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白き星に祈りを込めて  作者: ななしとせ
第7章 スコルプ異形体討伐作戦
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第66話 空を見上げて

 音もなく粉雪が舞い落ちる。

 薄暗い静寂の中、赤黒い大地が深々と白に染め始めていた。


 寒風が僅かな音と共に吹き抜け、また静寂が包み込む。

 そんな冷たい静けさの中、アレフは独り佇んでいた。


 彼は倒れる少女を見つめていた。

「君は光だ。私が幾ら焦がれても絶対に触れられない」

 力無く呟く彼の瞳は、暗く虚だった。


 少女の同じ程にアレフもまた瀕死だった。

 全身に傷を負い、大量の血を失っている。

 普通なら既に失血死、まだ生きていることが不思議な有様だった。


「闇は光に勝てない。負けると分かっていた。だから君に逃げろと脅した・・・私はとんだ卑怯者だ」

 アレフはふらつきながら踏み出した。


 もう余力すらない。一歩も動けるはずがない。

 それなのに体を引きずるように少女の傍へと歩き始めた。


 途中、懐から小瓶を取り出し一気に飲み干した。

 中身は魔力を回復させる魔力充填剤だった。

 小瓶程度では魔力欠乏症を緩和する程度でしかない。

 これは絶体絶命時の最後の切り札だった。


 僅かに回復させたアレフは、血塗れの少女の側で片膝を降ろした。

「償いはする、とても足りないが」

 そう言うと、少女の傷口に右手をかざし詠唱を始める。

 唱えたのは治癒魔法術式だった、


 弱々しい白光が、少女の身体を優しく包み込む。

 華奢な身体刻まれた無数の傷を、優しい光がゆっくりと塞いでいく。


 少しずつ、少しずつだが、少女の苦悶の表情が安らかなものへと変わっていった。


 途中、アレフが崩れ落ちた。しかし震えながら元の姿勢に戻る。が僅かに弛緩する。

 回復していく少女とは真逆で、アレフの容態は急激に悪化していた。

 彼はただひたすらに治療に専念していた。ただ自身の止まらない胸の血が、少女を汚さないようにだけは気遣いながら。


 ・


 傷がほとんど塞ぎかけた時、少女の目蓋が痙攣を始めた。目覚めの兆候だった。


「・・・え?」

 目を覚ました少女は驚きに目を丸くした。

 敵だった男が、何故か自分を治療していたからだ。


「あの・・・私は敵なのですが?」

「治療中だ、動くな」

「あっ、はい」

 戸惑う少女の声は弱々しかった。

 傷は癒えても消耗した体力は回復していない。至極当然だろう。

 それでも死の窮地からは逃れていた。


 突如、横殴りの突風が吹き抜ける。

 アレフは少女を覆うように動き、彼女に雪が降り注がないように庇った。

「君の勝ちだ。罰は後で受ける。だから少しだけ待ってくれ」

「え?私が、勝ったのですか?」

「そうだ」

 雪まみれのアレフは寂しそうに笑った。


「あのあの!お母様はご無事ですか?」

「生きている。君の後に治療する。もう手出しはしない。約束だ」

 涙を浮かべる少女に、アレフは視線を合わせず微笑んだ。

「ありがとう・・・ござい・・ます」

 よほど安心したのだろう、少女は感謝を言い終えないまま、再び気を失ってしまう。

 その顔はとても安らかだった。


「だから礼はやめろと言った」

 アレフは寂しそうに囁くと、寝息を立てる少女の髪を撫でようとする。

 しかし自らの血塗れの血が視界に入ると、ためらうようにその手を止めた。


 ・


 少女の傷は完全に塞がり、治療が終わった。

 少女の体にはまだ乾いた血がこびりついているが、傷の痕跡は完全に消えていた。


「何故殺さなかったのですか?」

「私が負けたからだ」

 背後からの声に、アレフが振り向かずに答えた。

「そうですか」

 声の主は近づくと、少女を見守るアレフの横で立ち止まった。


 声の主はライファだった。

 アレフが貫いた胸の傷が、自身で治療したのか完全に消えている。

 しかしその顔は血の気を失い蒼白だった。


「彼女は強かった。尊敬に値する」

 アレフは横目でライファを見ると、再び少女に視線を戻した。

「一部始終は見ていました。何故あなたが負けを認めたのは分かりかねます。ですが、あなたがティエリー・・この子を助けた事は事実です。心よりの感謝を」

「勝者にこそ感謝を。敗者には送れば、それは拷問に等しい」

「・・・そうですね。この子に感謝を」

 ライファはふらつく体で少女に近づくと、眩しそうに少女の頬を優しく撫でた。


 いつの間にか吹雪は止んでいた。

 雲間から漏れ出る陽光がアレフ達を照らす。

 薄明りに染まる姿は疲れ切っていた。 


「この子の名前はティエリー、私が魂を分けて造った分身(わかつみ)です。私の何よりも大切な娘です」

「そうか、良い子だな」

 アレフは疲れた声で言うと、避けるように視線を外した。

「はい、私の自慢の・・・娘です」

 ライファもまた恥じるように目を伏せた。


「我が娘ティエリーに感謝を、そして勝利を讃えます。いいえこれも違いますね・・・ありがとうティエリー」

 ライファは静かに微笑むと、安らかに眠る我が子の背中を優しく撫で続けた。


 その姿は子を慈しむ母そのものだった。


 ・


「私は、主神が御魂を分けお造りになられた分神(わかつかみ)です」

 少女を撫でながら、ライファが話しかけた。


「神とは精神を支柱とする存在、よって物理的な力無くでは滅びません。首を切っても、体が消滅させても殺せず再生します。ご存知でしたか?」

「一応は。昔とある女神に一通りは聞いた」

「納得しました。だから、あなたは私達について詳しかったのですね」

 そう言うと、ライファは自身の胸に手を置いた。

 そこはアレフが刃で貫かれた場所で、傷は消えていたが、服には穴が空いていた。


「あなたがどのような力を使ったか分かりません。分かることは、あなたが私の破滅の力を切り、魂までも貫いたこと、あと少しで私を滅んでいたでしょう」

「だが及ばなかった」

「それでも私が倒れ、あなたは立っていた。真の勝者はあなたです」

 そう言って深いため息を吐くアレフの様子に、ライファが苦笑を浮かべた。

「本来なら私が滅んでいた。そうならなかったのは、あの子のおかげ、本当に奇跡ですね」

「奇跡だと?ふざけるなよ!」

 突然、アレフの怒号が響き渡った。


 アレフがライファの胸ぐらを掴み上げた。

 全身は怒気に溢れ、まるで死闘を彷彿させるものだった。

「奇跡なんて下卑た言葉を使うな。それは貴方の娘への侮辱だ」

「・・・そのようなつもりは」

「まだ分からないのか?貴方の娘は心の底から戦いを怖がっていた。それでも勇気を振り絞り、命を掛けて戦った。その結果、彼女が勝った!だから貴女が生き残った!そこに奇跡はない!そんなものはない!彼女の勇気を!彼女の想いを奇跡なんてくだらない言葉で汚すな!」

「・・・あなたの言う通りです」

 ライファの瞳に涙が浮かび上がった。

「そうですね。ティエリーごめんなさい、ありがとう・・ありがとう」

 双眸から涙が伝い落ち、こらえきれない嗚咽が漏れていた。


 アレフが少女と母に背を向ける。

 その背中と拳は揺れ、激しく食いしばる口元からは血が流れて落ちていた。


 ・


 いつの間にか落ち着きを取り戻したライファは、眠り続ける少女ティエリーを両腕で優しく抱え上げる。

 そして彼女は少女を抱えたまま、彼女たちに背を向けるアレフの正面へと回り込んだ。

「あなたの傷を治療させてもらえませんか?このままでは死んでしまいます」

「遠慮しておこう、私は不老不死だ、この呪いのせいで死にたくても死ねない。気持ちだけありがたく受け取らせてもらう」

 どこか呆れ顔のライファに、アレフは首を振った。


「・・・それでは話を変えましょう」

 そう言うとライファは唇の端を吊り上げ、意地悪そうな笑みを浮かべた。

「世のことわりで、敗者は勝者に従うものと決まっています。そしてあなたはティアリーに負けたのです。つまりどういうことか分かりますね?」

「言う事をきけ、と」

 ライファの問いに、アレフは僅かに眉をひそめた。

「その通り。なので、ティエリーの名代として敗者に要求をします。宜しいですね?」

「受けよう、あなたの破滅の力なら、私を殺すのも容易いだろう。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

「私を何だと思ってるのですか・・・」

 迷いのない即答に、ライファは呆れ顔を浮かべた。


「確かに私は破壊を司る神です。だからと言って、誰これ構わず滅ぼすわけではありません」

「それはすまなかった。正直に貴方の所業の数々を考えると、どうも悪い方向に考えてしまうものでな」

「痛い指摘ですね。自業自得と素直に受け止めましょう。理由はあったのです・・・理由は」

 アレフの皮肉に、ライファは少し寂そうな笑顔でそう呟いた。


「仕切り直しましょうか」

 ライファはポンと手を打つと、再び意地悪い笑顔を浮かべた。

「では要求します。貴方は望みを言い、私にそれを叶えさせなさい。よろしいですか?」

「は?」

 アレフがポカンと口を開けた。

「さあ何でも望みを言うのです。神として可能な限り叶えましょう」

「いや待て、勝者と敗者の立場が逆転してるぞ」

 アレフが眉をひそめた。


 普通は勝者が敗者に望みを叶えろと言うものだが、今回は勝者のライファが、敗者のアレフの望みを叶えさせろと要求している。

 これではどちらが勝者だか分からない。困惑するのも当然だった。


「・・・どういうつもりだ?」

「そうですね、助けられた借りは作りたくないから、とでもしておきましょう」

 ますます意地悪く笑うライファに、アレフは困ったように考え込んだ。

「望みはない、別の要求にしてくれ。そもそも貸しを作ったつもりもない。からかうのはやめてくれ」

「からかってなどいませんよ?それにしても困りましたね・・・・どうしますティエリー?」

「はい、お母・・・えっと・・主様」

 ライファの胸に抱えられていたティエリーは、いつの間にか目を覚ましていた。


 ・


「あの・・・」

 ティエリーはライファに抱えらたまま、おずおずとアレフを見上げた。

「助けて貰ってあり・・・あ、お礼は駄目なんですよね・・あのですね私が勝ったそうなので、主様と同じことを要求します。どうかお答え頂けませんか?」

「いや、そう言われてもな」

 涙を浮かべ頭を下げるティエリーに、アレフは戸惑いの表情を浮かべた。


「人の想いを、覚悟を無碍にするな。それは命の尊厳を汚す。これはあなた自身が言った事ですよね?あなたの望みを叶えたいティエリーの想い、まさか無碍にしたりはしないですよね?」

「ぐっ・・・」

 ライファの意地悪い笑顔が、戸惑うアレフに止めを刺した。


「戦いの時、貴方の娘にも同じことを言われた」

「当然です、親子ですから」

 誇らしげに微笑むライファの胸もとで、ティエリーもまた嬉しそうに微笑んでいた。

「降参する・・・負けた、本当に完敗だ」

 微笑ましい親子を前に、アレフもまた静かに微笑んだ。


 ・


 いつしか雪は止み、雲間から指す陽光がアレフ達に降り注いでいた。  

「約束して欲しい」

 陽光の下、アレフの凛とした声が響いた。 

「これから先、私が仲間と思う者たちに手出しをしないと」

「分かりました、約束しましょう」

 ライファは厳かな声で答えた。 

 意地の悪い笑みは消え、今の彼女は威厳と気品に溢れる存在、神そのものへと変じていた。


「それだけでよろしいのですか?私は多くの命を、それに貴方の仲間も殺めました。間接的とはいえ獣人達を殺めもしました。そんな罪深い私の死を望まないのですか?」

 厳かにライファが告げると、ティエリーが泣きそうな顔で母にしがみついた。


「昔、子の目の前で母の命を奪った。許されない大罪だ。もう同じ過ちは繰り返さない。いや、この子がいなければ、また同じ過ちを犯すところだった」

 アレフがため息混じりに首を振った。


「命の代償に命を求めてはいけない。復讐は終わらない流血の連鎖を生む。最後は何も残らない」

「あなたは・・・とても多くのものを見て来たのですね」

 哀しそうに目を伏せるアレフを、ライファは慈愛に満ちた瞳で見つめていた。


「約束は守りましょう、ですが絶対ではありません。私にはやるべき事があります。その事であなた達とぶつかれば、その時ばかりは約束を守れないでしょう」

「その時は抗う。仲間を守るために全力を尽くすだけだ」

 神妙な面持ちで頷くアレフに、ライファは厳かな表情を僅かに崩して微笑んだ。


「私も尽力をしましょう。あなたと戦うのは心底御免ですからね」

「女神ライファよ、貴方のご厚意に感謝する」

「あら?敵に感謝をしては・・いえ失礼しました。あなたの感謝を受けましょう」

 深々と頭を下げるアレフを前に、ライファは静かに瞳を閉じた。


「名を喪えし主神よ、破滅を司る女神ライファの名において、アレフ・バンデットとの誓いを立てましょう」

 天を仰ぐライファの声が、白い大地に凛凛と鳴り響く。

「これより先、かの者が仲間と思う者に危害を加えないと」

 厳かな声が響く中、アレフは静かに頭を下げた。


 こうして神と人との誓いは為された。


 ・


「それではお別れです」

 ライファはそう言うと、無詠唱で発動した『飛翔』魔法術式で、ゆっくりと浮かび始めた。

 彼女の両腕には、笑顔のティエリーが抱かれている。


「そうでした、お伝えすることがありました」

 何かを思い出したかのように、ライファは途中で上昇を止めた。


「あなたの魂には、多くの亡くなった命の残滓がこびりついていると言いました」

「確かに聞いた。その残滓とやらは私が殺してきた者達の怨念だろうな」

「いいえ違います。感じられるのは、親しみ、慈しみ、そして悲哀の念です。あなたを慕い、最期まて想い続け、死後も共にありたいと願いです」

「ありえない」

 アレフが眉をひそめた。


「私は罪人だ。恨まれこそすれ、慕われるいわれはない」

「あなたがどう思おうと事実は変わりません。耳を澄ませることです。今は無理でも、いつの日か彼等の声が聴こえるはずです。あなたは独りではありませんよ」

「・・・」

 アレフは何も答えなかった。

 ただ長い、本当に長い沈黙があった。

 そして彼は空を見上げゆっくりと瞳を閉じると、涙を堪えるように瞼を振るわせていた。


「あなたの罪を咎める声はありません。あなはもう許されている」

「いや違う、少なくとも私が私自身を許せない」

 ライファの言葉をアレフは強く拒絶した。

「私は許さない、許したくない。許せば、私は私でいられなくなる」

「辿り着いた終着を拒み、果てなき旅を選ぶ、か。成る程、あなたは風追人なのですね」

「それは愚者の代名詞と聞いた。その通りだな」

 ライファは嬉しそうに微笑むが、対照的にアレフは自嘲の笑みを浮かべていた。


「それは正しく、それに間違いでもあります」

「・・・」

「風追人とは、形を持たない風のようにも、何者にも為れる者。しかし何者にも為れるからこそ、何にも為れない」

「・・・器用貧乏なのだな」

「愚者よりも愚かで、賢者よりも賢く、勇者よりも勇ましく、王よりも人を惹きつける。何者にもなれ、しかし何者にもならず、だから何処にもいて、何処にもいられない」

「それは結局、ただの愚か者だ」

「あはは、まるで誰かさんのようですね。不器用で生真面目で、きっと損ばかりしている、それなのにとてもやさしい人なのでしょう」

 ライファは瞳に涙を浮かべながら笑い始めた。

「あはははは・・・・あらごめんなさい。こんなに心の底から笑えたのは久しぶり、1万年ぶりぐらいかしら?あはははは」

 可笑しさを耐え切れないのか、ライファは堰を切ったように笑い続けた。


「風追人だろうと何だろうと、自分を許せない事に変わりない」

「ええ、それで良いのです。それこそ子守唄の中の風追人、あなたはそのままで良いと思います」

「・・・喜んでもらえたようで何よりだ」

「あはははは」

 憮然としたまま答えるアレフに、しかし女神は満面の笑顔で微笑み返した。


「彼方より彷徨う異邦人よ、分かたれし星々を紡ぐ織人よ、果てない風を追い求む旅人よ。いつしか、追い求める『風』へと辿り着くのでしょう」

「誤解だ。何も求めてない。もしそれが夢とかいう代物なら、そんなものはとうの昔に潰えた」

「潰えてなどいませんよ。何故なら貴あなたは生きている。まだ歩いている。それはまだ何かを追い求めている証に他なりません」

「私には何もない。もし望みがあったとしてもそれは・・・そこは遠い、遠すぎる」

「それでも貴方は歩いている。今も近づき続けている」

 アレフの絞り出された声に、ライファの優しい声が重なった。

「あなたは諦めない、心挫けない。だからこそ、いつか必ず辿り着ける。その日が少しでも早く訪れることを切に願います」

 眩しい陽光に下、ライファが満面の笑みで微笑んだ。


「さようなら。お互いのため、二度と会わないことを祈りましょう」

 突風が舞い起こり、ティエリーを抱えるライファを遥か上空へと押し上げる。

 やがてライファは閃光の速さで雲間の先へと消えた。


 ・


「やっと・・・終わった」

 アレフが深い息を吐き出した。

 吐息を冷たく白く染まり、彼の間を漂い続ける。

 白い空気はとても冷たく、傷ついた体を更に冷やす。


 見上げれば、空は雲だけだった。

 陽光がないことに安心し、彼は弱々しく息を吐く。

 再び降り始めた粉雪が傷口へと注ぐ中、空を眺めたまま動けない。


 その瞳は見えないはずの蒼い星を

 遥か故郷の星を幻に写す。


「早く帰りたい」

 彼は凍える声で呟き、いつもと同じに・・・


 いつもと同じ独りになった。


 ・


 これで良かったのか分からない。

 今は少女が生きていることを喜びたい。


 意識が薄れる

 まもなく、かりそめの死が来るだろう。

 どうでも良い、死んでも蘇生される。


 少しだけ休みたい、だから両膝を付いた

 静かさが心地よい。

 今は独りでいたい。


 何かが輝いた

 青い光の魔法術式の方陣

 誰かが迎えに来たのだろう


 光の中から誰かが駆け寄って来る

 イリスとキタラ・・・何故だ?

 何故、彼女達は泣いている?


 泣かないで欲しい

 なのに理由が分からない。

 だから最後の力で微笑んだ。


 彼女達は泣き止まない

 理由が分からない

 悲しませたことが哀しい・・・


 どうしようもないから、空を見上げる

 どうしようもないので、ため息を吐く

 空は晴れておるのに、どうしようもなく暗い


 堕ちる吐息が頬に触れる。

 今は、その温もりだけが嬉しかった。

今回でスコルプ異形体討伐作戦は一区切りとなります。

次からは戦い後の後日談が少し続きます。


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