幕間 とある愚かな男の話
とある男の話をしよう
馬鹿で愚かな男の話だ
男は罪を犯した、許されない大罪だ
彼は償いを決め、全てを捨てた。
己を捨て、希望を捨て、未来を捨てた。
償いとは誰かを幸せにすること
幸福の踏み台になること
それが選んだ道だった
なんと哀れで、なんと儚い戯言だ
男は無能だった
夢見るだけで何も出来ない
ただ無様に足掻くだけだった。
皆が嗤い、それでも男は足掻いた。
それが続く
いつまでも、いつまでも
ある日誰かが手を差しのべた
人は弱さにこそ惹かれ、集うのだろう
それは勇気なのだろう、それこそが力なのだろう
やがて仲間は増え続け、村となる
村は町に、町は街に、街はやがて国となり
男はいつしか王となった。
思いを託され王となり、
願いを背負い皆が逝き、
祈りの下で、いつしか孤高となり
やがて王は孤独となった。
しかし王は未だ無能だった。
悩み、苦しみ、足掻き続けるが、
かつての仲間はもういない。
彼は夢を叶えた。
その国に不幸な者はいない
豊かで、平和で、そこは幸せな国だった。
さて・・・
愚かな王の話を続けよう
ある日、王は逃げた。
理由はない
ただ逃げ出した。
それから永い時が流れ
無様な男が国へと戻った。
王ではなく旅人として
しかしもうそこには何もない。
国はなく、民はなく、
幸福も、しかし不幸すらなく
そこは何もない廃墟
男の瞳に廃墟に刻まれた文字が映る
その瞳から涙が溢れ、男は嗚咽する。
壁面が崩れ落ちる中、いつまでも泣き続ける。
かつて夢を掴んだその手には
今はもう何もない。
それか彼の選んだ道だった
愚かな話だ
本当に馬鹿で哀れで
愚かな話だ
・
それはとても静かな星の夜
男は眠りの底で泣いていた。
過去への後悔、しかし戻れない。
いくら償えど償いない
夢が終われども、涙は止まらず
胸の痛みは今もなお燻り続ける。
瞳を開き、手のひらを見る。
そこにはもう何もない。
ただ生きている事実だけ。
動こう
それしかないから・・・
深い夜更けすぎ、アレフは長い眠りから目覚めた。




