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『京介はどうした』
電話の声は京介の兄貴のものだった。小さなスピーカーの中から僕らに問いかけてくる。
「大人たちに追われて走って行ったよ。僕とヤスに携帯電話だけ残していった」
電話の向こうで沈黙が流れる。
『悪い、お前らがうちにいないのバレた』
「え」
『父親が帰ってきたんだ。おかげで俺は目茶苦茶怒られてるよ、大学生にもなってさ』
電話の向こうから怒鳴り声らしい音声も聞こえてくる。
『そういうわけで、じゃあ』
京介の声色からは、むしろ面白がっているような様子が伝わってくる。
『その携帯に開花の様子を収めて、京介の無念を晴らしてくれ」
そう言って電話は切れた。ちなみに、京介の兄貴は謝罪の言葉を一切口にしなかった。
「なんなんだよーもう」
ヤスは途方に暮れたように、情けない声でそう言った。




