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祓魔寿司 めふぃすと  作者: 岡村なぎぼ
一貫目 エレナと逆さま博士

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15/32

エレナと逆さま博士 ◆ 14 ◆

  ◇  ◇  ◇



 眩しさの中、ファウストは自分を縛る糸がぶつりと切れたのを感じた。緑色の光に包まれて緩やかに落下する中、同時に別の何かがファウストの全身を縛る。それはエレナの髪を束ねていたリボンに似ていた。ファウストの顔をバサバサと打つのはほどけたエレナの髪だ。


 どーん、と地鳴りと共にファウストは地面に足を着いた(・・・・・・・・)。しばらくぶりに大地を踏む感覚、そして緑色の煙の中でゆらりと立ち上がる人影。目の前の光景に興奮を隠せず、モノクルの奥はギラついた光を放つ。



「は……はは……」



 ファウストの口から笑みがこぼれた。



「戯れが過ぎるぞファウスト」



 凛とした声が辺り一面に響く。ファウストの背にぞくりとした高揚が走る。瞬間、彼は緑の光の紐で声の主の元に引き寄せられた。正面から彼女――豹変したエレナの陰のある目がファウストをとらえた。



「わたし(・・・)に力を貸せ」



 長い髪の束が風を受けてはためく。



「ファーーーー!! スバラシイ!!!! 父親の契約を塗り替えるほどの圧倒的パワー!!  〝人間界で〟というアドバンテージはあるがしかし……」



 ファウストの独特の早口の途中で、エレナはハッと我に返り、元の丸くかわいらしい目に光を戻した。ファウストを縛る緑の光がふわっと消える。



「あれっ、あたし何を……」



 ファウストの襟首をつかんでいる自分の手を見て、すっとんきょうな顔をするエレナ。そこへヒュオオと鋭い風の音が迫る。しぶとくエレナを狙う吸盤。



「モルモッ……エレナ君ッ!!」



 エレナが身構えた瞬間、ファウストが彼女を抱えてタコ足の鞭の間を走りだす。今度こそ大地の上で。



「突然気を抜かないでください」



 呆れた視線をエレナに向け、しっかり傲慢さを取り戻したファウスト。



「あたし、どうなっちゃったの? 生きてる?」


「エクソシズムエナジーが貴女に祓魔の力を授けたのです。いや、それだけではない。メフィストフェレスの強大な魔力に対抗しうる何か別の……」


「何でもいいけどあたし、あのタコをやっつけられるってこと!?」


「さぁ? 実験してみないと」



 ついさっきの注射の件もあり、げろ……と疑いの目を向けるエレナ。しかし、すぐに無い頭をひねって考えこむ。



「……聖書の一節でも唱えればいいのかな」


「ふーむ、悪魔にとっての毒は神の愛といいますが……特別サービスで貴女に寄り添った説明をしましょう」



 ごくっ、とエレナは次の言葉を待った。



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