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まっすぐ進んでいくと、山道に突き当たった。当初は山道をそのまま登って行く予定だったけれど、騒ぎを起こした今やどこに捕手が潜んでいるかわからない。僕とヤスは、山道をやや外れた木々の中を隠れるように、そして正しい道を見失わないようにそっと進んだ。これまでに歩いたり走ったりしてデッドポイントを超えたせいなのか、山を歩くのに慣れて来たせいなのかわからないが、軽々と足を運ぶことができた。
しばらくすると、山道が急に広がって平らな広場が現れる。まるで周囲の木々を伐採してそこにだけ空き地を作ったようだ。山の中腹を円形に木々が覆って、円の中には一本の木も生えていない。その代わり中央には、広場の面積の半分を占めて緑色の草が群生している。その草の長さは僕の膝くらいの高さまであって、広葉樹とも針葉樹とも呼べないような奇妙な形な葉っぱが茎を覆っている。茎の先端は、そこに咲くべき花を折られてしまったように空っぽだ。その周りには、見張りらしい人たちが数人。草むらから出て行ったらすぐに捕まってしまいそうだ。
僕は時計を確認した。九時五十五分。予想外の事態がいろいろ起こったせいで、かなりの時間をロスしてしまった。まだ開花が始まっていなかったようでよかった。このまま木々の中に隠れながら、その瞬間を待つだけだ。僕は京介の携帯電話を手に取ってビデオカメラ機能をオンにし、スタートボタンに親指を当てながら待機する。
しばらく待っていると、火花ではなく、広場の周囲がぼんやりと明るくなり始めた。
「弘、あれ見ろ」
ヤスはそう言って、広場の反対側を指差した。木々の奥のほうの闇が薄らいでいて、木の凹凸や葉っぱの色がおぼろげにわかるようになってきた。時間経過につれて、その光の正体がだんだん明瞭になってきた。それは球状の光の玉だった。それも、ひとつやふたつではない。それが、いくつも。数えきれないくらいの光の玉の群れが、森の奥の方からこの広場を目指してやってきているのだ。
ヤスは言葉を発することができなくなっているようだった。首を回すと、僕らの背後からも、光の群れが押し寄せてきていた。その光はゆっくりと、広場の中心を目指して進んでいるようだった。
光の玉は僕とヤスの頭の上を通りすぎて行く。温かみも、眩しさも感じない。それはただ僕らの視覚だけを選択的に刺激しているホログラムのようだ。
光の玉は広場の中央に向けて進みながら、やがて降下を始めた。地面に向けて落ちて行くかに見えた光の玉は、そのひとつひとつが、まるで線香花火を逆さに立てたみたいに火花の先端に灯る。そして、徐々にその光を失っていく。僕はふっと我に返って、京介の形見を起動した。僕もヤスも、目の前に展開される光景に見入っていた。
「なにやってるんだ、君たちは」
背後から低い声。暗闇から大きな手が伸びてきて、ヤスの肩を掴んだ。




