表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火花  作者: ミズノ
4/15

4

 山の中腹まで行くのには、秘密基地から三時間ほどかかる。決死の覚悟で臨む登山というほど苦しいものではないけれど、火花の開花時期を知っている大人が外に出ているかもしれないから、見つからないように目的を達成するのは少し困難かもしれない。

 僕と京介とヤスは、夕食を食べた後に秘密基地に集合して作戦を練ることにしていた。山の入り口で見張りをする大人を、どうやって突破するのかということを。

 僕は両親とともに食卓を囲みながら、そのことばかりずっと考えていた。

「弘、どうしたの。なんだかぼんやりしてるわよ」

 母は僕に聞いてくる。僕は慌てて用意しておいた台詞を行ってしまった。

「今日は京介の家に泊まってくる」

 答えになっていなかったが、

「楽しみなのはわかるけど、周りに注意しないと駄目よ」

 と母は好意的な解釈をしてくれた。

「京介の家か。なんでまた今日なんだ」

 父は不審な目を僕に向ける。

「京介の兄貴さんが、新しいゲームを買ったからやらないかって。それと花火をしようって話になって」

 父は考え込むように腕を組んだ。これで、駄目だと言われたら交渉は難航しそうだ。僕は迫りくる舌戦に備え身構えた。

「親御さんに迷惑かけるなよ。あと、あんまり夜更かしはするなよ」

 僕はほっとした。

「後でお礼の電話しておかなくちゃね」

 と母も賛成してくれた。京介の家に電話した母は、京介の兄貴の礼儀正しさに感銘を覚えることになるだろう。

「いい?」

「気をつけてな」

 父はそれだけ言って話を終えた。交渉は大きな困難を伴うことなくあっさり終わった。僕はほっとした。

「そうだ、今日はちゃんとお供え物をしておかないとね」

 母や小さな器にごはんをよそって、畳部屋に置かれた仏壇にお供えものをしている。

僕の祖父と祖母は、数年前に亡くなっている。その時の悲しみが胸にせり上がってくると同時に、別の直感も働いた。ヤスが基地で話していたことを思い出したのだ。大人たちは、火花についての秘密を何か隠している。もしかしたら本当に、そうなのかもしれないという感覚が僕の中に芽生えた。

 ともあれ、両親の許可は得ることができたから、大手を振って(とまではいかないが)夜の町を出歩ける。京介とヤスは、うまく抜け出して来られただろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ