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明滅する明かりを頼りに、木々の中を歩いて行く。おおむねの方向は、京介の残していった方位磁針でわかっているから、ずっとまっすぐ歩いていくだけだ。大人たちは京介の後を追って行ったからなのか、僕らの後をつけてきている人物はいなさそうだった。
「なあ、ヤス。本当に弟に会えると思ってるのか」
ヤスは黙って歩くだけだったが、
「思ってるけど、なんでと聞かれたら答えられない。会ってみたいとは思ってるからそう勘違いしまうだけかもしれない。もしも今弟が生きていたら、どんな風なんだろうなって想像することがよくあるからさ」
死んでしまった、いや、生まれることすらなかった弟に会ってみたいという気持ちはなんとなくわかる気がする。その感覚は、僕が亡くなってしまった祖父や祖母に会いたいというのとどう違っているのだろうか。
「僕も思うことがあるよ、弟とかじゃなくて、じいちゃんとばあちゃんに」
死んでしまったらもう会えない。
「でも、もし本当に会えたところで何が変わるわけでもないんだ。会って、それでどうするんだって話」
ヤスは投げやりな調子でそう言い捨てた。
「弟とか、僕のじいちゃんとばあちゃんは、もしかしたら火花の開花を見にやってくるのかもな」
「どこから来るんだ」
「わからない。少なくとも僕らの家ではないね」
『行けば分かるよ思うよ、ぜんぶ』
京介はそう言っていた。
「行けばいいのか、とにかく」
僕らの目的はひとつだ。火花の開花をこの目と、そして京介の形見に収めるのだ。




