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あのスタバの死神の姪が、おじさんのヨレヨレのコートを羽織って二代目探偵になる  作者: ルツ


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金山(カナヤマ)パラソル・ランブル

「各班、地下通路にマル被(容疑者)とターゲットを確認! 直ちに包囲を縮小せよ!」 

インカムから漏れ聞こえる掃除屋たちの乾いた報告の声と同時に、金山総合駅の北口ロータリーから地下へと繋がる階段から、黒い雨傘を差したスーツ姿の男たちが次々と姿を現した。

その数は十数名。

全員が衣服の下に重厚な火器の感触を隠し、一般客の悲鳴を置き去りにして、容赦のない殺意の網を縮めようとしていた。 

地下通路の壁際、車椅子に座るひなみちゃんを守るようにして、千影ちかげが特殊警棒を構え、その切れ長の目を冷酷な光でギラつかせる。

「左神の二代目。……妹の車椅子の半径一メートルには、一歩も近寄らせるな」

「分かっているよ、千影さん。……メイリン、地上のハッチは閉めた?」

「閉めるどころか、スタバの備品が最高の武器になるアルネ、凛!」 

私のすぐ横で、お団子頭シニヨンを激しく揺らしたメイリンが、不敵な野生児の笑みを浮かべて前に躍り出た。 

彼女はチャイニーズ・マフィアのボスの娘でありながら、「絶対に殺しと破壊はしない」という誇り高い不殺の信条ポリシーを胸に抱いている。

だからこそ、彼女が目をつけたのは、金山駅南口店のテラス席の片隅に設置されていた、夜間の雨で閉じられていた『鉄製の超大型パラソル(日よけ傘)』の頑丈な支柱だった。

コンクリートの土台にがっしりと固定された、重量数十キロはある鉄と防水布の塊。

それを、メイリンは怪力で根元から一気に引き抜いてみせた。

「野郎ども! 金山のサードプレイスで大暴れする罰当たりどもは、わたしがまとめてお掃除してあげるアルネ――ッ!!」 

ブンッ! 

という、地下通路のコンクリート壁を激しく震わせるような、破天荒な大気の破裂音。 

メイリンが素手で槍のように豪快にブン回した巨大なパラソルの鉄骨が、階段を駆け下りてこようとした掃除屋たちの先頭二人の胴体を正面から強烈に薙ぎ払った。

「ごふっ!?」

「な、何だこの生ぬるい風はぁ!」 

衝撃で男たちの身体は階段の金属製の手すりへと激しく叩きつけられ、そのまま一撃で戦闘不能に陥る。 

この一瞬の、大乱闘が巻き起こした視界の空白。 

それを、最強の猟犬である千影が見逃すはずがなかった。彼は左手でひなみちゃんの車椅子の背もたれを完璧にホールドして男たちの射線から隠しながら、右手一本の特殊警棒を剃刀のような速度で突き出した。

 キィン、キィンと高い金属音が響き、回り込もうとした掃除屋二人の手首の関節を、目にも留まらぬ速度の打突で冷徹に叩き折る。

一切の無駄のない、妹を守るためだけに研ぎ澄まされた完璧な武力だった。

「残りは、あと三人……!」 

私はおじさんの大きなトレンチコートの裾を雨風に激しく翻し、コンクリートの床を強く蹴り上げた。 

リーダー格の男が、千影の隙を突いて懐から銃口をひなみちゃんへと向けようとした、まさにその刹那だった。 ――チェストォォォッ!! 

私はおじさんのコートの重みすらも落下重力へと変換し、地下通路の柱の陰から男の顔面に向けて、電光石火の上段突き(正拳突き)を叩き込んだ。

フルコンタクト空手の修行で骨の髄まで鍛え上げた、身体の軸をミリ単位でもぶらさない完璧な一撃。 

バキィィィン! 

という激しい肉体の激突音が地下通路に木霊し、男の巨体は放り投げられた泥人形のように、通路の隅に置かれていた大型の自動販売機の側面へと、派手な音を立てて逆さまに突き刺さった。

一撃での失神。男の持つインカムが床を転がり、排水溝へと静かに落ちていく。

「……ふぅ。やっぱり、このコートで拳を引くのは、ちょっと袖が引っかかるな」 

私は乱れた息を整えながら、大きすぎるトレンチコートの袖をきつく捲り上げた。 

周囲を見渡すと、メイリンがブン回したパラソルの前で、残された掃除屋たちは完全に戦意を喪失し、這うようにして地上へと逃げ出し始めていた。 


朝七時に更新されるシーズン1(おじさん編)で「おじさんが千影のために上海で命を賭けた過去」のパズルが、夕方更新のこのシーズン2で、私と千影、そしてメイリンの三人が並び立つ『最強のトリプル・バディ』の圧倒的な現行犯制圧のカタルシスとなって、金山駅の地下で完璧に炸裂した瞬間だった。


「お兄ちゃん、お姉さんたち、すっごく格好いいネ」 車椅子のひなみちゃんが、お兄さんのコートの裾を握り締めながら、私に向けて本当に優しくて、温かい微笑みを浮かべてみせた。

その瞳には、おじさんが命がけで繋いでくれた日常サードプレイスの輝きが、確かに宿っていた。

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