欲求だから。

 それを抑えろとか、生物学的に無理だから。

 勘違いしないで欲しい。

 浮気は男の甲斐性とか、外道的な考えを推奨しているわけじゃないから。

 あくまで感情、心、思い、そういうこと。

 つい見てしまう。ついムラムラしてしまう。

 それくらいは男なら当然だし許してよね、ということだ。

 だから、見るだけならいいよね?

 いいと思う。

 いいに決まってる!

 だから見る!


「あ、あれ? なんかすごい見られてる?」

「綺麗な足だな」


 思わずつぶやいた言葉を受け、少女は一瞬で顔を赤くした。


「へ? ちょ、ちょっと! な、なな、何言って」

「だけど、女の子が、そんな風に足を見せるのはよくないな。

 そういうのは好きな人にだけ見せるようにした方がいいぞ」


 俺は少女の足を凝視しながら言った。

 説得力は皆無だ。

 しかし言葉は伝えるからこそ意味があるのだ。

 俺の心情と俺の行動は別物だ。

 大事なのは心。そうだろう?

 俺はかなり間違った解釈を少女にぶつけた。

 いや、ある意味正しいが。

 だが、少女はなぜか、過剰なほどに動揺し始めた。


「あ、あたしは……その、王様となら……い、いいよ」

「ちょっと! ミーちゃん、王様のこと好きだったの!?」


 短髪の少年が泣きそうな顔で、少女、ミーちゃんを詰問する。


「え? そ、そそ、そんなこと言ってないしっ!」

「う、うそだ! 明らかに好きでしょ!? おかしいと思ったんだ。

 いつも王様を見つけると真っ先に走っていっちゃうし!

 王様の脛って、綺麗な脛だよね、とか言うし!

 なにかにつけて、王様の話ばかりだし!

 でもだめだよ! 王様には莉依様がいるんだから!」

「うっ! で、でも王様ならお嫁さん一杯いてもいいんだもん!

 あたしは二番目でも、三番目でも大丈夫だもん!」


 おい、おい! 子供が二番目とか、三番目とか言うな!

 ん? あ、でも莉依ちゃんよりも年上なのか。

 あれ? なんだ? 何かがおかしいな。

 ま、いっか!

 とにかくここにいると危険だ。色んな意味で。

 俺は言い争う二人を無視して、気配を消しながらそそくさと移動した。

 奴らは言い争いに夢中だ。

 童顔少年はまだ痛いのか、地面をゴロゴロ転がっている。

 今なら、逃げられる!

 ローキッズ、さらばだ。

 と、俺が胸中で呟いた時。


『……け…………い』


 また声が聞こえた。

 今度は、以前よりも僅かに明瞭だった。


「何だ……?」


 周りには誰もいない。

 裏路地を通っていたため、人気はなかった。

 遠くから聞こえたのではない。

 近くで。あるいは頭の中で響くような。

 勘違いではないと思う。

 俺は耳を澄まして、再び聞こえないか試してみた。

 だが聞こえない。

 幻聴? 疲れているからか?

 違う。

 理由はわからないが、違うということはわかる。

 何かがある。

 だがその何かは何なのかわからない。

 しばらく立ち止まっていたが、二度と聞こえることはなかった。

 俺は仕方なく歩を進める。

 そして。


「……痛いな」


 脛が痛んでいることに気づいた。

 彼等の脚力が上がっている、という理由もあるだろう。

 だが、俺のステータスは普通の人間では到底及ばない域に到達していた。

 いた、のだ。

 今は……違う。



・名前:日下部虎次

・称号:ハイアス和国の王


・LV:999

・HP:99,999/99,999

・MP:0/0

・ST:99,999/99,999

・SP:*500/*500


・STR:6,666

・VIT:6,666

・DEX:6,666

・AGI:6,666

・MND:6,666

・INT:6,666

・LUC:666


●アクティブスキル

 ・アナライズ

   …対象のステータスが見える。

 ・リスポーンセーブ

   …リスポーン地点を新たに記憶させる。


●パッシブスキル 

 ・リスポーン 

   …戦闘不能に陥った際に、記憶地点に新たに出現する。

    五百の命がある。それを超えると真の死が訪れる。新たにSPで表示される。

 ・セーブ追加

   …リスポーン地点の設定をどこでも可能になる。


●バッドステータス

 ・契約の大鎖

   …契約の鎖によって、幽界に留まることもできる。ただし効果は一度だけ。

    この鎖を用いてしまった人間は、死後、必ず地獄へ堕ちる。

 ・殺人の衝動

   …初めて人を殺した者の証。殺しに対して抵抗感が薄れてしまう。

 ・冥府の呪手

    …幽界を彷徨い現世に戻りし異質な存在の証。

     死を恐れず、死に魅入られたゆえに、冥府の王に気に入られてしまう。

 ・不幸の連鎖

    …様々な不幸を抱えた者の証。神でさえこれほどの苦難は知らない。



 普通の人間よりもやや、強い程度のステータスだ。

 カンストはしていないが、鍛えても魔物を倒しても上がらなくなってしまった。

 まるで何かに阻まれているように。

 だがもう戦いは終わったのだ。

 この世界は平和になった。

 だから、強さは必要ない。

 脛を鍛えるくらいは必要だ。痛いからな。

 しかし、不気味ではある。

 能力の停滞、ババ様の占い、そして不可思議な声。

 これらの変化はすべて偶然なんだろうか。

 もしかしたらまた……。

 俺は苦笑した。

 考え過ぎか。

 能力に関しては様々な理由が考えられるし、理由自体ないのかもしれない。

 そもそも、俺の能力に関して、具体的な特性はわかっていないのだ。

 それにババ様の占いは的中率六割だし、以前の占いもよくわからないというものだった。

 不可思議な声は、聞こえているのかどうかも曖昧だ。

 ずっと戦いが続いて気の休まる暇がなかった。

 だからか余計に気を張ってしまっているのだろう。

 何もない内から穿った見方をしていては、きりがない。

 とにかくそろそろ帰るか。

 ハミルが怖いし。今さら遅いだろうけど。

 気は進まないが、仕方ない。

 俺は重い足を引きずり、総合事務局へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同時連載中。下のタイトルをクリックで作品ページに飛べます。
『マジック・メイカー -異世界魔法の作り方-』

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。