エレナと逆さま博士 ◆ 15 ◆
◇ ◇ ◇
「なんかふぁって感じで、カッとやって、どーんだ!」
ピシャーン。
面食らっているエレナをよそに、ファウストはしれっと後ろ目にタコを見やり、何かの算段をしていた。
「貴女恐らくマルチタスクは苦手でしょうから、回避は私が引き受けましょう」
タッと踵を返し、ファウストはエレナを抱えたまま、向かってくる巨大タコと対峙した。
「ゆけぃ! モルナ君ッ!」
か、神の愛!? 悪魔の子に……!? 愛、愛、愛……あたしが持ってる愛のカタチ……。
エレナの頭に当然のように浮かんできたのは――ツヤツヤの寿司だった。キリッとエレナの目に火がともる。
そんな彼女のオーラを感じ取って、ファウストは涼しい顔をしていたが内心「このガキ、マジで解ったんか」と引いていた。が、この実験のデータがとれさえすれば、タコがどうなろうとモルモットがどうなろうとどうでもいいのだ。
そんなファウストの胸の内を知らず、エレナの脳内でイメージが積みあがっていく。
なんかふぁって感じで……ふぁって感じ……シャリをやさしく手に取るように……、カッと素早くお客さんにぴったりのネタを乗せて、愛を握って――
「エビ・ビーム!!」
二本の指から放たれた光がタコを貫いた。どーん。残響とともに巨躯がぐらつく。
「で、できた……!」
「ワーオ、テーマソングでもかかりそうな感じですねぇ」
のんきな感心の声をあげ、ファウストはエレナを連れて余裕そうにタコの体をのぼっていく。タコ足はなおもふたりに絡みつかんと苦しげに暴れる。ファウストはぷにっと弾力を使って天高く飛び上がった。
「よしエレナ君、シャキーンととどめです」
エレナは頷き、パチンと指を鳴らした。地上から何かが緑の軌道を描きエレナの手を目がけて飛んでくる。ばしっと掴みとったのは彼女の折れた愛刀だ。緑のオーラに包まれたそれは、エレナの手の中でめりめりと形を変え大太刀と化した。同時にピタ、と宙の一点でファウストは上昇を止め、エレナを解放した――はじまった落下と共に、エレナは大太刀を構えた。
「エク寿司ズム・スラッシュ!!」
シャ、キーーーーン!!
真っ二つに筋の入るタコ。震えた巨躯から切っ先が飛び出し、次いで姿を覗かせたエレナがタコの内側から刃を振り下ろす。天空のファウストは、どこから出したのか、広げた傘を手にゆったりと下降しながら地上の様子を眺めた。キリッと仁王立ちのエレナの後ろで巨体が崩れはじめる。
「あはははは! 傑作だ!!」
ファウストのニヤケ面を地上からの爆風と閃光が包んでいく。
「メフィストフェレスの娘が悪魔を祓っ――」
ボン、と爆発音が西海岸に轟いた。




