3話
前方を歩いていた彼に追いつき、少し息を整えてから声をかけた。
「ねぇ、聞きたいことがあるの!」
突然のセレフィアの声に彼はビクッと体を固まらせてからセレフィアを見て言った。
「昨日の人?」
覚えていてくれていたなら話が早いと思い、切り出そうとした時昼休みの終わりを告げる鐘が鳴った。
セレフィアがどうしようと慌てていると彼が言った。
「今日もあの湖に行くから。」
セレフィアは大きく頷き、急いで自分の教室へと向かった。
自分の席に座ったセレフィアはリュートが浮かない顔をしていたことを思い出していた。
いつからリュートは浮かない顔をしていたっけ?
あ、あの時だ。
私が、「だから星を見に来てたんだ」って言ったとき!
でもどうしてリュートが浮かない顔をしていたんだろう?など、セレフィアが思案していると微かに声が聞こえた気がした
「…さん、…ルネアさん、セレフィア・ルネア!」
大きな声に驚いて我に返ったセレフィアは、教壇に立つ数学の教師と目が合った。
「授業中に何か考え事ですか?」
教師の言葉とクラスメイトからの視線に、セレフィアは顔を赤くした。
「…すみませんでした。」
セレフィアの謝罪を聞き入れた教師は落ち着いた声でセレフィアにこの問題を解くようにと告げた。
クラスメイトの視線が刺さる中、黒板へと向かいスラスラと回答を書いていくセレフィアに、驚きと呆れの混じった表情をしていた。
「やはり君の聡明さには感心してしまうな、だがそれなら尚更ちゃんと授業を聞きなさい、学びはいつか君の力になる。」
そう告げるとセレフィアを席に戻し授業を続けた。
セレフィアもその後は集中して授業を受けようと思っていたが、リュートのことや、銀髪の彼との約束を思い出すと一刻も早く家に帰りたいという気持ちで頭がいっぱいだった。
残り五分が長く感じる。
…カチッとなる時計の針とともに授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
その音が聞こえるとセレフィアは急いで荷物をまとめ、教師に帰りの挨拶をして、教室を飛び出した。
まずはリュートと話さなきゃ。そう思ったセレフィアは隣のクラスを覗いたがリュートがいない。
「リュートはどこに行ったか知ってますか?」
授業が終わってすぐなのにどうしてだろうと思ったセレフィアは近くにいた女子生徒に声をかけた。
「リュート君なら授業が終わってから血相変えてどこかに走っていきましたけど……」
すれ違ってしまったのかなと思いながらセレフィアは
「そうなんですね、ありがとうございました」と軽く会釈をしてから昇降口へと向かった。
何か大切な用事でもあったのだろうとあまり気にせず、そのまま帰宅した。
「ただいまー!」
そういって自室へ向かい、荷物を置いてから洗面所へ向かい手洗いうがいを済ませると私服に着替えてソファに腰を掛ける。
その時、何時に来るのかを聞いていなかったことを思い出した。
「どうしよう……」
セレフィアは窓の外を覗いてみたが、彼の姿はまだなかった。
外で話すなら暖かい飲み物を淹れておこうかな。
そう思いセレフィアはキッチンへと向かい暖かいお茶を作り、保温性のある水筒に移し準備した。
今は16時30分だから30分後くらいにもう一度確認しよう。
彼がまだ来ていなかったことに少し安心したセレフィアはソファに戻り読書を始めた。
「はぁ、面白かったー。」
そう言って本を閉じたセレフィアは時計に目を向けた。
時計の針は18時5分を指している。
大慌てで窓の外を見ると銀髪の彼が湖のそばで空を見上げていた。
それを見たセレフィアは急いで家を飛び出し彼のもとへ走っていき声をかける。
「ごめん、待たせちゃった?寒くない?本当にごめんね」
そう捲し立てるセレフィアに彼は思わず吹き出した。
「っふふ、君いつも慌ててるね。」
少し恥ずかしいのと、罪悪感でセレフィアは愛想笑いを返すしかなかった。
「待ってないよ、さっき来たところ。」
彼の言葉を聞いてセレフィアは少し安心して何かを思い出したかのような表情を浮かべた。
「そうだ、少しだけ待ってて暖かい飲み物を淹れておいたの。」
そういってセレフィアは部屋に置いていた水筒とマグカップ、そしてブランケットを二枚持って再び彼のもとへ戻った。
「これ使って、外は冷えるから。」
とブランケットを先に渡すと、その間に用意したマグカップにお茶を注ぎ彼に差し出した。
「ありがとう。」
彼はそう言って受け取ると、一口飲んでセレフィアが座るのを待ってから口を開いた。
「僕に聞きたいことがあるんだよね?」




