第28話 銀の星を仰いで
色々なことがあり更新遅くなりました。
これを機に止めるべきとも考えたのですが、自分の好きで始めたことなので、満足できるまでやってみようと思います。
日は沈み、辺りは闇に満ちていた。
戦場の喧騒は既になく、辺りには吹雪の音がもの悲しく響き渡っていた。
埋ゆく雪の上で、獣人の少年が死に瀕していた。
手足は殆ど千切れ、瞳は二つともつぶれていた。
動けずに、何も見えず、ただ孤独に死を待つしか出来なかった。
耳だけは聴こえていた。
暗闇の中、寒々しい吹雪きの音が少年の心を虚しく凍らせていた。
とても寒く、とても痛かった。
とても怖くて、それに悲しいかった。
死ぬのが怖い
だけど早く死にたかった。
だけどやっぱりとても怖い・・・
「怖い・・・怖いよ・・・みんな・・・」
吹き荒ぶ雪に埋ゆく中、少年は独り寂しく泣いていた。
少年は唯一残った右腕を上げた。
それが誰かを求める最後の力だった。
しかし誰も来ない。
絶望に全てを諦めた。
少年の力尽きた右腕が落ちた時、誰がその腕をガッチリと掴んだ。
「すまなかった、遅くなってすまなかった!」
その声はとても暖かく、そしてとても暖かい手だった。
「あり・・・がと」
少年は潰れた喉で声を絞り出した。
瞳は潰れていて、もう涙は流せなかった。
誰かの力強く握る手から、不思議な温もりが伝ってきた。すると全身の痛みが少しずつ消えていった。
「あった・・・かい・・・嬉しい」
温もり中、少年の意識は少しずつ薄れていった。
もう寒くない、もう怖くない
暖かいな、優しいな・・・
「君の仲間達も無事だ。もう心配しなくていい」
「は・・い」
少年はようやく笑い、そのまま静かに息を引き取った。
それはとても安らかな顔だった。
・
アレフはしばらく動けなかった。
少年の安らかな笑顔に、身も心も打ちのめされていた。
「・・・帰ろう、仲間が待っている。暖かいぞ」
アレフは少年を優しく抱き上げた。
「・・・もっと早く・・・すまない、すまない」
答える者のない懺悔を繰り返しながら、アレフは独り歩き続けた。
鳴り響く吹雪の中、鮮血に染まった大地はいつしか真白く染めっていた。
・
獣人達の降伏後、アレフの行動は早かった。
重傷者の治療のため、都市の壁を飛び降りて行ったのだ。
しかし助けるのは先程までの敵、様々な理由から、部隊に手助けを求める訳にもいかない。
たった一人の戦いだった。
そこには地獄だった。
様々な戦場を知るアレフでも、ここまで酷い有り様はあまりない。
そこは死と苦しみに満ちてした。
痛みに苦しむ者はまだマシだった。
本当に死を間近に迎えた者は、苦しむことすらできずに泣いていた。
それすらもマシだったのかも知れない。
負傷者よりも死者の方が遥かに多い。骸では、苦しむことも泣くことも出来ないのだから。
アレフは無我夢中で治癒魔法術式で治療を続けた。
途中何度も魔力切れを起こしかけたが、フィロに転送させた魔力充填材で補充し、ほぼ休みなしで続けた。
結果、多くの命が救われ、それでも幾つかの命が助からなかった。
命が失われても、涙を堪えるしかなかった。流す時間すら惜しかった。
その姿に動かされた者達もいた。
魔力強化体達には、当初アレフへの批判が少なからずあった。
しかし懸命に命を救おうとする姿を見て、いつしか批判の声は消えていた。
誰ともなく敬礼を送り、手伝う者すら現れていた。
それは傷付いていた獣人もどうやらで、魔力強化体と獣人とが協力してアレフを手伝う光景があった。
救いようもない地獄の中、唯一そこだけが平和だったのかもしれない。
それからようやくひと段落ついた時、フィロから通信が届いた。
怪我人を見つけたが生命反応が小さくて発見が遅れた、という。
もう助からないと言われたが、それでもアレフは駆け付けた。
結局辿り着けたのは死の直前で、最期に出来たのは痛みを和らげることだけだった。
静かに息を引き取る少年を抱えながら、アレフは泣いていた。
謝りながら泣くことしかできなかった。
・
捕虜となった獣人達は、ウェネスの片隅にある収容所へと運ばれた。
アレフはそこでも治療の続けていた。
獣人達に不法な暴力が振るわれないように監視するためもある。
幸いにもそのような事はなく、獣人達は丁重に扱われていた。
それからも押し寄せる様々な事を処理し、ようやく終わったのは深夜遅くだった。
この時のアレフは心身疲れ切っていた。
数十人もの獣人の治療をしたのだ、当然だろう。
諸々を引き継ぎ、ようやく捕虜収容所をアレフだが、独房に戻る途中で力尽きた。
途中で芝生に倒れ込むと、そのまま空を仰ぎ見ていた。
吹雪は止んでいた。
今は夜空に星が煌めき、中心には大きな銀の星が優しく瞬いていた。
「ここにも月か」
アレフは遥か故郷を思い出した。
友の無念を引き継い戦った。
結果、宇宙の彼方に飛ばされたが後悔はない。
友との約束を果たすため、いくつもの宇宙を越えた。
故郷はまだ遠い。
生きて再開する、それが友との約束
必ず果たそう
必ず・・・
思いを馳せる中、抗い難い眠気が意識を刈り取ろうとする。
特に抵抗はない。だから少しずつ瞼を閉じようとした。
「ここで寝るな!」
透き通るような美しい声が鳴り響いた。
眠たげに開けると、そこにはディーファの姿があった。
銀の星の瞬きに、真白い肌と整った容姿とが照らし出されるその姿は、ただただ美しいとか表現できないものだった。
「・・・女神」
アレフは思わず口を滑らしていた。
「女神とは私の事か?それは嫌味か?」
アレフの声は聞こえたようで、ディーファは心底嫌そうな顔を浮かべた。
「嫌味はない、本音だ」
真顔で答えたアレフは、ディーファを一瞥だけすると、直ぐに月へと視線を戻した。
「・・・止めろ、そう言うのは慣れてない」
「そうだな、私も慣れていない」
頬をわずかに染めるディーファに、アレフは微笑を返した。
「ほう?冗談を言う余裕はありそうだな」
ディーファが呆れ顔でため息を吐いた。
「さっさと宿舎に帰るぞ。風邪でも引かれては、私の管理責任を問われかねないからな」
「少しだけ休ませてくれ。必ず独房には戻る」
「ああん?私の話を聞いてなかったな。宿舎に帰ると言ったぞ」
アレフの返事にディーファが顔を引き攣らせた。
ディーファは軽く溜息をつくと、横たわるアレフの横へと座った。
「マリニア様からお達しだ。今回の功績により謹慎は解除だ。隊舎にお前の部屋を割り当てておいた。案内するから来い」
「分かった・・・少し待ってくれ」
アレフはそう言うと瞼を閉じた。
少しの間だけ沈黙が流れた。
沈黙を先に破ったのはディーファだった。
「おいアレフ、まさか寝たのか?」
彼からの返事はなく、静かに寝息を立てていた。
ディーファは起きていない事を確認するようにアレフの顔を凝視した。
「・・・ありがとうな。お前のおかげで助かった」
ディーファは寝ているだろうアレフに微笑んだ。
「お前がいなかったら、一体どうなっていたか考えたくもない。本当に感謝している」
そう言うとディーファは恥ずかしそうに視線を逸らした。
「この借りを返したいが、今は何も出来そうにない。少し待ってくれ。必ず返すからな」
「気にするな。やれる事をやっただけだ」
「なっ!起きていたのか!」
答えたのはアレフだった。彼はいつの間にか目を開いていた。
気が付いたディーファは羞恥に頬を赤くに染めた
「起きてたのならそう言え!」
「いや・・・寝ていた。声は聞こえていたが」
「それは起きていたと言うんだ!」
「そうなのか?それはすまなかった」
恥ずかしそうに叫ぶディーファを、アレフは眠たそうに見つめていた。
そのまま会話が途切れ沈黙が続いたが、先にディーファが根を上げた。
「・・・頼む、何か言ってくれ」
「ん?すまない、少し見惚れていた」
「見惚れて?こんな殺風景な所で何に見惚れるんだ?何もなかろうに」
ディーファの質問に対し、アレフは無言でディーファを指差した。
「はあ?」
ディーファはアレフを睨みつけた。
「冗談ならもっと上手く言え。もしかして不満でもあるのか?」
「特に不満はないし、冗談でもないのだが・・・」
怒り出したディーファに対し、アレフは困り顔で頭を掻いた。
「美しいから見とれていた。何か問題があったのか?」
「大有りだ。私をからかって遊んでいるのだろうが」
「そんな趣味はない・・・嫌だったなら申し訳なかった」
「・・・・本当に本気で言っていたのか?嘘偽りもからかいもなしに?」
「まあ・・・な」
頷いたアレフの姿を見たディーファは、困り顔で天を仰いだ。
「・・・」
「・・・」
再び沈黙が支配した。
今はお互いが困惑して固まっていた。
「・・・申し訳なかった」
「いや・・・謝られても困る」
先に切り出したのアレフに、ディーファが困惑顔で答えた。
「では、邪心中で純粋に君を褒めたい場合はどうすれば良いと?」
「止めろ、そんなこそばゆい事を聞くな、空気を読め。どうせ世辞だろうが、私はそんなものに慣れていない。美しいとか言われても困る」
「世辞のつもりもなかったのだが、迷惑だったか」
「つもりがないのならなおさら困る。迷惑・・・とは違うが、とにかくその手の世辞は止めてくれ。いや、イリスやクリス相手なら構わないと思うが、私は駄目だ。頼むぞ」
「そうか・・・」
そう言うとアレフは寂しそうに銀の星を眺めた。
「なあアレフ・・・もしかして落ち込んでないか?まさか今の止めろと言ったせいか?」
「落ち込んではいるが、さすがにそのせいではないな」
「・・・獣人の件か」
「そうだな。彼等の多くを救えなかった。それが今になって響いている」
そう言うと、アレフは手の平を星空へとかざした。
「この手は小さい。もっと大きければ、命を取りこぼさなかったかもしれない。あまりに無力で、それが無念だ」
ディーファは両手を腰に当てると、大袈裟にため息を吐いた。
「私が言うのもおかしな話だが、お前は良くやったと思う。気にするなとは言えないが、落ち込む事ではないと思うぞ」
「必要な事だ。後悔し、次に繋げる道を見つける。それが私なりの死者への手向けだ」
アレフは虚な瞳で話を続けた。
「矛盾した話だ。私は死が嫌いなのに、戦場から離れられない。この手はいつも血だらけで、死とは無縁ではいられない。結局は偽善者なんだよ私は」
淡々と言葉を紡ぎながらも、涙を隠すかのように銀の星を見つめ続けた。
・
寂しそうに語らうアレフの姿を、ディーファは見つめていた。
何故か胸が締め付けられる不思議な感覚がした。
ふと考えてしまう。
彼には自分はどんな存在に見えているのか、と。
多分、ろくでもないのだろう。
初対面でいきなり殺そうとした。
ボルゴンから部下を助けてくれたのに、独房にぶち込んだ。
笑える程にろくでもない存在だ。
彼は獣人達を死の呪いから救った。
それで自分はレグルスとの約束を果たせた。
感謝しかない。
でも彼は自分を・・・
「・・・・あれ?」
なんでこんな事考えてるのだろうか?
この男が大嫌いだったのに・・・
私は彼に感謝している。
それなのに私は獣人達を虐殺した。
死を嫌う彼とは真逆に・・・
きっと彼は私を・・・
「・・・なんで・・・私泣いてる?」
瞳から熱いものが伝い落ちていた。
「どうして?・・・え?悲しい?いや違う・・・」
どうして泣いているのが分からない。
ただ無性に悲しくて、涙を止まらなかった。
・
泣き出したディーファにアレフは戸惑った。
か弱い少女が泣いていた。
初めてディーファに出会った日を思い出した。
ひと目見て、『背伸びをして無理をしている少女』と分かった。
それは正しかった。
目の前で泣いている少女を見れば、否定できるはずもない。
彼女はまだ17歳という若さだ。
多くの責任を背負い、その重さに苦しんでいる。
彼女の不甲斐なさを叱った事がある。
しかしそれは大間違いだった。
叱るのではなく、諭して示し、それから導くべきだった。
彼女には器がある。
しかしまだ十分に成長していない。
その成長を見届けたいが、無理な話だ。
友との約束がある。帰らなくてはならない。
時間の限り力になろう。
残り多くのない時間の限り・・・
・
アレフは空を仰ぎ見た。
「今夜は月が綺麗だな」
語りかけながら、アレフは銀に輝く星を見つめ続けた。
「ツキ?」
聞きなれない言葉に、ディーファは涙を拭いながら答えた。
「なんだそれは?あの大きな銀の星のことか?」
「異国ではルナとも言う。月もルナも好きな言葉だ」
不思議な響きの言葉を呟き、ディーファは大空に輝く銀色の星を仰ぎ見る。
そこに美しく輝く銀光に彼女は思わず感嘆の声を漏らす。
「綺麗だな。空なんて見なかったが、ツキか、それともルナか?本当に綺麗だな」
いつの間にか彼女の瞳から流れていた涙は止まっていた。
うっとりと銀の星を眺めるディ-ファに、アレフは優しく微笑み掛ける。
「私の故郷にも月がある。この世界の月と同じ様に綺麗だ。本当に良かった、この月を見られて」
「月か・・・良い響きだ」
「悲しい時、絶望した時、いつも月を見ていた。あの優しい光に何度も救われたことか」
アレフの言葉を聞いたディーファは、彼と同じ様に銀の星を眺め続けた。
・
ディーファは月を見ながら、拳を握りしめていた。
「アレフ・・・」
ディーファは次から視線を外すと、意を決したようにアレフを見つめた。
「頼む、聞いてくれ」
「ああ」
小刻みに震えるディーファに、アレフは優しい声で応えた。
「獣人達を殺したのは私だ」
目を伏せたディーファが涙声で話し始めた。
「私が殺すように命じた。お前が救えなかった生命も、元は私が傷付けさせたせいだ。私だ、私が殺したんだ」
ディーファは涙を流し続けていた。
そんなディーファをアレフは無言でも見守っていた。
「好きでやった事ではない。だが私は兵器だ。命令なら子供だって殺すし、殺させる。それが仕事なんだ。分かってくれ・・・いや分からなくても良いんだ。すまない、おかしなことを言った」
小刻みに震えるディーファを前に、アレフは静かに頷いた。
「分かっている。私も軍を率いて多くの戦場を渡り歩いた身だ。君の立場は理解しているつもりだ」
「・・・今の立場に不満はない。私の身分はマリニア様がお与え下さったもの、不満などあるはずもない。それでも殺してしまう立場だ。それが私の・・・すまない、さっきから何が言いたいか分からない」
「ディーファ、私は君を」
「言うな!聞きたくない!どうせ虐殺者だと軽蔑してるのだろ?そんな事、私が一番分かっている!」
「軽蔑?それは一番あり得ない事だ」
泣きながら俯くディーファの頭をアレフが優しく撫でた。
「君を尊敬している。苦しみ、足掻き、それでも諦めずに進もうとしている。そんな君だからだ」
ディーファが頭の手を振り払い睨みつけた。
「そんな訳ないだろうが!私は獣人を殺した虐殺者だぞ!」
「理由があったからだ。私とは違う・・・自分勝手な理由で多くの人を殺した私とは違う」
「・・・え?」
ディーファが驚きに目を丸くした。
「私は何十万人も虐殺した。何の罪もない人々をだ」
アレフは月を眺めながら淡々と語りを続けた。
「始めは敵だけを殺した。それでも飽き足らず敵の関係者も殺した。殺しに飢えて関係ない者達も殺した。無我夢中で幼い子供も殺した。殺し尽くした」
「信じられない・・・理由・・・そうだ理由があったのだろ?」
「ただの復讐だ。妻と息子を殺された、その復讐だった。復讐に酔い、復讐に狂い、殺しても殺しても飽き足らず、最後には国一つを焼き尽くした」
「・・・嘘だろ?」
「事実だ。最後には神に裁かれた。歳をとらない祝福が、永遠に死ねない呪いになった。当然の報いだ」
「・・・」
アレフが語り続ける中、ディーファはただ呆然としか出来なかった。
「君はまだ真っ当だ。私の領域にはいない。獣人達の死は戦争という機構のためだ。君はその中の歯車に過ぎない。嘆く必要はない。私のような本当の虐殺者とは違う」
アレフは力無く笑った。
「違う!」
ディーファが泣きそうな瞳で応えた。
「戦争でも私が殺したんだ。虐殺だった。私だってお前と同じだ。裁かれるべきなんだ」
「もう自分を傷つけるな。大丈夫だ、君は悪くない。私とは違う」
アレフは悲しそうに答えた。
「君は君のすべき事をした。仲間のために頑張っただけだ。罪はない」
「・・・すまない」
ディーファは少しだけ嬉しそうに微笑んだ。
少しだけ間を置きアレフはため息をつく。
「君は・・・どうか私のいる場所には来てくれるな」
アレフは視線を逸らすと、寂しそうに銀色の星を眺め始めた。
「辛い話をさせてしまったな。すまない」
ディーファが申し訳なさそうに頭を下げた。
アレフは視線を合わせなかった。
「気にするな、望んで言った事だ」
ディーファは心配そうに見つめる中、アレフは月を眺め続けていた。
「時が来たらお別れだ、この星に残るつもりはない。ここは良い所だ、それだけに私がいる余地はない」
「・・・止めろ・・・そんな悲しい事言うのは止めろ!」
ディーファがアレフの胸ぐらを掴み上げたり。
「冗談でも止めろ!自分を傷つけるなと言ったお前が、何でそんな悲しいことを言う!止めろ、本当に止めてくれ」
「・・・単なる事実だ」
「馬鹿野郎が!」
哀しそうな見つめるアレフを、ディーファは直視できなかった。
それでもディーファは顔を上げた。
それから精一杯の笑顔でアレフに微笑みかけた。
「私だってお前を尊敬してる、本当だぞ。お前は何もかも一生懸命にやってくれた。私達や獣人達に尽くしてくれた。そんなお前なんだぞ、頼まれても軽蔑なんかしてやるものか。どんなに嫌がろうと、心の底から尊敬してやる」
「それは・・・とんだ嫌がらせだな。ありがとう。救われた気分だ」
「これも単なる事実だ、今度自分を傷つけるような事言ってみろ、思いっきり殴ってやる。その上で、無理矢理にでもお前を救ってやる。それで受けた借りを倍返しにしてやる」
「・・・慰めるつもりが慰められたな」
「お互い様だ、馬鹿野郎が」
「全く・・・敵わないな」
「当たり前だ、隊長だからな」
アレフとディーファは互いに見つめ合いながら笑い合った。
・
月は優しく輝くが、それを見つめる者はいなかった。
ひとしきり笑い終えたディーファが、笑い涙を拭いた。
「もっとお前の事を教えてくれ。お前の星の事も知りたい」
「私の事?」
ディーファの頼みに、アレフが少しだけ驚きを見せた。
「特にこの星と変わらないと思うぞ。話せるような大した事もないしな」
「そんな大した事ない話を聞かせてくれ。聞きたいんだ」
アレフが困った様子で頭を掻いた。
「ありふれた話にしかならないなあ。例えば、古代遺跡の空中都市を落下させて大陸を吹き飛ばそうとした魔王を殴り倒して改心させた話?いや平凡すぎる。堕天した天使が教会を洗脳した」
「待て!ちょっと待て!それは大した話だ。絶対平凡ではないぞ」
いきなりの突拍子もない話にディーファは顔をしかめた。
「いや似たような事は山程あるから、別に普通の話だと思うが?」
「天使とか魔王とかの話が普通のわけあるかよ。それが平凡って、一体どれだけ破天荒な生き方をしてたんだ」
「至って普通のつもりだったのが。確かに、色々巻き込まれてはいたな」
「らしいと言うか、何と言うか・・・まあ面白そうだから是非とも聞かせてくれ」
二人は笑いながら頷き合った。
そして静かなる夜の遥けき銀光の下、彼等は暫くの間、楽しそうに語り合った。
次の話は少し精神を削って書かないといけないところなので、少し時間を掛ける必要があり30日更新の予定となります。
どうかご勘弁を




