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19 まふゆの涙

 町の上空では、來華とまふゆがコアちゃんの腕に抱えられながら、ゆっくりと降下しており、低い高度で星雲のように集まっている無数の魂が、眼下に近づいてきた。

 來華は愕然としてその光景を見つめた。

「何でじゃ? 何でこんなことになったんじゃ?」

 まふゆは來華の言葉を聞いて、胸に苦しみを感じていた。

『復讐心が呪いを生み、呪いが復讐心を暴走させる……。(のろ)いの淚尽(ナツ)、あたしたちのお母さんがこんなことして喜ぶと思う? 悲しくて、悲しくてたまらないはずだよ』


 星雲のように集まっている魂の中から、二つの魂が來華の方へ飛んで来ると、來華の同級生の美来と来美の姿になった。

「美来! 来美!」

 來華は、宙に浮かぶ二人の魂に向かって呼びかけた。美来と来美の魂は、悲しみに沈んだ表情をしており、美来の魂は声を詰まらせながら來華に言った。

「來華……。來華と友達になって……、やっと『さん』なしで呼べるようになったのに……、もうお別れみたい……。あたしたち、みんな死んだみたいなんだ。気がついたら、こんな姿で空に浮かんでたの。何だか、空の上の方に引き寄せられているみたい。大災害でもあったのかな? でも……、こんなに突然あたしの人生が終わるなんて……、く、悔しいよ……」

 美来の魂の頬を一筋の涙が伝った。

「美来……」

 來華は大粒の涙を流していた。

 来美の魂も、悲しみに打ちひしがれた表情で口を開いた。

「來華。來華とお話したり、さくらと四人で遊びに行ったことは忘れないよ。來華と友達になれてよかった……。もっと……、もっといっぱい思い出をつくりたかったな……」

「来美……」

 來華は体を震わせて嗚咽を漏らした。

「じゃあね、來華。來華のことは忘れないよ。あたしと美来の家族もあの中にいるんだ。みんなのところに戻るね」

 来美の魂も大粒の涙を流し、号泣している美来の魂と一緒に光の粒の姿に戻ると、星雲のような魂の集まりの方へ飛んで行った。

「美来ーっ! 来美ーっ!」

 來華は、二人の魂に向かって力の限り泣き叫んだ。

「何でなんじゃーっ? 何で、美来と来美の命と人生が奪われなくちゃならないんじゃーっ! 何でなんじゃああああああああああああああああああああああっ!」

 來華の絶叫がまふゆの胸に突き刺さり、まふゆは苦し気に顔を歪めた。


「來華さん。まふゆさん」

 來華とまふゆは、声が聞こえた正面に顔を向けた。

河童(かわわらわ)!」

 來華とまふゆは声を揃えて言った。二人の正面には人間の姿の河童(かわわらわ)の魂が笑顔で浮かんでおり、その後ろでは河童(かわわらわ)のじーさんの魂が微笑んでいた。

「いつの間にか、オラは死んでただきゃ。もっと色んなことをしたかったけど、今まで友達が一人もいなかったオラにとって、來華さんとまふゆさん、きゃー太朗やさくらさんたちが友達になってくれたことは、オラの短い人生で一番幸せな出来事だっただきゃ。だから、オラは満足して黄泉の国へ行けるだきゃ」

河童(かわわらわ)……」

 來華とまふゆは大粒の涙を流していた。 

 河童(かわわらわ)のじーさんの魂が、温和な微笑みを浮かべて言った。

「みんなと出会ってからは、太郎は本当に毎日が楽しそうだったよ。孫と友達になってくれてありがとう」

 河童(かわわらわ)の魂は、幸せそうなとびっきりの笑顔で言った。

「今までありがとうだきゃ! きゃー太朗やさくらさん、もみじさん、ナツさんたちにも、オラがそう言ってたって伝えて欲しいだきゃ! コアちゃんも色々とありがとうだきゃ! それじゃあ、さよならだきゃ!」 

河童(かわわらわ)あああああああああああああああああっ!」

 來華とまふゆは涙を散らして叫び、河童(かわわらわ)とじーさんの魂は光の粒の姿になって、星雲のような魂の集まりの方へ飛んで行った。その様子を見つめていたコアちゃんの目からも、涙が流れていた。


 まふゆは両手の甲で涙を拭うと、地上を睨んだ。

『止めるんだ! 絶対に(のろ)いの淚尽(ナツ)を止めるんだ! たとえそれが、ナツを失うことになるのだとしても!』

 まふゆの目にはすでに迷いも恐れもなく、(のろ)いの淚尽(ナツ)を倒す決意と覚悟が漲っていた。

 コアちゃんは來華とまふゆを抱えたまま、星雲のような魂の集まりの横を抜け、地上に向かって降下していった。  


「な、何じゃ!」

 人間を超えた視力を持つ來華は、地表を見て愕然とした。まふゆは胸がえぐられる思いをこらえて來華に聞いた。

「來華、な、何が……見える……?」

「ま、町中が……、と、とんでもない数の黒焦げの死体で……覆われて……いるんじゃ……」

 來華はあまりにも衝撃的な光景を見て激しく動揺し、途切れ途切れに地上の様子を説明した。まふゆは來華が伝えた地上の様子を知り、呆然としていた。

「あ、あれは何じゃーっ? ナ、ナツなのか?」

 來華の驚きの叫びを耳にした瞬間、まふゆは我に返った。

「來華、な、何が……見える……?」

「道路にナツが立っているんじゃが、黒いオーラに包まれて、後ろの髪が黒い炎のように揺らめいているんじゃ。左腕が闇のように黒く、トラみたいな縞が赤く光っていて、黒い槍を持ってるんじゃ。ああっ!」

「どうした?」

 まふゆは慌てて來華に尋ねた。

「魔物になった住民四人が、ナツみたいなのに襲いかかって……、く、黒い槍で刺し殺されたんじゃ……」

 まふゆは鼓動が激しく高まっている胸に右手を当てながら、來華とコアちゃんに言った。

「そ、そいつは……、呪いの力に支配されたもう一人のナツの心だ……。今はナツの体を支配して、自分のことを(のろ)いの淚尽(ナツ)と呼んでいる。あいつを止めるんだ! 止めないと、どれだけの被害者が出るかわからない! たとえナツが命を落とすことになったとしても、絶対にあいつを止めるんだ!」

 來華とコアちゃんはまふゆの覚悟を痛いほどに感じ、言葉もなくまふゆの顔を見つめた。


 コアちゃんの隣を地上から飛んできた八つの白い光の粒が通り過ぎ、上昇していった。來華は白い光の粒を見上げて言った。

「魔物になった住民からは、二つずつ魂が出てきたんじゃ。住民の体に魔物の魂が入り込んで、住民の体を支配していたってことじゃろうか?」


 地上では、(のろ)いの淚尽(ナツ)が闇と(のろ)いの槍を左手で掴んで立ち、自分に向かって降下してくるコアちゃんを赤く光る瞳で見上げていた。

「やっと来たか、まふゆ。今日こそ、お前を殺してやる。まふゆを殺せば、もう一人の俺は自分自身を(のろ)い、永遠に抜け出せない(のろ)いの沼に落ちる。その時こそ俺が主人格となり、心も体も俺が支配し続けるのだ」

 ニヤリと笑った(のろ)いの淚尽(ナツ)の赤い瞳が、冷たい光を放った。 


 コアちゃんは(のろ)いの淚尽(ナツ)が立つ道路の三十メートル先に着地し、來華とまふゆが地面に降り立った。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は、まふゆに薄ら笑いを向けた。

「殺されることがわかってるのに、よく俺の前にやって来たな」

 まふゆは緊張の表情を浮かべて、(のろ)いの淚尽(ナツ)に言った。

「あたしは絶対にお前を止めてみせる! これ以上、お前には誰の命も奪わせない!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)はニヤリと笑いながら、闇と(のろ)いの槍を右手に持ち替えると、まふゆに向かって左掌を向けた。(のろ)いの淚尽(ナツ)の体を覆う闇のオーラが大きく膨れ上がり、左掌の先に赤い光がまだらになって入り混じった直径六十センチの闇の塊が出現した。

「この憤怒の咒弾(じゅだん)で消滅するがいい!」

 まふゆを目がけて憤怒の咒弾(じゅだん)が放たれ、まふゆは左側に向かって走り、來華は右側に走りながら雷と雷鳴に包まれて戦闘モードに変身し、コアちゃんは地上十メートルまで飛び上がった。憤怒の咒弾(じゅだん)は標的を失ってそのまま飛んで行くと、遥か後方のオフィスビルに命中し、直径三メートルの範囲内の外壁を一瞬で消滅させた。


「古より時節の移ろいを司る青朱白玄之尊しょうすはくげんのみことよ! その御力(みちから)を宿し給え! 六華(りっか)之嵐!」

 まふゆは(のろ)いの淚尽(ナツ)の右側面に回り込んで、直径十センチの雪の結晶を十枚放ち、雪の結晶は回転しながら別々の放物線を描いて(のろ)いの淚尽(ナツ)を狙って飛んで行った。


 (のろ)いの淚尽(ナツ)が後ろに下がって雪の結晶を避けた時、その左側に回り込んでいたライカが、(のろ)いの淚尽(ナツ)に向けて雷玉の連打を放った。

「雷玉の乱れ打ちじゃああああああああああああああああああっ!」


 (のろ)いの淚尽(ナツ)がさらに後ろに下がって雷玉の連打を避けた時、(のろ)いの淚尽(ナツ)の正面の地上十メートルに滞空していたコアちゃんが、(のろ)いの淚尽(ナツ)の顔を狙って目からピンク色のレーザービームを放った。

 しかし、(のろ)いの淚尽(ナツ)は縞模様が赤く光る左前腕を上げてレーザービームを受け止め、レーザービームは左前腕に傷ひとつつけることなく消え去った。


 その時、(のろ)いの淚尽(ナツ)の左右五メートルの地表に二メートル四方の氷塊ができていて、それぞれの氷塊から五本ずつのつららが(のろ)いの淚尽(ナツ)に向かって伸びた。


 (のろ)いの淚尽(ナツ)がさらに後ろに下がってつららを避けた時、その左側で宙に浮かんでいたライカが、回転しながらしっぽの先の三日月型の雷の塊を放った。

「飛べ、三日月(きょう)ーっ!」

 三日月(きょう)は回転しながら(のろ)いの淚尽(ナツ)の左膝の外側を狙って飛んで行き、(のろ)いの淚尽(ナツ)は闇で包まれた槍の穂先で三日月(きょう)を受け、その衝撃で闇と雷の欠片が周囲に飛び散り、三日月(きょう)は地上に落下して無数の雷の欠片になって消え去った。


「ぎゃはははーっ! 行くぜ、カノンビーム砲!」

 コアちゃんが地表に着地し、胸から出した砲身で青白いビーム砲を発射した。青白いビーム砲はつららを破壊しながら直進し、正面に立つ(のろ)いの淚尽(ナツ)に向かって伸びていった。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)はその場で三メートル飛び上がってカノンビーム砲を避け、カノンビーム砲は背後のビジネスビルの外壁を直撃して破壊した。


 その時、まふゆが氷結之薙刀を使って棒高跳びのように二メートルの高さに飛び上がると、(のろ)いの淚尽(ナツ)のアキレス腱を狙って裂帛の気合を発しながら、氷結之薙刀を全力で横に振った。

「やあああああああああああああああああああっ! ……うっ!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)が空中で身を翻して氷結之薙刀が空を切った時、目を見開いたまふゆの腹部には、(のろ)いの淚尽(ナツ)が投げた闇と(のろ)いの槍が突き刺さっていた。その穂先を包んでいた闇が、無数の闇の雷のようにまふゆの全身を駆け回った。

「ぎゃあああああああああああああああああっ!」

 闇の雷が全身にもらたす激痛に絶叫しながら、まふゆは地面に墜落した。


「まふゆーっ!」

 ライカがまふゆの許へ一直線に飛んで行き、(のろ)いの淚尽(ナツ)は着地するのと同時にライカを狙って左掌を上げた。(のろ)いの淚尽(ナツ)の体を覆う闇のオーラが大きく膨れ上がった。

「憤怒の咒弾(じゅだん)で消してやる!」


 その時、(のろ)いの淚尽(ナツ)の背中に二本のピンク色のレーザービームが命中し、体を貫通して胸から飛び出した。

「ぐわああっ!」

 苦し気に叫び声を上げた(のろ)いの淚尽(ナツ)に向かって、コアちゃんが低空を飛んで突進した。

「防御に専念してる時とは違って、攻撃する時は隙だらけだぜえええええっ!」


 再びコアちゃんは目からレーザービームを発射して(のろ)いの淚尽(ナツ)を狙ったが、(のろ)いの淚尽(ナツ)は右に移動してそれを避け、コアちゃんは両手に出現させた竹節鋼鞭で(のろ)いの淚尽(ナツ)を猛攻連打し、(のろ)いの淚尽(ナツ)はフットワークでそれをかわしながら、冷ややかな笑みを浮かべた。

「こんな傷など、咒靈力(じゅれいりょく)を物質化すれば、すぐに再生できるさ」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)の傷口から半透明の黒い咒靈力(じゅれいりょく)が滲み出ると、傷が消えて元通りの状態になった。


「まふゆ! 今、槍を抜くんじゃ!」

 ライカは人間と同じ姿の來華に戻ると、仰向けに倒れ、全身を襲う闇の雷の激痛で悲鳴を上げているまふゆの腹から闇と(のろ)いの槍を引き抜き、遠くへ投げ捨てた。

「まふゆ! しっかりするんじゃーっ!」

 來華はまふゆの隣に座り込み、涙を流しながら呼びかけた。

 まふゆは目に涙をいっぱい溜めながら、途切れ途切れに來華に言った。

「ら、來華……、お願い、あいつを止めて……。ナツにこれ以上、誰かを傷つけさせないで……。誰の命も……、人生も奪わせないで……。お……願い……」

 まふゆの目から一筋の涙が煌めきながら流れ落ちると、その心臓は鼓動を停止した。

「まふゆーっ! まふゆーっ! まふゆうううううううううううううううっ!」

 來華は二度と目を開けることがないまふゆの体を揺さぶりながら、涙を流して絶叫した。 


「ぐああああああああああっ!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)の左の手刀がコアちゃんの左肩に振り下ろされ、激痛で絶叫するコアちゃんの左腕が竹節鋼鞭を持ったまま斬り落とされた。

「よくもコアちゃん様の左腕を!」

 コアちゃんの胸からカノンビーム砲の砲身が出現し、二メートル先の(のろ)いの淚尽(ナツ)を狙って砲身の先が青白く輝いた。

「カノンビーム砲で仕留めてやるぜーっ!」

 コアちゃんが(のろ)いの淚尽(ナツ)を狙ってカノンビーム砲を発射しようとした瞬間、コアちゃんの目の前には、間合いを詰めた(のろ)いの淚尽(ナツ)の残酷な笑い顔があった。

「お前のカノンビーム砲で、お前を仕留めてやるさ」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)の左掌がカノンビーム砲の砲口を塞ぎ、コアちゃんがカノンビーム砲を発射すると、カノンビーム砲はコアちゃんの内部で炸裂し、コアちゃんの体中から青白い光線が放射され、コアちゃんは絶叫した。

「ぎゃあああああああああああああああああああっ!」

 コアちゃんは、体中が穴だらけのボロボロの姿でその場に崩れた。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)はコアちゃんに左掌を向けた。

「憤怒の咒弾(じゅだん)で跡形もなく消し去ってやる」


 その時、強烈な突風が(のろ)いの淚尽(ナツ)を真正面から襲い、(のろ)いの淚尽(ナツ)は思わず顔をそむけた。突風が止んで(のろ)いの淚尽(ナツ)が前を向いた時、一帯が薄暗くなっており、空のあちこちで雷鳴が轟いていた。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)が空を見上げると、町の上空が雨雲で覆われていた。

「な、何だ、これは?」

 雨雲はどんどん厚くなっていったが、町の上空以外の場所には青空が広がっていた。

 突然、激しい雷鳴を響かせながら、強烈な雷が(のろ)いの淚尽(ナツ)の前に落ちた。

「な、何なんだ、これは……?」

 驚愕する(のろ)いの淚尽(ナツ)の目の前では、地面に落ちた雷が地上で高さ二メートルの卵型の塊になっており、その塊の中には、大粒の涙を煌めかせる來華が、(のろ)いの淚尽(ナツ)を睨んで立っていた。


 雷の塊の中に立つ來華は、両腕と両脚、胴体、首に朝顔の蔓のように細い雷が巻きつき、額上部には雷でできた長さ十五センチの角が二本生えて、その瞳は稲光のような強烈な輝きを放っていた。

 雷の中で來華は、(のろ)いの淚尽(ナツ)に向かって言った。

「まふゆがわしに全てを託したんじゃ! わしはまふゆの想いを受け継ぎ、絶対にお前を止めるんじゃああああああああああああああああああああっ!」

 來華が叫んだ直後、來華の体から強烈な突風が発生して(のろ)いの淚尽(ナツ)を直撃し、(のろ)いの淚尽(ナツ)は一瞬顔をそむけた。(のろ)いの淚尽(ナツ)が再び前を向いた時、目の前に雷に包まれた來華が怒りの形相で立っており、(のろ)いの淚尽(ナツ)の顔を狙って雷に包まれた右の拳を放った。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)が後ろに下がって拳を避けると、來華の体から発生した強烈な突風が(のろ)いの淚尽(ナツ)を再び襲い、その直撃を受けた(のろ)いの淚尽(ナツ)が顔をそむけた瞬間、來華の雷に包まれた左拳が(のろ)いの淚尽(ナツ)の顔面に炸裂し、(のろ)いの淚尽(ナツ)は全身を雷に包まれて絶叫しながら、もの凄い勢いで後方に吹き飛んでいった。

「ぎゃあああああああああああっ!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は、三十メートル吹き飛んで地面を転がった。


「こ、この! な、何っ?」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)が起き上がった時、來華は雷に包まれたまま(のろ)いの淚尽(ナツ)の十メートル先で地上十メートルの高さに浮かんでおり、稲光のような瞳で(のろ)いの淚尽(ナツ)を見下ろしていた。

「な、何なんだ、お前は?」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)は予想外の展開に動揺を見せながら、雷の中の來華に訊いた。

 來華は稲光のような瞳を怒りで輝かせて答えた。

「わしか? わしは雷獣族の雷駕(らいか)じゃーっ! まふゆや河童(かわわらわ)、美来、来美、そして大勢の町の人たちの命と人生を奪ったお前の凶行は、わしがここで絶対に止めるんじゃあああああああああああああああああっ!」

「止めるだと? お前など、憤怒の咒弾(じゅだん)で今すぐ消してやる!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)が左掌を雷駕(らいか)に向けた時、とてつもなく強烈な突風が(のろ)いの淚尽(ナツ)を正面から襲い、(のろ)いの淚尽(ナツ)は十メートル後方まで吹き飛ばされ、そのまま地面を転がった。

「こ、この魔物め!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)が起き上がろうとした瞬間、真上の雨雲から発生した雷が(のろ)いの淚尽(ナツ)を直撃した。

「ぎゃああああああああああああああっ!」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)はフラフラしながら起き上がると、雷に包まれて宙に浮かぶ雷駕(らいか)に言った。

「そ、そうか……。お前は雷と風を操ることができるということか。ならば、俺も真の力を出させてもらうぞ」

 (のろ)いの淚尽(ナツ)の左腕が、赤と黒のまだらの炎になって長く伸び、空中をうねると、赤と黒のまだらの炎でできた鋭い角と左腕があるドラゴンに変わった。

 (のろ)いの淚尽(ナツ)はニヤリと笑った。

「さあ、ここからが本当の闘いだ」 

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