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煩悩だらけの異世界転移 ~裸が見たいだけなのに聖人扱いされています~  作者: kammy


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第五十六話 魔物凶暴化

「団長、何があったんですか?」


俺が尋ねると、ブラッド団長は少し考えるように黙った。


「最初に異変を見つけたのは警ら隊だった」


「警ら隊?」


「ああ。魔物を発見し、いつも通り駆除しようとしたらしい」


ブラッド団長はそこで一度言葉を切った。


「ところが……魔物が異常に強くなっていた」


「異常に?」


「一体だけではない。確認された魔物は、どれも通常より明らかに強かった」


それは確かにおかしい。


魔物が突然強くなるなんて、聞いたことがない。


「報告を受けて、私も現場へ向かった」


「団長自らですか」


「ああ。最初は大したことではないと思っていた」


ブラッド団長は険しい顔になる。


「だが、オーク上位種がいた」


「オーク上位種……」


「普段なら、私でも問題なく倒せる相手だ」


そう言って、ブラッド団長は拳を握った。


「ところが今回は違った」


「手がつけられなかった、と?」


「ああ」


「それで……」


「相打ちだ」


「……」


「何とか倒すことはできた。だが、私も瀕死の重傷を負った」


あの傷は、それほどの戦いだったのか。


俺は改めてブラッド団長を見る。


……しかし。


やっぱり肌、綺麗だったな。


騎士団長って、もっと傷だらけでゴツゴツしてるイメージだったんだけど。


「他の騎士たちも?」


「ああ。多くの者が負傷した」


「魔物は、どれも強くなっていたんですね」


「そうだ」


ブラッド団長は頷く。


「原因は、まだ分かっていない」


「……何が起きてるんだ?」


俺も真剣に考える。


魔物が突然強くなる。


そんなことがあるのか?


……まあ、それはそれとして。


もう少しパンチを受けるのが遅かったら、もうちょっと見られたんだけどな。


惜しかった。


「それで、そのオーク上位種の死体は?」


ロイド室長が尋ねた。


「回収してあります」


「では、研究室で調べましょう」


「お願いします」


こうして、オーク上位種の死体はロイド研究室へ運び込まれることになった。


◇


研究室に運び込まれたオーク上位種の死体を、研究員たちが慎重に調べていく。


「外傷は……戦闘によるものがほとんどですね」


「魔力の残滓は?」


「今のところ、通常のオーク上位種と大きな違いはありません」


俺も死体を眺めてみる。


……分からん。


そもそも俺は鑑定ができない。


魔獣の知識もない。


医学の知識もない。


当然、オーク上位種の死体を見たところで、何が普通で何が異常なのかなんて分かるはずがない。


つまり――


俺は完全に役立たずだ。


「……」


とはいえ、何も言わずに突っ立っているのもどうかと思う。


俺は少し考えるような顔を作った。


「何か原因があるはずです」


研究員たちが俺を見る。


「……そうですね」


「通常より明らかに強くなっていたのであれば、何らかの変化があったはずです」


うん。


俺には何も分からない。


でも、たぶんそうだろう。


「調べましょう」


「はい!」


研究員たちが再び動き始める。


……よし。


なんか、それっぽいことを言えた。


俺、研究者っぽい。


「心臓を調べてみましょう」


ミルさんが言った。


シルさんと二人で、オーク上位種の心臓を慎重に調べ始める。


「……これ」


シルさんが何かに気づいた。


「どうしました?」


「魔法薬の性能を上げた時に使った技術と、似ている気がします」


「魔法薬の?」


俺には何のことか分からない。


ミルさんも心臓を覗き込む。


「確かに……」


「魔力の流れを集めて、効率を高めているようにも見えます」


二人はさらに詳しく調べていく。


俺にはさっぱり分からない。


だが、二人の話を聞いているうちに、俺はなぜか納得したような顔で頷いていた。


そして――


「流石ですね」


「……」


ミルさんとシルさんの手が、一瞬だけ止まった。


「そこに気が付きましたか。ミルさん、シルさん」


「……ありがとうございます」


ミルさんが微笑む。


シルさんも、


「はい……」


とだけ答えた。


……なんだ?


なんとなく、二人の笑顔がいつもより硬い気がする。


まあ、いいか。


「やっぱり何か原因があるんですね」


俺は二人の研究を眺めながら言った。


「調べましょう」


「はい」


「そうですね」


二人は再び研究に戻った。


……うん。


やっぱり研究者って凄いな。


俺には全然分からないけど。

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