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21 雷と雨と風と

 町の上空は厚い雨雲に覆われ、雲の中では稲光と雷鳴が断続的に発生していた。

 雷に包まれて地上十メートルで滞空する雷駕(らいか)は、稲光のような強烈な光を放つ瞳で十メートル先の(のろ)いの淚尽(ナツ)を睨んでいた。(のろ)いの淚尽(ナツ)の左腕は赤と黒のまだらの炎でできたドラゴンに変わっており、空中をうねって雷駕(らいか)を狙うかのように顔を向けていた。


 左腕を失い、全身が穴だらけになって地面に転がるコアちゃんの隣から声が聞こえた。

「コアちゃん、大丈夫かーっ?」

 コアちゃんが顔を上げると、目の前には宙に浮かぶまふゆの魂がおり、心配そうにコアちゃんの顔を覗き込んでいた。

「まふゆ! お、お前……、もしかして……」

 まふゆは寂しそうな表情を浮かべると、後方に転がる自分の体を指差した。

「そう……。あたしの体はあそこで死んでる」

 コアちゃんはハッとして上体を起こすと、周囲を見渡した。

「あいつは? (のろ)いの淚尽(ナツ)はどうなった? な、何っ?」

 コアちゃんは、(のろ)いの淚尽(ナツ)と向かい合って宙に浮かぶ雷駕(らいか)を目にして驚愕した。

「あ……、あれは……、あれは……來華……なのか……?」


 (のろ)いの淚尽(ナツ)の左腕のドラゴンが赤と黒の炎の柱を雷駕(らいか)に放射し、それと同時に(のろ)いの淚尽(ナツ)雷駕(らいか)の左側面に回り込みながら、右手に闇と(のろ)いの槍を出現させた。(らい)()(のろ)いの淚尽(ナツ)の動きに反応せず、正面を向いたまま微動だにしなかった。

 赤と黒の炎の柱と、(のろ)いの淚尽(ナツ)が放った闇と(のろ)いの槍が雷駕(らいか)に迫った。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 轟音を立てる激しい突風が、雷駕(らいか)から周囲に向かって放たれ、闇と(のろ)いの槍と炎の柱、(のろ)いの淚尽(ナツ)を数十メートル吹き飛ばした。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は空中を吹き飛んで地面を転がった後、飛び起きて五十メートル先の雷駕(らいか)を睨んだ。

「この魔物め!」

 その時、雷駕(らいか)が強烈な突風に乗って一瞬で(のろ)いの淚尽(ナツ)の目の前に移動し、雷で包まれた右足を(のろ)いの淚尽(ナツ)の顔面に叩き込んだ。

「ぐわあああああああああああああっ!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は雷に全身を包まれながら、叫び声を上げて吹き飛んでいった。

『あ、あの魔物、風に乗って移動しやがる!』

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は吹き飛びながら、左腕のドラゴンの口から、赤い光がまだらになって入り混じった闇の塊を次々と発射した。 

「魔物よ! 憤怒の咒弾(じゅだん)の連射で消え去るがいい!」

 雷駕(らいか)は両手からバレーボール大の雷玉を次々と放ち、憤怒の咒弾(じゅだん)を全て迎撃した。


 その時、雷駕(らいか)のすぐ後ろのアスファルトから半透明になった炎のドラゴンが飛び出して空中をうねり、頭の角を先頭にして雷駕(らいか)の背中に突進し、半透明の炎のドラゴンの頭部だけが燃え上がる赤と黒のまだらの炎に変わった。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は半透明になった炎の左腕を地面に突き刺し、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

『俺の左腕は咒靈力(じゅれいりょく)でできている。半物質状態になって、物や地面を通り抜けることができるんだ。そして、ドラゴンの頭部だけを実体化することもできる』

 炎のドラゴンの角は雷駕(らいか)を包む卵型の雷の塊に衝突すると、周囲に雷の欠片が飛び散った。ドラゴンの角は、雷の塊の抵抗で減速しながら雷駕(らいか)の背中に迫った。


雷駕(らいか)ーっ! 後ろだーっ! 逃げろーっ!」

 まふゆの魂が離れた場所から雷駕(らいか)に向かって叫び、その瞬間、雷駕(らいか)はハッとしてまふゆの魂に目を向けた。その時、ドラゴンの角の先端は今にも雷駕(らいか)に突き刺さろうとしていた。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 雷駕(らいか)から周囲に強烈な突風が放たれ、炎のドラゴンの頭部は強風で消える炎のように消滅した。

「炎のドラゴンの頭を吹き飛ばしただと?」

 驚愕した(のろ)いの淚尽(ナツ)は、地面から炎の腕を引っ込めると、地面から出てきた半透明の炎の腕はドラゴンの頭部を失っていた。

「まあいい。咒靈力(じゅれいりょく)でできているドラゴンは、何度でも再生できる」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)の半透明になっていた炎の腕が、赤と黒の炎で燃え上がり、その先端が膨らむとドラゴンの頭に変化した。


 雷駕(らいか)はまふゆの魂の前まで突風に乗って一瞬で移動すると、大粒の涙を流して悲しそうにまふゆの魂を見つめた。

「まふゆ……。お前、魂だけの姿に……」

 まふゆの魂は煌めく涙を一筋流しながら、悲しそうに微笑んだ。

「あたしのことは、時々思い出して、忘れないでいてくれたら……、それだけでいい……。それ以上、何も望まないよ……。それより雷駕(らいか)、あいつを絶対に止めて」

 まふゆの魂は全ての想いを込めて、雷駕(らいか)を力強く見つめた。


 雷駕(らいか)たちから離れた場所で、(のろ)いの淚尽(ナツ)が冷笑を浮かべて呟いた。

咒靈力(じゅれいりょく)(のろ)いの力。相手の身代わりになる物に咒靈力(じゅれいりょく)を送れば、どんなに離れていようと、相手を(のろ)うことができる」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は、ズボンのポケットからナツのスマートフォンを取り出すと、離れた場所に立つ雷駕(らいか)の姿を写真撮影した。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)の左腕の炎のドラゴンが、左手の爪を雷駕(らいか)の画像に向け、爪の先から光線のように闇を放出した。


「うぎゃあああああああああああああああああああっ!」

 雷駕(らいか)は突然苦しみながら絶叫し、口から血を吐き出した。

雷駕(らいか)!」

 まふゆの魂とコアちゃんは驚愕して叫んだ。


 (のろ)いの淚尽(ナツ)は残酷な笑みを浮かべながら、雷駕(らいか)の画像を見つめた。

「次は右脚だ。魔物め」

 炎のドラゴンの左手の爪から、雷駕(らいか)の画像の右大腿に闇の光線が発射された。


「ぎゃあああああああああああああああああああっ!」

 雷駕(らいか)の右大腿の横から血が噴き出し、 雷駕(らいか)は激痛で叫び声を上げた。

雷駕(らいか)ーっ! 何が起こってるーっ?」

 まふゆの魂とコアちゃんは理解できない状況に狼狽していた。


 (のろ)いの淚尽(ナツ)雷駕(らいか)の画像を見つめて言った。

「魔物よ。次は左腕だ」


「ぎゃあああああああああああああああああああっ!」

 雷駕(らいか)は左上腕から血を噴き出して絶叫した。


 (のろ)いの淚尽(ナツ)雷駕(らいか)の画像が映ったスマートフォンを手放し、地面に落とした。

「これで最後だ。魔物よ、バラバラになれ」

 炎のドラゴンの左掌から闇の光線が放たれ、雷駕(らいか)の画像が映ったスマートフォンを粉々にした。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああっ!」

 雷駕(らいか)の全身に無数の亀裂が走った。

雷駕(らいか)ーっ!」

 まふゆとコアちゃんは涙を浮かべて雷駕(らいか)の名を叫んだ。

 雷駕(らいか)は崩れるようにうつ伏せに倒れた。


 洞窟の底では、しろっぴーが天逆毎(あまのざこ)から白い光になった魔力を吸収しており、朱色に変わったしろっぴーは直径二十メートルまで巨大化していた。

「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!」

 天逆毎(あまのざこ)の体から白い光に包まれた天逆毎(あまのざこ)の魂が飛び出すと、悲鳴を上げてしろっぴーに吸収されていった。鏡太朗はその瞬間を直視できずに、目を背けた。

 しろっぴーは直径二十一メートルにまで一気に膨らむと、太陽のような光の塊に変わった。

「まずいわね」

 クロリリィは緊張の表情で呟いた。

「え? どういうこと?」

 鏡太朗はクロリリィのただならぬ様子を見て、心の中で緊張が高まっていた。

空亡(そらなき)は飼い主の願いを叶えることができるまで、魔力や呪いの力といったエネルギーを蓄え続けるの。でも、空亡(そらなき)が蓄えられるエネルギー量には限界があるわ。限界を超えてエネルギーを蓄えると、体が太陽のように輝き始めるのよ。それでもエネルギーを蓄え続け続けると、体が白く輝き始めて大爆発を起こすの。大昔に、人間界でも空亡(そらなき)が大爆発を起こして、大きな島が丸ごと吹き飛んだって聞いたわ」

「そ、そんな!」

 天逆毎(あまのざこ)から白い光が出なくなり、全ての魔力を吸いつくしたしろっぴーは、その場から突然消え去った。

「しろっぴーがいなくなった!」

 驚く鏡太朗に、クロリリィが説明した。

「魔力を使って瞬間移動したんだわ。一体、これから何が起こるのかしら?」

 鏡太朗の胸の中で、言いしれぬ不安が大きく広がっていった。

  

 シティホテルの宴会場では、石になったもみじに呼びかけ続けるさくらに、ヴァンパイアの体になった三体のゴルゴーンが迫っていた。

「さあ、この人間を三等分するよ!」

 三体のゴルゴーンが両手の刃物のような長い爪をさくらに伸ばし、さくらは異変に気づいて振り返ると、自分に迫っている危機を悟って目を見開いた。


 その時、さくらたちのすぐ隣に直径二十一メートルで太陽のように朱く輝くしろっぴーが、天井と床を大きく破壊して突然姿を現した。

「な、何だ、これは?」

 驚くゴルゴーン姉妹の長姉ステンノーの体から白い光がどんどん出てきて、しろっぴーに吸収され始めた。

「か、体が動かない……」

 ステンノーは体が固まったように身動きができずにいた。続けざまに、愕然とする二体の妹たちの体からも白い光が出てきて、しろっぴーに吸収されていった。しろっぴーは宴会場の天井と壁と床を破壊しながら、どんどん大きくなっていった。


 さくらは目を見開いて、目の前の信じられない光景を見つめていた。

「これ……何……? 何が起こっているの……?」


雷駕(らいか)! 雷駕(らいか)ーっ!」

 雨雲に覆われた町中では、まふゆの魂が道路に両膝をつき、隣で雷に包まれて倒れている雷駕(らいか)に呼びかけ続けていた。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は、そんなまふゆの魂の後ろ姿に冷ややかな目を向けていた。

『まふゆ、魂だけの姿になって哀れだな。ちょうどいい。憤怒の咒弾(じゅだん)には魂だけの存在を消滅させる力があるのか、お前で試してやる』

 (のろ)いの淚尽(ナツ)の左腕の炎のドラゴンの口から憤怒の咒弾(じゅだん)が放たれ、まふゆの魂の背中に迫った。

 

 憤怒の咒弾(じゅだん)がまふゆの魂の背後一メートルに迫った時、地面から空に向かって強烈な突風が発生して憤怒の咒弾(じゅだん)を空に吹き飛ばし、憤怒の咒弾(じゅだん)は雨雲に命中して雲の表面に穴を空け、その穴は雨雲が広がってすぐに塞がれた。

 

 まふゆの魂は、すぐ後ろで発生した突風に気づいて振り返ると、炎のドラゴンが発射した憤怒の咒弾(じゅだん)が次々と自分を目がけて飛んで来ており、愕然として目を見開いた。


 憤怒の咒弾(じゅだん)がまふゆの魂のすぐ目の前に迫った時、まふゆの魂の前から突風が発生して憤怒の咒弾(じゅだん)(のろ)いの淚尽(ナツ)に向けて押し飛ばした。(のろ)いの淚尽(ナツ)は地面を駆けてそれを避け、憤怒の咒弾(じゅだん)は背後の建物に命中し、その外壁に次々と直径三メートルの穴を空けた。


「突風が! 雷駕(らいか)?」

 まふゆの魂が驚いて後ろを振り返ると、雷駕(らいか)が体中に走った亀裂から血を流しながら、よろよろと起き上がっていた。

雷駕(らいか)ーっ!」

 まふゆの魂は雷駕(らいか)を見た瞬間に目を見張り、悲鳴にも似た叫び声を上げた。

 雷駕(らいか)は右大腿と左上腕、そして体中に生じた亀裂から血を流し続けており、まふゆの魂はそんな雷駕(らいか)の姿を見て大粒の涙を溢した。

雷駕(らいか)、もういい! もういいよ! 早く逃げて! このままじゃあ雷駕(らいか)が死んじゃう!」

 雷駕(らいか)は起き上がると、宙に浮き上がった。その体中から滴り落ちる夥しい血が、アスファルトに赤い斑点を次々と描いていった。

「わしは、絶対にあいつを止めるんじゃ」

 アスファルトの斑点がどんどん増えていった。

「もういいよーっ! あたしの頼みなんて忘れていいから、お願いだから、お願いだから死なないでーっ!」

 まふゆは雷駕(らいか)に向かって涙を散らして絶叫した。

「わしは……、守るんじゃ……」

「え?」

 まふゆは涙が流れ続ける目を見開いた。

「わしは、これからあいつの犠牲になるかもしれない全ての命を、全ての人生を、そしてナツのことだって、絶対に守ってみせるんじゃああああああああああっ!」

 まふゆの目がさらに大きく見開いた。


 (のろ)いの淚尽(ナツ)は愕然として雷駕(らいか)に訊いた。

「なぜだ? なぜ、お前の体はバラバラにならない? 体がバラバラになる(のろ)いをかけたはずだ!」

 雷駕(らいか)は稲光のような瞳で(のろ)いの淚尽(ナツ)を睨んだ。

「わしがみんなを守ろうという想いは、呪いの力なんかには絶対に負けはしないんじゃあああああああああああああああああああああっ!」

 雨雲から次々と(のろ)いの淚尽(ナツ)を狙って雷が落ち、(のろ)いの淚尽(ナツ)は地面を駆け回ってそれを避けた。

 雷駕(らいか)は天を仰いで絶叫した。

「絶対にみんなを守るんじゃあああああああああああああああああああああっ!」

 雷駕(らいか)の絶叫に呼応するように、大粒の豪雨が突然町を襲った。


 雷駕(らいか)は突風に乗って(のろ)いの淚尽(ナツ)の前まで一気に移動すると、左足を(のろ)いの淚尽(ナツ)に向けて放ち、(のろ)いの淚尽(ナツ)は炎のドラゴンでそれを受けた。その瞬間、雷の欠片と、赤と黒のまだらの炎の欠片が周囲に飛び散った。

 炎のドラゴンの左掌から闇の光線が発射され、雷駕(らいか)を包む雷の塊を貫いて雷駕(らいか)の右肩を貫通し、雷駕(らいか)の全身を黒い雷が駆け回り、雷駕(らいか)は全身を襲う激痛で絶叫した。

「ぎゃあああああああああああああああああっ!」

 その時、雷駕(らいか)の体に巻きついている雷が輝きを放ち、黒い雷は一瞬で消え去った。

 雷駕(らいか)は空を飛んで左足で(のろ)いの淚尽(ナツ)を攻撃し続け、(のろ)いの淚尽(ナツ)は炎のドラゴンでそれを受けながら、右手に出現させた闇と(のろ)いの槍、炎のドラゴンの角と口から吐く赤と黒のまだらの炎、憤怒の咒弾(じゅだん)、掌から発射する闇の光線で雷駕(らいか)を猛烈に攻めた。雷駕(らいか)は両腕と右脚が使えず、風に乗って(のろ)いの淚尽(ナツ)の攻撃を避け、突風で(のろ)いの淚尽(ナツ)の攻撃を跳ね返していた。雷駕(らいか)(のろ)いの淚尽(ナツ)の激しい攻防は拮抗し、互いに有効打を与えられないでいた。


 まふゆの魂は、雷駕(らいか)(のろ)いの淚尽(ナツ)の闘いを見つめながら、涙を流し続けていた。

雷駕(らいか)、どうして? そんなに傷だらけなのに……、体中から血が流れ続けて止まらないのに……、きっと気絶しそうなくらいの痛みを全身に感じているはずなのに……、どうしてみんなを守ろうっていう想いだけで、そんなボロボロの体で闘えるの? どうしてナツのことまで守ろうなんて思えるの?』

 コアちゃんが大粒の雨に打たれながら、まふゆの魂に訊いた。

「來華には、前からこんな力があったのか?」

 まふゆの魂は雷駕(らいか)の攻防を見守りながら答えた。

「きっと來華には、これだけの力がずっと眠っていたんだと思う。來華は戦闘モードに変身しないと空を飛べなかったのに、來華の体を乗っ取った旋鬼は、変身しなくても自由に空を飛んでいた。旋鬼が來華に眠っていた力の一部を引き出して、それが引き金になって來華に眠っていた力が目覚めたんだと思う」

 まふゆの魂の視線の先では、雷駕(らいか)が突風に乗って飛んでいた。

「雷と雨を操って、風に乗って飛ぶ……。雷駕(らいか)のあの姿……、まるで……」

 まふゆの魂は雷駕(らいか)をじっと見つめた。

「まるで伝説の魔神、雷神と風神みたい……」


「ぎゃあああああああああああああっ!」

 憤怒の咒弾(じゅだん)の連射をかわして飛んでいた雷駕(らいか)の左大腿に、炎のドラゴンの左掌から発射した闇の光線が命中し、雷駕(らいか)は絶叫して地面に落下した。


雷駕(らいか)!」

 まふゆの魂とコアちゃんが、同時に雷駕(らいか)の名を叫んだ。 


 (のろ)いの淚尽(ナツ)は、地面に倒れた雷駕(らいか)を見てニヤリと笑った。

「勝負あったな。すぐにお前の頭に穴を空けてやる」

 炎のドラゴンが左手を雷駕(らいか)に向け、その掌に発射直前の闇が出現した。


雷駕(らいか)ああああああああああああああああああああああああっ!」

 まふゆの魂が涙を散らして、雷駕(らいか)に向かって飛んだ。


 炎のドラゴンが闇光線を発射しようとした瞬間、猛烈な突風が(のろ)いの淚尽(ナツ)を正面から襲い、(のろ)いの淚尽(ナツ)は三十メートル吹き飛び、地面を転がった。

 雷駕(らいか)は地面に倒れたまま、全ての想いを込めて叫んだ。

「わしはみんなを守るんじゃあああああああああああああああああああああっ!」

 雷駕(らいか)が叫んだ瞬間、(のろ)いの淚尽(ナツ)に向かって巨大な雷が落ち、(のろ)いの淚尽(ナツ)は地面を転がってそれを避けた。

「な、何っ?」

 目を見開いて愕然とした(のろ)いの淚尽(ナツ)の目に映ったのは、地面に落ちた雷が雨で濡れた地面を走って自分に迫っている光景だった。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は巨大な雷に包まれて絶叫し、気を失ってうつ伏せに倒れた。


 気を失った(のろ)いの淚尽(ナツ)の体から黒い雲のようなものが立ち上り、それが消えるとナツの姿に戻った。  

 

 雷駕(らいか)の姿も來華に戻り、激しかった豪雨がぴたりと止んで、空を覆い尽くしていた雨雲は次第に薄くなって消えていった。雨雲が消えると、雨雲の上を上昇していた星雲のような無数の魂が見えてきた。


 大きな虹が七色に輝く美しい青空の下には、激しい闘いで破壊された建物と、数え切れないほどの黒焦げになった住民たちの亡骸が広がっていた。

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