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白き星に祈りを込めて  作者: ななしとせ
幕間4
32/76

忌み話 鬼に堕ちた人

注:もし不快なら後半部だけ読むか、飛ばして下さい。

私は自分の文の程度を知りません。謙遜抜きで、大したものではないと考えています。

ただ、この話の前半部はかなり感情を剥き出しているため、少し不快に思えてしまうかも知れないです。

その際はどうかご勘弁をお願いします。

 赤い?ああ・・・アカイ

 ・・・赤い・・・あカ・・い・・・

 あの時の世界は、ナニもカもが紅く染まッてイた・・・


 狂おしき血の匂い、つんざく悲鳴、肌を焼く炎

 ああ、あの世界はアカかった・・・・


 母の全身を染めた鮮血の赤

 のたうつ父を焼く炎の赤

 腹から垂れ落ちる赤い私の臓腑


 ああ思い出した・・・オモいダシた・・・・


 思い出した、オモイダシタ、思い出した?思い出しタ!

 出した・・・思い・・・だし?オモイダシタ・・・した!

 した!した!した!


 ・・・・あははは・・・・・・・・・・オモイダシタ!

 この赤は、あの時の紅と同じアカ

 死の赤だ。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ・・・嬉しい

 それとも悲しい!いいや憎い?

 それでも寂しい!だから哀しい?


 でも・・・・おかしイ?

 オカシイ!ああ可笑シい、愉快で可笑しい。

 疑問で、おかしい?

 可笑しい?おかしい!


 なん・・・で・・・この世界は全てアカくない?


 赤は死、アカは死

 死?死!死、死、死,死!死、死?死!死、し、死!シ、死、死?死?死、死、死、死、死!


 全ては死だ!


 なのにセカイはまだイきている?

 ナんデ、この世界は赤じゃナイ?


 ・・・そうだ・・・・殺そう・・・ソウシよウ

 あはは!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 そうしよう?そウだ、ソうしよウ?

 いや違う!そうシよう!!!!!!!

 

 そうすれば全部、赤くナる

 世界はキっと赤く変わル。


 首を切断サレた妻のよウに!

 手足を裂カれた我ガ子のヨうニ?

 生きたまま焼カれた父ノように!!!

 肉塊トなり果テた母のよう?・・・に!!!!!!!!!

 

 あはは、滑稽だ?

 そう、こっケイだ!

 死を与えよう、そうナニもカモを殺してヤル

 

 殺してやる、殺してヤる、こロシテやル


 殺してやる、コロシテヤル?ああ、殺シてやる、そう殺してやる、イイや殺してやる


 この目に写る全てを殺す!


 この目に映る全てを赤く染めてヤル!


 復讐?

 そう復讐、だけど違う

 これは慈悲


 死は慈悲、だけど苦しみから解き放つ慈悲

 きっと慈悲だと?

 あア、慈悲なンだ。


 何もかもを殺しつくし、

 全てに死の報いと慈悲を与えよう


 あの赤く染まった世界をもう一度?


 あア!ナンと滑稽で・・・

 何ト哀しい・・・



 だから・・・・・・お前たちを殺す・・・


 ・


 これは、とある馬鹿な男のつまらない話だ。

 愛しいものを全て奪われ、そして狂った哀れな男の愚かな話でしかない。

 

 本当なら意味のない話でしかない。

 だけど、彼の過ちはあまりに大き過ぎた・・・・



 彼が思い出せる一番古い記憶は、赤く染まった世界であった。


 彼の村は盗賊に襲われ壊滅した。

 その時、両親は殺され、村は焼き尽くされた。


 死にかけた彼の眼前には、鮮血と炎で真っ赤に染まっていた。


 そして深手を負ってた幼い彼もまた、怒りと悲しみが染める絶望の中で死んだ。


 しかし・・・それは奇跡なのか?或いはただの気まぐれなのか?

 彼はある神の力によって蘇った。


 ・・・蘇ってしまった、というべきだったのかも知れない。


 生き返った彼の心に満ちていたのは憎しみであった。

 それは理不尽な死を与えた者達への憎しみと、

 そして何も出来なかった自身の弱さへの憎悪であった。


 だからこそ彼が強さを求めたのは必然であったのだろう。


 彼は傭兵となり、そこで強くなろうとした。

 剣を振るい、強さを求め続けた。


 しかし、非情にも彼は弱すぎた。

 彼には剣の才も、策略の知もなかった。

 それどころか、あらゆる才能がない、愚鈍な人間でしかなかった。


 見る者は皆、彼を愚図と罵り、そして笑った。

 しかしそれでもなお、彼は力を求め剣を振るい続けた。


 傷を負い、死にかけ、裏切られ・・

 しかし、それでも彼は立ち上がった。


 時は流れ、歳40を超えた時になり、彼はようやく人並みの強さまで這い上がったのであった。

 しかし不思議な事に、その容姿は未だ若々しいままであった。

 皆が彼を不気味と恐れたが、しかし彼はそれを気にせず、寧ろ衰えない肉体を喜んでさえいた。


 そして歳50を越えた時、彼は強者と呼べる力を手に入れ、そして妻子を得た。

 この時になり、彼は生まれて始めての幸福と呼べるものを手に入れたのである。


 ようやく手に入れた幸福を、彼は何よりも大切にし、慈しみ、そして愛した。

 幸福をまどろむ中、いつしか彼の中からは、かつて抱いた憎悪の情はなくなっていた。

 ・・・・・はずであったのだが・・・・・・


しかし、彼の愛した幸福は唐突に奪われた。


 ある国が略奪のために彼の街を襲い、その巻き沿いで彼の妻子が殺されたのである。


 襲われた時、彼は別の戦で街を離れていた。

 だから彼は何も知らず、どうすることもできなかった。


 そして彼が戦から帰った時、街は無残に朽ち果てていた。

 焼き尽くされ、殺し尽くされ、何もかもが灰燼と化していた。

 そして彼は残骸と化した我が家で、無残に朽ち果てた妻子を見つけたのである。


 ・・・そこから先は・・・語ることが難しい・・・


 朽ちた果てた妻子を抱き、彼は絶叫し、泣き、哭き続けた。


 喉が擦り切れてもなお叫び

 涙が出て途切れてもなお泣き、

 感情が朽ち果てててもなお哭き続けた。


 そしていつしか彼は、かつてみた赤い世界を、

 かつて盗賊によって両親が殺された時を思い出していた。


 ・・・思い出してしまった。


 魂の奥底からドス黒い憎悪が湧き出し、心を暗闇へと染めた。

 暗闇は悲しみを憎しみに書き換え、涙が枯らした。

 涙が枯れ果てた瞳は愉悦に満ちた狂気を宿していた。


 そして、いつしか彼は嗤っていた・・・・


「ああ・・・あの赤い世界はなんと愛おしいか。

 さあ、殺そうか・・・」


 一人の男が狂気に染まり、そして鬼へと堕ちた。


 そして鬼は、闇夜に狂気の嗤い声を響かせ、朽ち果てた残骸の中をゆっくりと歩き始めた。




 やがて一つの国が焼く尽くされ、殺し尽くされ、滅亡する。

 それは、ある鬼がもたらした遥か遠い昔の事である・・・・


  ・


 銀光の下で暫くの間ディーファと語り合ったアレフは、彼女を先に返らせた後もそこに残り、ただ静かに天空の星を眺め続けていた。


 物音一つもない静寂の中、突然フィロの通信がアレフの耳へと響く。

『取り敢えずは、お疲れ様、とでも言っておきましょうか?』

 それはフィロのねぎらいの言葉であるはずなのに、しかしその口調は凍えるように冷たい。


「フィロ、随分とご機嫌斜めのようだな?」

 苦笑まじりのアレフの指摘に、しかしフィロは依然として冷たい。

『当然でしょう?多文明への接触は多少なら仕方ないでしょう。しかし今回はやり過ぎた。国家間の争いになど介入すべきではなかった』

「だから皆殺しにされる獣人達を見殺しにしろと?」

 フィロに問い掛けるアレフ、その声には無機質で、まるで無感情のものであった。

『もし、見殺しにすべきだった、と答えたら、あなたは私を破壊するのでしょうね?』

「当然だ」

『・・・何が良かったなどは敢えて言いません。しかし思い出して下さい。ここは400年前の世界です。あなたの行いが、未来を大きく変えてしまうかもしれない。いいえ、もう確実に変わってしまった」

 僅かに間を置い、フィロは再び言葉を紡ぐ。

『遠くない将来、この世界は滅びます。本来私達がいるべき400年後には世界は滅んでいるのです』

「なら、その結末を変えよう。私達はその為に神によってこの時間軸に送り込まれた。違うか?」

 アレフは以前フィロと話し合った可能性を告げる。

 しかしフィロの反応は冷たい。

『それは可能性に過ぎない。確かに神は、分神(わかつかみ)は存在します。しかし、例えそうであろうとも、私達には関係ないことです。あなたの目的は故郷への帰還、私の目的は他宇宙の情報収集です。この星の未来とは関係ありません。今は私達が生き残ることこそが最優先です。未来の改変はあまりに危険で、すべきではない、何故なら』

「歴史が改変された場合、因果律とやらの修正により、私達が消滅する可能性があるから、だったな?」

『・・・それを知っていて!なんであなたは歴史を改変したのですか!あなたならこの結果を予想できたはずです!』

「何かを助けることに理由などいらない。当然のことをしただけだ」

『くだらない偽善を・・・今回は運が良かった、まだ私達は無事です。ですが次はどうなるか分からない。いいですか、もうおとなしくして下さい!それが私とあなたにとって最良の道です!いいですね!』

「・・・わかった、控えよう」

 無感情なアレフの声での同意を最後に、フィロからの通信が打ち切られたのであった。


                 ・


 それからしばらくの間、アレフは銀の星を眺め続けていた。

 何故だろうか、その瞳にはどこか禍々しい光を宿っている。


 両手を広げ、アレフは白き星に想いを馳せる。


   白き星、白き世界

   あの赤い赤い世界とは違う。

   あの世界と比して、なんと美しく

   そして妬ましいことか・・・


 彼はフィロに聞こえぬよう小声で呟く。


「ここは理想の場所だ。ここでなら魂をすり潰せる。ためらうこともない」


 静かな銀光を全身に浴び、彼は静かに嗤う。


「ここで叶えよう、ここで解放されよう。イフの分神よ、永遠に呪われろ」


 凍える月夜の下、かつて鬼に堕ちた男は静かに呪詛の言葉を唱えた。

仕事の異動があったため、次は3月8日更新以降となります。

出来る限り早く更新します。

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