弱肉強食!フィッシュ・マーケット ◆ 5 ◆
◇ ◇ ◇
「か、勝った……」
放心状態で背もたれに背を預けるエレナ。ウンウン、と頷きながら涙ぐむ司会。彼は鼻をすすりながらハンマーを振り上げた。
「では、400、400で――」
机を叩こう、という瞬間。バサッと羽音がした。ブースに無数の黒い影が落ちる。ギャアギャアと鳴き声をあげて飛び込んできたのは――
「鳥!?」
大きな鳥の群が周回しはじめたのだ。パニックになる買い手たち。その場でうずくまる者、逃げまどう者。阿鼻叫喚の中、エレナの視線はある一点にそそがれた。ブース中心の司会スペース。彼女が競り落としたアジのケースに今、一羽が着地した。
「なっ! あたしのアジ!」
エレナの叫びと同時に、鳥は結束バンドを器用に足で掴む。ケースが浮いた。
「ヤダ~~~~ッ!!」
制止も虚しく、飛び立つ鳥。茫然と立ち尽くすエレナの横から声がする。
「奴らだ……ここにも現れるとは……」
そう呟くのは、アジをめぐってエレナと競ったおじだ。
「おじさんあの鳥知ってるの?」
「ああ、あちこちのフィッシュ・マーケットを襲ってるギャング鶴だよ」
「鶴!? ギャング!? 何!?」
ついさっきまで憎みあっていたふたりだが、ガラッと変わった状況に飲まれ、普通に口を利いていた。
「高ぇもんばっか掻っ攫ってくってハナシだ」
おじは諦めた笑みを浮かべ、鳥……あらため鶴が飛び回るのを眺める。
「盗られたもんは戻らねぇ。運が悪かったと思って諦めな、嬢ちゃ……」
そう言っておじが視線を戻した先にエレナの姿はなかった。
「ん?」




